2011 Fiscal Year Research-status Report
オステオンを含有する成熟皮質骨形成を誘導するin situ骨再生技術の確立
Project/Area Number |
23592913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 勇樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80451813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西條 英人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372390)
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30344451)
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
菊池 正紀 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体材料センター, 研究員 (00354267)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨再生 / オステオン / 骨皮質 |
Research Abstract |
口腔周囲には複雑な形状を持った骨が多数存在し、顔面の形状保持、歯の力学的支持、その他、咀嚼、発声、構音などに重要な役割を果たす。これらの骨は癌や腫瘍の手術侵襲、外傷、先天性形態異常や歯周病といった疾患で欠損を生じるが、欠損に対する治療として多岐にわたる機能を再建するためには、オステオン構造を含有する成熟皮質骨の再生が不可欠である。本研究では、従来ほとんど検討されていなかったオステオンの形成・再生機構を解析し、この知見を応用した新規の生体材料技術を用いて、オステオンを含有する皮質形成を生体内で再現する。本研究の目的は従来なしえなかった成熟骨基質形成を誘導するin situ骨再生技術を確立することである。そのため、平成23年度は以下の研究をおこなった。(1) セラミック/ポリマーコンポジットメッシュの条件設定:セラミック/ポリマーコンポジットをメッシュとして使用するための条件を設定した。まず、βTCPとPLGCの混合比や混合方法など、成分条件を変えた数種類の素材を作製した。ついで、これらの素材を用いて厚さ、開口形状、開口率など、材型条件の異なる数種類のメッシュを作製した。それらのメッシュに対し、力学的強度、生分解性、を評価し、顎顔面組織の形態保持に必要な条件を検討した。(2)海綿骨細片(PCBM)を用いたビーグル骨区域欠損に対する移植実験:ビーグル下顎骨欠損モデルを検討した。モデル確立のため、ビーグルの下顎に長さ3 cmの骨区域欠損を作製し、切除後2週、2ヶ月で欠損組織を摘出し、骨再生を評価した。評価にはマイクロCTによる画像評価、非脱灰研磨切片によるコンタクトマイクロラジオグラム、脱灰パラフィン切片による組織学的評価、を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) セラミック/ポリマーコンポジットメッシュの条件設定では、βTCPとPLGCの混合比や混合方法など、成分条件を検討し、条件を絞り込んで試作品を作製した。(2)海綿骨細片(PCBM)を用いたビーグル骨区域欠損に対する移植実験でも、ビーグル下顎骨欠損モデルを検討し、モデル確立のため、ビーグルの下顎に長さ3 cmの骨区域欠損を作製し、評価した。上記は計画通りに進捗し、本研究の目的である、従来ほとんど検討されていなかったオステオンの形成・再生機構を解析し、この知見を応用した新規の生体材料技術を用いて、オステオンを含有する皮質形成を生体内で再現することにかなうものである。したがって、研究は、現時点においておおむね、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、オステオン含有皮質骨を誘導するin situ骨再生技術を確立することを目的として、ビーグルの骨区域欠損モデルを検討した。平成24年度以降は、欠損モデルの再生組織における成長因子含有量を経時的に計測し、オステオン含有皮質骨形成に必要な因子を同定する。そして、同定された因子の生体内経時間変化を再現するようなドラッグ・デリバリーをカルシウム系セラミック顆粒で実現し、皮質骨誘導型人工骨を開発する。さらに皮質骨誘導型人工骨を、新規吸収性ポリマー(セラミック/ポリマーコンポジット)製メッシュトレーに充填してin situ再生骨組織を作製する。そして、最終的には、皮質骨誘導型人工骨とセラミック/ポリマーコンポジット製メッシュトレーを併用したin situ再生骨組織をビーグル骨区域欠損モデルに移植して、その有用性を実証する。そのため、平成24年度には、(1)皮質骨再生における成長因子ならびにサイトカインの分泌変化の評価、(2)徐放化した成長因子・サイトカインを含有した硫酸カルシウム顆粒の作製、を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)皮質骨再生における成長因子ならびにサイトカインの分泌変化の評価:ビーグル下顎骨欠損モデルにおける顎骨修復過程は、皮質骨再生モデルとして、オステオンの再建、再生の分子機構を解析することが可能である。ビーグル下顎骨欠損モデルも移植後2週、2ヶ月、6ヶ月、1年で摘出した再生組織から蛋白を採取し、成長因子ならびにサイトカインを計測する。成長因子ならびにサイトカインの経時的分泌変化を評価する。また、この分泌変化が遺伝子発現レベルでも確認できるか否かを調べるため、同様の試料から採取した遺伝子を用いて、real time RT-PCRで発現評価を行う。(2)徐放化した成長因子・サイトカインを含有した硫酸カルシウム顆粒の作製:PCBMの代替となる生体材料の検討を行う。この生体材料は、骨伝導能と骨誘導能の両者を具備する必要がある。そのため、薬剤の徐放化が可能で、生体吸収性を調整できるカルシウム系セラミックである硫酸カルシウム系素材を用いる。この硫酸カルシウム系素材は、硫酸カルシウムと硫酸ナトリウムを混合して作製するものである。混合比と粘剤溶液の組成、分量を変更することにより、徐放性ならびに生体吸収性を任意に調節することができる。硫酸カルシウム系素材を用いて、前項で変動が認められた成長因子あるいはサイトカインの経時的変化を再現するよう、因子の濃度ならびに硫酸カルシウム系素材の製造条件を検討する。検討した素材は、約3 mmの顆粒状に加工する。顆粒状素材を細胞外液に浸漬し、顆粒径、力学的強度、溶出ミネラル濃度、溶出因子濃度、などの経時的変化を評価する。これらの結果から、徐放化した成長因子・サイトカインを含有した硫酸カルシウム顆粒の作製条件を最適化し、皮質骨誘導型人工骨を確立する。
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Research Products
(4 results)