2011 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用を念頭に置いた羊膜を基質とした培養歯髄由来細胞シートの開発
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23592934
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山本 俊郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40347472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雨宮 傑 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90398389)
喜多 正和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60153087)
金村 成智 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70204542)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 羊膜上培養歯髄細胞シート / 羊膜 / 歯髄由来細胞 / 免疫組織化学 / 移植・再生医療 / 再生医学 / 歯学 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
我々は、羊膜の有用性に注目、羊膜を細胞培養基質として用いた再生医療の研究を実施している。これまでに、羊膜を基質とした培養口腔粘膜上皮細胞シートの作成方法を確立、口腔粘膜上皮欠損症例に対し臨床応用を行い良好な結果を得たことから、羊膜が細胞培養の基質として適し、また新たな再生医療的な治療法として有用かつ有効であることを報告した。さらに、この細胞培養系を歯根膜由来細胞の培養に応用、培養歯根膜シートの作成に成功するとともに、in vivoで自家移植を行う技術を開発した。そこで今回は、歯髄由来細胞を用いた羊膜上培養歯髄シートを作成を試みた。 智歯の便宜抜歯から得た歯をセメントエナメル境で横断、歯髄組織のみを無菌的に採取した。歯髄組織を細分し、10%ウシ胎仔血清と抗菌薬を添加したα-MEMを用い初代培養を行った。その後3~4継代培養、羊膜上にこれら歯髄由来細胞を播種し、約2週間培養、ヘマトキシリン・エオジン染色ならびにvimentin、Ki-67、Zo-1、CD44、CD105、CD146について免疫組織化学的検討を行った。なお、本研究の実施および歯髄組織と羊膜の利用は、患者ならびに本大学医学倫理審査委員会の許可を得ている(RBMR-C-772)。 その結果、歯髄由来細胞は羊膜上で層状構造を示し、シート状の培養が可能であった。また、羊膜上歯髄由来細胞は間葉系細胞マーカーであるvimentin、細胞増殖マーカーであるKi-67陽性であり、細胞間には細胞間接着マーカーであるZo-1が発現していた。さらに、間葉系幹細胞マーカーであるCD44、CD105、CD146陽性細胞の局在も認めた。 以上から、羊膜は歯髄由来細胞の培養に適当な足場として機能しており、歯髄由来細胞は個々の細胞ではなく、羊膜上で一枚の細胞シートを形成した。さらにシート中に幹細胞が存在する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の交付申請書に記載した「研究の目的」では、1. 歯髄由来細胞を羊膜上にてシート状に培養し、作成した羊膜上培養歯髄由来細胞シートの組織学的・免疫組織的検討を行うこと、ならびに2. 実験動物への移植後における同培養シートの遊走増殖を経時的に観察し、羊膜特有の作用(抗炎症作用・感染抑制作用など)を持つ新たな培養シートの開発のための検討を行うとしている。具体的には、平成23年度に「羊膜を用いた歯髄由来細胞培養シート作成の最適化および組織学的・免疫組織学的検討」、平成24年度に「歯周病原因子に対する羊膜上培養歯髄由来細胞シートの免疫学的特性の検討ならびに移植に関する検討」、平成25年度に「各々の患者に応じた羊膜上培養歯髄由来細胞シートの作成」といった研究計画を立案している。 そこで現状としては、前記の「研究実績の概要」に記載したとおり、羊膜を用いた歯髄由来細胞培養シート作成の最適化および組織学的・免疫組織学的検討が行われ、一定の研究成果が得られた。このため本研究課題の「現在までの達成度」は、自己点検による評価として、上記区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、交付申請書に記載した「研究の目的」を遂行にあたり、「歯周病原因子に対する羊膜上培養歯髄由来細胞シートの免疫学的特性の検討ならびに移植に関する検討」と「各々の患者に応じた羊膜上培養歯髄由来細胞シートの作成」を予定している。 具体的には、(1)歯周病原因子に対する羊膜上培養歯髄由来細胞シートの免疫学的特性:同培養シートに対し1, 6, 10MPaのメカニカルストレスを60分間付与群、歯周病原菌P. gingivalis 1X107 CFU/mlで24時間刺激群、同条件でメカニカルストレスとP. gingivalisの共刺激群を実験群とする。なお、対照群は無刺激群とする。各群に対してRT-PCR法やELISA法を用いた定性・定量分析を行う(炎症性サイトカイン等を検討予定)。(2)羊膜上培養歯髄由来細胞シートの移植と経時的動態の検討:同培養シートを実験動物(Fischer 344ヌードラット)へ移植し、細胞の遊走増殖を経時的に観察、組織学的・免疫学的検討を行う。移植方法は、実験動物の臼歯支持骨を削除、露出歯根面を作製した歯周欠損モデルへの移植を予定している。しかし、生着組織の均一化や特定が困難であること、また極めて狭小な部位への細胞移植であり、安定した再現性が得られないことが予測される。そこで、細胞を一箇所に留めることが可能であり免疫寛容が高い腎被膜下への細胞移植法の応用も予定している。(3)各々の患者に応じた羊膜上培養歯髄由来細胞シートの作成:ここまでに得られた研究データをもとに、同培養シート作成の培養技術に改良を加え、あらゆる患者の歯髄由来細胞に対応した培養方法の確立だけでなく、常に均質な性質を持った臨床応用可能な培養歯髄由来細胞シートを作成するシステムを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、上記(1)と(2)の研究などに費用を充てる予定にしている。(1)の研究では、おもにガラス器具、培養試薬、薬品の消耗品に関する消耗品費が必要となる。(2)の研究では、(1)の研究費に加えて、実験動物の購入、飼料代などの飼育費用が必要となる。さらに、研究成果発表のための旅費・投稿費・外国語論文の校閲費などが必要となる。
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