2011 Fiscal Year Research-status Report
再石灰化能を有する象牙質知覚過敏症治療剤の長期耐久性への挑戦
Project/Area Number |
23592878
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥山 克史 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00322818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 久憲 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30002182)
中沖 靖子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50302881)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 象牙質知覚過敏症 / う蝕抑制効果 / 長期耐久性 / 再石灰化 / フッ化物 |
Research Abstract |
知覚過敏症に対する治療に使用されるものと考えられる歯科材料について、材料から徐放されるフッ化物の量を測定することで、再石灰化にどれだけ寄与できるのかを確認した。従来は円柱状のモールドに材料を充填したものを測定試料として使用していたが、知覚過敏処置は材料を歯面に薄く塗布している。そのためより現状に近づけるため、厚さ250μmの測定試料を作製した後フッ化物溶出の測定を行った。使用した材料はフッ化物徐放性のある根面塗布剤2種と、フッ化物含有ボンディング材、グラスアイオノマーセメントである。その結果、根面塗布剤がグラスアイオノマーセメントやボンディング材よりも多くのフッ化物を溶出していることが確認された。また、従来の円柱状測定試料からの溶出量と比較しても、有意差がないことも確認された。さらに材料作製21日後に試料をフッ化物溶液に浸漬し、その後のフッ化物溶出量を測定した。その結果、フッ化物溶液1日後においてフッ化物浸漬前よりも多くのフッ化物溶出量を示した。さらに、根面塗布剤2種については、浸漬1週間後においても浸漬前よりも高いフッ化物溶出量を示した。この結果より根面塗布剤からは多くのフッ化物が溶出し、なおかつ材料にフッ化物をリチャージする能力があることが確認され、フッ化物溶出の面から有用な材料であることが示された。一方、象牙質面に上記の材料を塗布後、pHサイクルに5週間作用させた後、材料と接する歯質と100μm離れた場所でのフッ化物の分布を日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所所有のμPIXE/PIGEで観察した。根面塗布剤とグラスアイオノマーセメントについては材料と接する場所と離れた場所の両者でフッ化物が多く検出され、石灰化度が高いことが確認できた。以上より根面塗布剤が再石灰化を促進できる知覚過敏治療剤の第一選択となり得ることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度では知覚過敏治療に使用可能な材料の評価を主な目的としていた。フッ化物溶出量を確認し、象牙質へのフッ化物の分布を概ね解析した。しかし、う蝕抑制効果の検討や脱灰試料におけるフッ化物の分布などの解析が行われなかった。そのため達成度はやや遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、1.前年度に行う予定であった、材料によるう蝕抑制効果、再石灰化能の評価を行う。平滑な象牙質面を露出させた試料に各種材料を塗布し、一定期間pHサイクルを作用させた後、マイクロラジオグラムで試料の脱灰深さや脱灰量を測定することで評価する。担当 試料作成:小松、分析:奥山2.以下の象牙質との接着力向上を目的として使用する、白金ナノコロイドを象牙質面に作用(併用)した場合の、材料によるう蝕抑制効果、再石灰能評価する。さらに前年度同様に材料からの象牙質へのフッ化物分布も確認する(高崎量子応用研究所の設備を利用。)。これらにより接着に関する因子の影響を検討する。担当 試料作成:小松、分析:奥山、高崎での実験では、奥山、小松の他に連携研究者の山本(大阪大学)も参加。3.象牙質との接着状態を確認する。平滑な象牙質面に材料を塗布。一定期間後の接着界面を走査型電子顕微鏡で観察する。その際に象牙質接着を向上させると報告のある白金ナノコロイドを使用した場合の接着状態も観察する。これらにより、材料による接着状態の違いや接着向上因子(白金ナノコロイド)の効果を検討する。 担当 奥山、中沖
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度において、当初予定していた学会参加ができなくなったことや、予想よりも物品購入が少なくなったため、使用金額が少なくなった。また、今年度に研究協力者(大学院生)が学会に参加することとなり、その旅費のために使用額を減らしたことも、未使用額が発生した理由である。昨年度の未使用分について物品費としては、前年度に行う予定であった、う蝕抑制効果の実験に関する消耗品(特にpHサイクルに関わる、脱灰や再石灰化溶液作製やサイクルを動かすために必要な消耗品)の購入に使用する。さらに前年度から今年度にかけての成果発表のための学会参加費用として、研究協力者(大学院生)(学会発表予定)への旅費にも充てる予定。
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Research Products
(8 results)