2012 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の口腔顎顔面へのホーミング機構の解明とその増殖・分化制御ニッチの同定
Project/Area Number |
23592896
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 尚知 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70343150)
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Keywords | 間葉系幹細胞 / ホーミング / 増殖 / 分化 / 前駆細胞 |
Research Abstract |
前年度までに確立したマウス骨髄由来間葉系幹細胞mesenchymal stem cell (MSC) 様細胞の培養環境を更に改変し(酸素分圧の調整)、この細胞の増殖能力を高めることに成功した(投稿準備中)。加えて、この培養法により、表面抗原の異なる複数の細胞が同時に増殖することを発見した。これまでに我々は、これらの種類が異なるMSCマーカー陽性細胞が相互作用により増殖する分子メカニズムの一部を解明した(投稿準備中)。また、これらの各種の細胞のMSC様分化能力(骨芽細胞、軟骨細胞ならびに脂肪細胞への分化能力)を調査したところ、骨芽細胞や脂肪細胞への分化能力は確認されたが、予想に反して軟骨細胞への分化能力は確認できなかった。このことは、我々の開発したマウス骨髄由来細胞初代培養法は、軟骨細胞への分化能力の低い骨芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞の増殖には適しているが、MSCの初代培養系としては適していない可能性を示唆するものである。言い換えれば、これまでに我々は、骨芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞の増殖に適した培養系を確立し、この細胞のホーミング能力や分化能力を評価する実験系が確立できたものと判断された(投稿準備中)。しかしながら、この初代培養系では、MSCを増殖させることは困難であるため、現在、赤色蛍光強発現TGマウス骨髄細胞を採取した直後に、不死化遺伝子を導入することにより、赤色蛍光強発現MSC様細胞株の樹立を試みている。これまでに、継代を20代以上繰り返しても増殖を続ける細胞が数十種採取できており、また現在、各々の増殖ならびに分化能力を確認しているところである。今後は、昨年度までに確立したヌードマウスへの移植後のトレース実験系を用い、先に述べた初代培養による骨芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞ならびにMSC様細胞株のin vivoのホーミング能力や増殖・分化メカニズムを解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、平成24年度以降の主目標である蛍光強発現TGマウス由来MSCのホーミング先組織における多分化能力発現機構の解明に向かい、前年度までに確立したMSC初代培養系を用い、そのホーミング能力を調査しているところである。具体的には、初代培養蛍光強発現MSCをマウス頭蓋骨欠損部に埋入してMSCの局所へのホーミング能力をIVISにより観察するとともに、骨再生能力をCTにより観察する実験系を開始している。しかしながら、この実験に用いる初代培養による骨髄由来細胞は、軟骨細胞への分化能力の低い骨芽細胞/脂肪細胞共通前駆細胞であることが確認されたため、研究テーマである骨髄由来MSCのホーミング機構や増殖・分化メカニズムについての探究範囲が制限されてしまう可能性が示唆された。このため、24年度中に、我々が有する強蛍光色発現TGマウスの骨髄由来間葉系細胞の不死化遺伝子導入による株細胞化を試みたところ、不死化されたと判断できる長期培養可能な細胞株を数多く得ることに成功した。現在、これらのMSC様細胞株の増殖・分化能力をMSCと比較しているところである。幸い、その能力の程度には違いがあるものの、その多分化能力について確認できていることから、これらの細胞株を用いてMSC口腔領域周囲のホーミング能力の調査ならびにその増殖・分化メカニズムの解明を進めているところである。確かに、初代培養MSCを用いる方がin vivoの細胞に近い性質を反映できるので理想的ではあるが、株化細胞を用いることで、実験の再現性や利便性が増したことから、今後の本研究の更なる発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べたように、強蛍光発現MSC細胞株の開発によるMSCホーミング機構の解明を進めているところであるが、初代培養細胞と比較して実験ごとの細胞採取の必要が無く、また、継代数などの細胞培養条件による増殖・分化能力の変化が少ないことから、安定した実験結果の集積が期待されている。また、IVISを用いた移植後MSCのin vivoリアルタイム観察によれば、皮下のような比較的浅い部位に移植した場合でも、数千個近くの細胞が一カ所に集積しなければ、体外まで到達する強い蛍光シグナルは得られず、観察が難しいという問題点が明らかとされた。このことは、多数の赤色強蛍光MSCの局所への移植後のin vivoリアルタイム細胞動向観察実験にはこの細胞は有用であるが、尾静脈等からの細胞注入後のin vivoリアルタイム細胞動向確認実験のように即座に細胞が拡散してしまう場合の細胞トレース実験には利用が難しいということを意味する。このため、我々は、平成24年度より、組織透過性のさらに強い近赤外光発現MSCの開発に着手している。具体的には、この組織透過性の強い近赤外光発現タンパク質を株化MSC細胞に導入し、容易にMSCのin vivoリアルタイムホーミング確認実験が可能な環境を作り出す。そして、この条件下で、骨髄由来MSCの口腔顎顔面領域へのホーミング機構ならびに多分化能力発現メカニズムを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、MSCの採取方法に課題が生じたため(これまでに行ってきた初代培養方法では軟骨細胞への分化を確認できなかったため)、上述のごとく、新たにMSC様細胞株の樹立を開始した。幸い、現在、このMSC様細胞株の樹立の試みは順調に進んでいるが、この細胞の樹立を待ってから(次年度になってから)、MSCのホーミング先の強赤色蛍光発現細胞のマイクロダイセクション作業を行うこととしたため、本年度計上していたマイクロダイセクション用器具(細胞回収用特殊グラススライドなど)購入費用である200千円分を次年度に使用することとした。
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Research Products
(17 results)