2011 Fiscal Year Research-status Report
凍結切片を利用したiPS細胞の効率的分化誘導法および品質評価法の確立
Project/Area Number |
23592950
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
寺田 知加 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (40460216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
佐藤 徹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30170765)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 再生医療 / iPS細胞 / 口腔粘膜由来iPS細胞 / 分化誘導 / 質の保証 |
Research Abstract |
現在めざましい進歩を続けるiPS細胞研究であるが、効率的で確実な分化誘導法の確立と樹立されたiPS細胞の質の評価法の確立は最も解決が待たれる問題点である。そこで本研究では、実際に再生を目指す組織・臓器の凍結切片上でiPS細胞を培養することで、それぞれの組織・臓器の機能細胞に最適な細胞外基質と分化因子を効率的かつ確実にiPS細胞に作用させることができる新たなiPS細胞の分化誘導法を確立するとともに、この方法を用いて、iPS細胞のクローン毎の分化能の違いを明らかにし、さまざまな組織・臓器の再生に利用できる最適なクローンの選別を検証することによる、新たなiPS細胞の質の評価法の確率を目指すことを目的に、まず、今年度は、ヒト口腔粘膜由来iPS細胞の分化誘導について検討した。本研究で用いたヒト口腔粘膜由来iPS細胞は、ヒト健常頬粘膜の一部を採取し、これより分離した口腔粘膜線維芽細胞に、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子をレトロウイルスによりトランスフェクションし、安定発現細胞として得られたものであり、この多分化能を確認した上で維持培養しているものである。マウスから脳、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、唾液腺を摘出し、また、マウス腹腔内に四塩化炭素を投与して薬剤性肝炎を誘発し、臓器本来の再生能力を引き出した上でこの肝臓を摘出し、これらの凍結薄切切片を作製し、この上でヒト口腔粘膜由来iPS細胞を培養した。この細胞からmRNAおよびタンパク質を回収するとともに、組織学的に細胞を固定し、それぞれの組織・臓器に特異的な遺伝子、タンパク質を指標に分化誘導されているか否かについて検討したところ、肝臓及び神経において、コントロール群と比較して優位に特異的マーカーの発現が上昇している健康が認められた。今後は他の臓器についても検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では今年度は、ヒト口腔粘膜由来iPS細胞を用い、再生を目指す目的組織・臓器の凍結薄切切片上で効率的な分化誘導を目指し、その結果を解析する予定であったが、概ね順調に解析を進められており、現時点で本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに肝臓および神経(脳)における効率的な分化誘導が可能である傾向を得ているが、これにもiPS細胞のクローン間の差が認められ、分化効率にはクローン毎の違いが出てきている。これらを踏まえ、他の臓器、すなわち肝臓、神経(脳)以外の心臓、膵臓、脾臓、腎臓、唾液腺における分化誘導効率を検討するために、それぞれの組織・臓器特異的な遺伝子、タンパク質を指標として誘導効率について検討する。さらに分化誘導に対するiPS細胞の反応に対する検討を行うために、分化誘導に対して反応しやすかったiPS細胞クローンと、反応しにくかったiPS細胞クローンをそれぞれ選択し、これらのクローンに対してその身分下制をRT-PCR、免疫細胞化学的手法によりその遺伝子発現、タンパク質発現について検討するとともに、元となったiPS細胞に対して未分化性の確認、さらには内胚葉、外胚葉、中胚葉それぞれへの多分化能の検討を行い、これらのコロニーを選別し評価していくことで、iPS細胞間の差の評価法を確立する。最終的には、本研究の分化誘導法により得られたiPS細胞を用いて、実際に再生を目指す目的臓器に移植し、経時的な組織変化と細胞の局在・分布を追跡観察する。また、この移植の結果とiPS細胞のコロニーの品質評価方法の結果を対照し検討することで、新たな評価法が実際に臨床応用に際して実用化することが可能であるかどうかについて検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には、研究計画に基づき、細胞培養用試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、などに物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、人件費、謝金、論文印刷費などを計上している。前年度からの繰越金が多額になっているのは、今年度、凍結薄切切片上での分化誘導法に際し、肝臓および神経(脳)での解析について、これまでに行ってきた研究において用いていた抗体や、培養用試薬、遺伝子発現解析のためのオリゴヌクレオチドなどを用いることができたためで、また、この2臓器における結果が概ね良好で、少しでも早い良好な結果の報告により再生医療の進歩に寄与することを目的にこれら2臓器における解析を先行させたためであり、次年度以降は、これら2臓器、肝臓および神経(脳)以外の臓器、すなわち心臓、膵臓、脾臓、腎臓、唾液腺について解析を進める予定であり、これらの組織・臓器に特異的な遺伝子、タンパク質の解析を進めるために細胞培養、分子生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討が必要であり、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、これらの遅れている組織・臓器に対する解析を迅速に進め、先行している2臓器の結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。
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