2011 Fiscal Year Research-status Report
aPKCλ/ιの発現・局在異常は口腔がんの新たな診断基準となり得るか?
Project/Area Number |
23592972
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小泉 敏之 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80323575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 講師 (30545059)
長嶋 洋治 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10217995)
秋本 和憲 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70285104)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | aPKCλ/ι / 口腔がん |
Research Abstract |
平成19年から平成22年までに横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科で加療した口腔扁平上皮癌患者のうち、本研究の対象となったのは56症例であった。これらの症例について、臨床病理学的因子(年齢、性別、UICC分類、腫瘍サイズ、リンパ節転移の有無、病理組織分化度、喫煙歴など)を取りまとめた。症例のまとめと並行して、口腔扁平上皮癌に対するaPKCλ/ι免疫組織学的染色法のプロトコールの確立を行った。抗体の濃度調整などで試行錯誤を繰り返したのち、プロトコールが確立された段階で56症例についてaPKCλ/ι免疫組織学的染色を行った。その結果、46症例(82.1%)においてaPKCλ/ιの発現を示し、23症例(41.1%)においてaPKCλ/ιの過剰発現を示した。次に臨床病理学的因子とaPKCλ/ιの発現の相関をPearsonのχ2検定を用いて検討した。その結果、低分化型の口腔扁平上皮癌において有意にaPKCλ/ιの過剰発現を認めた(p=0.030)。また、60歳未満の症例において有意にaPKCλ/ιの過剰発現を認めた(p=0.032)。さらに、aPKCλ/ιの過剰発現を認めた症例ではaPKCλ/ιが細胞核優位に発現していた(p=0.047)。この結果から、aPKCλ/ιの過剰発現が口腔扁平上皮癌の悪性度診断の基準になり得る可能性が示唆された。ここまでの結果をまとめ、日本頭頸部癌学会、日本口腔外科学会総会において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌に対するaPKCλ/ι免疫組織学的染色のプロトコール確立は容易ではなかったが、ここまでに安定して染色を行えるようになった。その後、これまでの解析結果で、統計学的に有意なデータを得ることができており、幸先よく研究をスタートすることができた。とりわけ、がんの進展や転移に関与しているaPKCλ/ιが口腔扁平上皮癌において過剰発現していることが判明し、かつ病理組織分類が低分化型の症例や若年者の症例といった、より悪性度の高いとされる症例において有意にaPKCλ/ι過剰発現を示していることは、口腔扁平上皮癌においてaPKCλ/ιががん悪性度の指標となりうると考えられた。この結果を踏まえて研究を継続していくことで、本研究の目的である新たな診断方法への応用が期待できた。しかし、当初の予定より少ない症例数しか集まらなかったのは誤算であった。そのため、まずは対象期間を延ばして症例数を増やさなければならない。すでに20症例が研究対象として新たにピックアップされており、これらの症例についてこれから改めて臨床病理学的因子を取りまとめたり、aPKCλ/ι免疫組織学的染色を行って統計学的解析を行う必要がある。ただし、ここまでのプロトコールはすでに確立しており、症例数の追加が研究を遅らせることはほとんどないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は平成19年から平成22年までに横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科で加療した口腔扁平上皮癌患者56症例を対象に研究を行ってきた。しかし、56症例は口腔扁平上皮癌を用いた類似研究と比較するとやや少ない。そこで、研究対象期間を平成23年前半までの症例とし、20症例を追加して合計76症例とした。この結果、類似研究と比較して遜色のない症例数を得ることができた。まずは追加した20症例についてaPKCλ/ι免疫組織学的染色を行い、合計76症例として再度統計解析を行う。解析が終了したのちは、癌の進展・転移に関与しているとされるIL-6やALDHとaPKCλ/ιとの相関性を検討する。具体的には、これまでに用いた76症例の標本をIL-6ならびにALDH免疫組織染色を行い、それぞれの発現を調査する。これらの結果を臨床病理学的因子と比較して統計学的解析を行うと同時に、aPKCλ/ιの発現とIL-6ならびにALDHの発現を比較検討することで、aPKCλ/ιとIL-6・ALDHが癌の進展・転移に相互的に関連している可能性について調査する。また、平成25年度の研究目標として、In vitroにおけるaPKCλ/ι発現と細胞浸潤能の検討を予定している。本研究の前準備として、口腔扁平上皮癌細胞株を用いてaPKCλ/ιノックダウン細胞株の樹立を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に用いる器具および備品はすべて現有設備であるため、研究に関する経費はほとんど消耗品の購入にあてられる。本研究は病理組織を用いた研究であるため、昨年に引き続き病理組織解析のために種々の抗体、検出試薬などが必要である。具体的には(1)病理解析のための種々の抗体,(2)それに付随するチップやスライドグラスなどの消耗品である。同時に口腔扁平上皮癌細胞株を用いてaPKCλ/ιノックダウン細胞株の樹立を行う予定であるため,(3)培養系を維持するための培地・血清・細胞培養用ディッシュが必要となる。また、当該分野の研究に関する情報収集と発表のため、日本癌学会総会や日本口腔外科学会総会などへの参加費用が必要となる。また、ここまでの研究結果で有意差が得られている。今後20症例を追加して再度解析を行う予定であるが、その結果でも有意差が得られれば、英語論文を執筆し投稿する予定である。そのため、論文校正・投稿・別刷の経費が必要である。
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Research Products
(2 results)