2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜由来iPS細胞を用いたセメント質・歯根膜再生型インプラントの開発
Project/Area Number |
23592905
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
豊田 長隆 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80257344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
早川 徹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (40172994)
佐藤 徹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30170765)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒト口腔粘膜由来iPS細胞 / セメント質・歯根膜再生型インプラント / 再生医療 |
Research Abstract |
われわれが以前に報告(日口外誌 55, 474-481,2009)した骨髄間質由来成体幹細胞の歯原性細胞への分化誘導についての研究で用いた方法に準じ、われわれがすでに保有する口腔粘膜由来iPS細胞とエムドゲイン、マトリゲルの存在下にHAT-7細胞との共培養を行い、iPS細胞株の細胞増殖、形態変化、ならびに歯の発生過程で発現する転写因子であるMsx1、Pax9、Lhx6の発現についてRT-PCR法、Western blot法を用いて検討し、さらにエムドゲイン、マトリゲル、HAT-7それぞれの分化誘導能に骨髄由来生体幹細胞の場合と同様の差があるかどうかについても検討を行い、以下の結果を得た。 口腔粘膜由来iPS細胞を用いた実験系においても、1)エムドゲイン®がMsx1およびLhx6の発現を誘導すること、2)マトリゲル®がMsx1の発現を誘導すること、3)GFRマトリゲル®(含まれる生理活性物質を除いたマトリゲル®)は誘導活性を失っていること、4)Pax9はHAT-7細胞の共存下のみに誘導されること、5)HAT-7の培養上清中には誘導活性が認めらないことが明らかとなった。また、エムドゲイン、マトリゲル、HAT-7それぞれの分化誘導能については骨髄由来生体幹細胞の場合と同様に口腔粘膜由来iPS細胞においても差を認めた。 以上の結果より、口腔粘膜由来iPS細胞は歯原性間葉細胞への分化能を有しているとともに、エムドゲイン®、、マトリゲル®中およびHAT-7細胞表面に幹細胞を歯原性間葉細胞へ分化誘導する因子が含まれていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄間質由来成体幹細胞の歯原性細胞への分化誘導についての研究から、エムドゲイン、マトリゲルの存在下にHAT-7細胞との共培養を行い、歯の発生過程で発現する転写因子であるMsx1、Pax9、Lhx6の発現を口腔粘膜由来iPS細胞でも同様に認めたことから、口腔粘膜由来iPS細胞を用いた検討でもセメント芽細胞、歯根膜細胞への分化誘導が可能と考えられ、その成果を応用してセメント質・歯根膜再生型インプラントの開発につなげられると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ラット歯原性上皮細胞(HAT-7)表面におけるPax誘導因子の存在の確認 HAT-7細胞表面にPax9の発現を誘導する分子が存在していることを確認するため、HAT-7細胞をコンフルエントの状態まで培養した後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、細胞の生命活動を停止させるとともに細胞膜表面上に存在しているタンパク性分子を固定する。固定したHAT-7細胞をPBSにて十分洗浄した後、口腔粘膜由来iPS細胞を播種し、Pax9の誘導活性の存在を確認する。(2)各種細胞外基質中の存在する分化誘導因子の同定。 エムドゲイン®、マトリゲル®、GFRマトリゲル®(生理活性物質を生化学的方法により除去したマトリゲル®)およびHAT-7細胞の歯原性間葉細胞分化誘導活性の差に着目し、それぞれに含まれる細胞成長因子を抗体アレイおよびBio-Plexサスペンションアレイシステムを用いてタンパク質レベルで網羅的に解析する。それぞれの細胞外基質あるいは細胞膜表面に存在している細胞成長因子の組成の違いから、Msx1、Lhx6、Pax9のそれぞれに対する誘導因子の同定を行う。例えば、1)エムドゲイン®とマトリゲル®との比較からLhx6の誘導因子を、2)マトリゲル®とGFRマトリゲル®との比較からMsx1の誘導因子を、3)エムドゲイン®とHAT-7細胞の細胞膜との比較からPax9の誘導因子をそれぞれ同定する。また同様の方法により、歯原性間葉細胞に発現することが知られているGli2およびBarx1の遺伝子発現を誘導する分子についても同定を行う。さらに、これらの因子を用いて口腔粘膜由来iPS細胞の培養を行い、periostin、N-tenascin等の発現および石灰化基質形成能を指標として、セメント芽細胞、歯根膜細胞への分化誘導条件の確立を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度の研究費は再生医療の最新の知見を得るための学会参加による旅費、ならびに前述の実験に用いた試薬などの消耗品費の購入に使用した。当初H23年度に計上していた消耗品費は実験結果が予測より順調に得られたことから、所有していた試薬類で対応し当初の予定額を使用しなかった。 H24年度の研究費は所有の試薬類がなくなり、また前述の実験計画の実施にあたり、抗体アレイやBio-Plexサスペンションアレイシステム用のキット類、細胞培養用試薬、移植実験用の実験動物(ヌードラット)などを多量に購入する必要があることから、消耗品費を多く計上した。
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