2012 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドの新規機能の解明と炎症性口腔粘膜疾患への治療応用
Project/Area Number |
23592924
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
太田 耕司 広島大学, 病院(歯), 助教 (20335681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重石 英生 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (90397943)
武知 正晃 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (00304535)
鎌田 伸之 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (70242211)
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Keywords | 神経ペプチド / 炎症性口腔粘膜疾患 / 口腔粘膜細胞 |
Research Abstract |
神経ペプチドやペプチドホルモンは神経伝達物質としての機能だけでなく,様々な機能を持っていると考えている.ghrelinは胃粘膜細胞から発見された神経ペプチドであり,成長ホルモンを分泌する働きだけでなく,消化管機能調節,エネルギー代謝等,多彩な機能をもっている.申請者らはghrelinを含むいくつかの神経ペプチドが,口腔粘膜に発現する抗菌ペプチドと似たアミノ酸配列,電荷,等電点を示すことを発見した. ghrelinの抗菌作用を検討した予備実験の結果,ghrelinが大腸菌に抗菌作用を持つことが示された.さらにghrelinがLL-37等の特異的抗菌ペプチドの抗菌作用を増加させる作用をもつことを発見した.ghrelinの抗菌作用,特異的な抗菌ペプチドに対する相加作用に関する報告は国内外でもない. さらに申請者らは以前にghrelinだけでなく、VIP (vasoactive intestinal peptide),orexin B といった他の神経ペプチドが抗菌作用をもっていることを明らかにしている。 これらの神経ペプチドは抗菌作用だけでなく,口腔粘膜細胞への抗炎症作用や創傷治癒作用をもっていると考えられる。そのメカニズムを明らかにし,口腔感染症,口腔粘膜炎症性疾患の治療へ応用することである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経ペプチドghrelinの抗菌活性をBactericidal assay を用いて検討した結果,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に抗菌作用をもつことが明らかになった.抗菌ペプチドは陰性の電荷を持つため,塩濃度の増加で抗菌効果が減少することが知られている.様々な塩濃度でのghrelinの抗菌活性を検討したところ,塩濃度の添加によってghrelinの抗菌活性は減少することが示され,生理食塩濃度においては抗菌効果が持続することを確認した.ghrelinがLL-37 の抗菌効果をさらに増加することを確認した.さらにチェックボード法によって,ghrelinのLL-37の抗菌効果に対して大腸菌には相乗作用,大腸菌には相加作用をもつことを確認した.しかしながらghrelinは抗菌ペプチドDefensin 1, 4 には相加,相乗効果は示さなかった. ghrelinは3番目のセリン残基がオクタノイル化した特徴的配列を示す(活性化型ghrelin).もう一方の型として,生体にはオクタノイル化修飾をうけていない不活性型ghrelinが存在する.ghrelin の抗菌作用とLL-37 の抗菌作用を増強させる作用の機能している部位を検討した.その結果,不活性化型ghrelin は活性化型ghrelin と比較してLL-37 の抗菌作用には影響が認められなかった.さらに、口腔粘膜上皮細胞における他の神経ペプチドの発現をRT-PCR 法で検討した結果、ghrelin だけでなくVIP (vasoactive intestinal peptide), substance P mRNA を発現していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24,25年度の研究からghrelinが大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に抗菌作用をもつことが明らかになった.またghrelinは抗菌ペプチドであるLL-37に対して特異的に抗菌作用を増強させる作用をもつことが明らかになり,特に大腸菌においては相乗効果を示すことが明らかになった.さらに不活性化型ghrelinは活性化型ghrelin と比較して、LL-37の抗菌作用を増強しないことが明らかとなった。次年度はghrelin と抗菌ペプチドの菌体表層への結合を観察し,ghrelin,LL-37の局在や菌体の破壊像を検討する.さらに今回の検討において口腔粘膜上皮細胞はghrelin だけでなく、他の神経ペプチドであるVIP, substance P mRNAを発現していることが示された。口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞におけるこれらのペプチドの炎症性サイトカインTNF-alpha, IFN-gamma, LPSで誘導されるIL-8, CXCL10などの炎症性ケモカインの抑制効果、さらに炎症性サイトカイン刺激によるp38MAPK,ERK, JNK, STAT1など炎症性関連蛋白のリン酸化に対する神経ペプチドの影響を検討する.さらに神経ペプチドの口腔粘膜の創傷に対する影響を検討するため、口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞におけるghrelin, VIP, substance Pなどの神経ペプチド添加による血管内皮細胞誘導因子(VEGF) などの発現の誘導を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GhrelinとLL-37の菌体表面の局在を観察するため,ghrelinとLL-37を同時添加培養した際の菌体の切片を作製,コロイド金を用いた免疫電子顕微鏡法により,ghrelin,LL-37の局在や破壊像を検討する.acyl ghrelin, des-acyl ghrelinの比較も同時に行う. 他の神経ペプチドがghrelinと同様に口腔粘膜に対して抗炎症作用をもつか検討するため,口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞におけるLPSを含む菌体成分, TNF-alpha, IFN-gammaの刺激によるIL-8, CXCL10 蛋白の発現の影響を検討する。またそれらの炎症性サイトカイン、菌体成分添加後のp38MAPK,ERK, JNK, STAT1など炎症性関連蛋白のリン酸化に対するGhrelin, VIP, substance Pの影響をWestern blottingやELISA法で検討する. また神経ペプチドの口腔粘膜に対する創傷治癒効果を検討するため、口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞におけるghrelin, VIP, substance P添加によるVEGFなど創傷治癒関連のタンパクの発現をWestern blottingやELISA法で検討する。 それらの蛋白が発現誘導されるシグナル伝達経路をWestern blottingで検討する。次年度の研究費はほとんどが消耗品であるため、直接経費のうち、物品費を使用する。また学会発表、論文報告の校正のため、旅費を使用する予定である。
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