2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜由来iPS細胞を用いたセメント質・歯根膜再生型インプラントの開発
Project/Area Number |
23592905
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
豊田 長隆 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80257344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
早川 徹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (40172994)
佐藤 徹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30170765)
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Keywords | iPS / 再生医療 / セメント質・歯根膜再生型インプラント |
Research Abstract |
H23年度の研究からHAT-7細胞との直接的共培養系において口腔粘膜由来iPS細胞におけるPax9の発現が誘導されていることを確認したが、HAT-7細胞表面にPax9の発現を誘導する分子が存在していることを確認するため、HAT-7細胞をコンフルエントの状態まで培養した後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、細胞の生命活動を停止させるとともに細胞膜表面上に存在しているタンパク性分子を固定し、固定したHAT-7細胞をPBSにて十分洗浄した後、口腔粘膜由来iPS細胞を播種し、Pax9の誘導活性の存在を確認するHAT-7細胞表面にPax9の発現を誘導する分子が存在していることが確認された。 エムドゲイン、マトリゲル、GFRマトリゲル(生理活性物質を生化学的方法により除去したマトリゲル)およびHAT-7細胞の歯原性間葉細胞分化誘導活性の差に着目し、それぞれの細胞外基質あるいは細胞膜表面に存在している細胞成長因子の組成の違いから、Msx1、Lhx6、Pax9のそれぞれに対する誘導因子の同定を行い、1)エムドゲインとマトリゲルとの比較からLhx6の誘導因子を、2)マトリゲルとGFRマトリゲルとの比較からMsx1の誘導因子を、3)エムドゲインとHAT-7細胞の細胞膜との比較からPax9の誘導因子を同定した。また同様の方法により、歯原性間葉細胞に発現することが知られているGli2およびBarx1の遺伝子発現を誘導する分子についても同定を行い、これらの因子を用いて口腔粘膜由来iPS細胞の培養を行い、periostin、N-tenascin等の発現および石灰化基質形成能を指標として、セメント芽細胞、歯根膜細胞への分化誘導条件の確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ドナー側に比較的制限がなく、負担が軽いと考えられる口腔粘膜から採取した組織から樹立したiPS細胞を用いて、エムドゲインおよびマトリゲル中や、HAT-7細胞表面上に存在している歯原性間葉細胞分化誘導因子を利用して、口腔粘膜由来iPS細胞のセメント芽細胞、歯根膜細胞への分化誘導を試みるとともに、その成果を応用してセメント質・歯根膜再生型インプラントの開発につなげようとする新しい研究である。 本研究により、口腔粘膜由来iPS細胞を用いたセメント質・歯根膜再生型インプラントが可能となれば、歯原性細胞のない無歯顎患者においてもより理想的な咬合・咀嚼機能の回復が可能となるものと考えられる。本研究においては、エムドゲインおよびマトリゲル中に含まれている歯原性間葉細胞分化誘導因子、HAT-7細胞表面上に発現していると考えられる分化誘導因子の同定し得たことから、口腔粘膜由来iPS細胞の歯原性間葉細胞への分化誘導を行うことが可能となったことからセメント質・歯根膜再生型インプラントの開発の基盤は確立できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに同定された分化誘導因子を、Terminal-modified poly(ethylene glycol)法(Biomaterials 30:1281-1286, 2009)あるいはトレシルクロリド法により、チタン表面への固定する(図8)。誘導因子を固定化したチタン表面上で口腔粘膜由来iPS細胞を培養し、細胞接着を走査型電子顕微鏡観察およびCrystal violet染色法により評価する。また口腔粘膜由来iPS細胞の歯原性間葉細胞、セメント芽細胞、歯根膜細胞への分化状態をRT-PCR法、Western blot法により検討する。 さらに、前項と同様の方法で表面を処理した円筒状チタンの表面で口腔粘膜由来iPS細胞の培養を行った後、ヌードラット下顎骨の抜歯窩あるいは人工的に形成した骨欠損部に移植する。移植したチタン周囲の組織学的変化を経時的に観察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行過程で得られた成果は、随時関連する国内外の学会(再生医療学会、口腔外科学会、口腔科学会、IADR, ASBMR等を予定)で発表するとともに、できる限り速やかな論文での公開を行う予定であり、その出張旅費に用いる予定である。
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