2012 Fiscal Year Research-status Report
サイトカインを標的とした口腔癌の増殖・進展メカニズムの解明
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23592974
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
坂下 英明 明海大学, 歯学部, 教授 (10178551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 正勝 明海大学, 歯学部, 講師 (10311614)
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
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Keywords | 口腔癌 / サイトカイン / IL-23 / TNF-α / NF-κB / アポトーシス |
Research Abstract |
1.明海大学病院にて治療を受けた20例の口腔扁平上皮癌患者の生検組織のホルマリン固定パラフィン包埋材料を用い, IL-23, p53およびNF-κBに対する免疫組織化学的検索を行い,その発現強度および局在を確認した.その結果,6例(30%)の腫瘍細胞膜にIL-23の弱陽性反応を認めた.また15例(75%)の腫瘍細胞の核にNF-κB発現を認め,IL-23陽性サンプルにおいて特にNF-κB発現の強陽性所見が認められた.さらに,8例(40 %)の腫瘍細胞の核にp53陽性所見を認め,特にp53タンパク質の強陽性所見を示す症例においてIL-23陽性所見が多く認められた.なお現時点でIL-23,NF-κBおよびp53発現と臨床病理学的因子との間に特別な相関関係は認められない. 2.ヒト頭頸部扁平上皮癌培養株HSC-3,HSC-4(p53変異株)およびKB(p53野生型, HPV感染株)におけるIL-23の発現状況を確認したところ,KB細胞において最も低い発現量を示した.HSC-3およびHSC-4細胞を用いて,TNF-αまたはIL-23(10 ng/ml)にて経時的に刺激した際のNF-κB発現動態をルシフェラーゼレポーターアッセイにて検索したところ,時間依存的なNF-κB活性増強を確認した.抗IL-23抗体(0.8 mg/ml)による中和またはIL-23 siRNAによるIL-23ノックダウンを行った際のNF-κBの活性動態は,顕著に抑制された.さらにNF-κBの活性阻害剤として知られるシメチジンを作用させた場合,NF-κB活性低下とともにアポトーシスに陥った.また,抗IL-23抗体を作用させた際,NF-κBの活性は低下したがアポトーシスには至らなかった.次にp53野生株であるKB細胞にIL-23を作用させた際,NF-κB活性は刺激後4時間でピークに達したものの,その後減少に転じた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,ルシフェラーゼレポーターアッセイのためのパイロットスタディにおいて,時間を十分にかけて検討することができたため,今年度は考えていた以上に満足の行くデータが出て,順調に経過していると考えている.来年度は最終年度ということもあり,まとめるために更なる研究成果が得られるよう努力したいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.引き続いて,多数の口腔扁平上皮癌の生検組織材料を用いて,免疫組織化学的にIL-23, p53およびNF-κBの発現強度および局在を確認する.これらの結果と個々の症例の臨床病理学的諸因子との相関関係について解析を行う. 2.ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株HSC-2,HSC-3(p53遺伝子変異型)およびSAS(p53遺伝子野生型)を用い,in vitroの系で研究を行う.本年度の研究結果から,p53遺伝子によってIL-23の発現が制御されている可能性が示唆されたので,p53遺伝子とIL-23遺伝子について焦点を絞り検索を行う.すなわち,p53遺伝子野生型であるSAS細胞のp53ノックダウンを行った際のIL-23の発現状況について,遺伝子およびタンパク質レベルで検索すると共に,この細胞株を用いてNF-κBの活性動態をルシフェラーゼレポーターアッセイにて解析する.p53遺伝子変異型であるHSC-3,HSC-4細胞を用いて,同様にp53ノックダウンした際のIL-23の発現状況について遺伝子およびタンパク質レベルで検索する. 3.ヌードマウスにHSC-2,HSC-3(p53遺伝子変異型)およびSAS(p53遺伝子野生型)を播種・腫瘍形成した後,NF-κBの活性阻害剤として知られるシメチジンを濃度と時間をかえて直接作用させた際の腫瘍浸潤・血管新生阻害実験を行うとともに,NF-κBの活性動態を同様に解析し,アポトーシスの検索と副作用の有無を形態的および組織学的に行う. 4.来年度が最終年度に当たるため,これまでの実験結果をふまえ,総括を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,ヌードマウスを用いた動物実験に重点を置いて研究を進めるため,研究費はこのアッセイ系に費やされる金額が多いと考える.しかし,ルシフェラーゼレポーターアッセイと動物実験にて60万円ほどの使用計画を立てているため,資金としては十分に足りると考えている.
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Research Products
(6 results)