2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答としての瞳孔散大反応の有用性とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
23593001
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡 俊一 日本大学, 歯学部, 准教授 (20256879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 教授 (10226532)
岡田 明子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10434078)
中島 一郎 日本大学, 歯学部, 教授 (90198078)
大井 良之 日本大学, 歯学部, 教授 (60271342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | αアミラーゼ / ストレスホルモン / 唾液 / コルチゾール / 瞳孔 / 痛み / 自律神経反射 |
Research Abstract |
本研究は、自律神経-副腎髄質系ストレスマーカーとして注目されている唾液中αアミラーゼと、麻酔深度のパラメーターとして用いられてきた瞳孔という極めてユニークな指標を組み合わせたものである。つまり、ストレス負荷時のαアミラーゼとストレス刺激により生じる瞳孔散大反応との関係を調べることで、瞳孔散大反応が、1.ストレス反応の指標として有用かどうか?2.刺激により生じる瞳孔散大反応が、単なる交感神経反射なのか?あるいはより中枢レベルの反射なのか?のメカニズムを解明することを本研究の目的としている。 具体的には、cold pressor testという痛みを伴うストレス刺激(tonic pain)を与え、ストレス前、ストレス時およびストレス後の唾液中のαアミラーゼおよびコルチゾールを測定し、瞳孔散大反応との関係を検討する。同時に、痛みの程度、血中のノルアドレナリン濃度、心拍変動(心拍ゆらぎ)、血圧、脈拍を測定する。 当該年度(平成23年度)は、cold pressor test を用いたαアミラーゼの時間的推移を測定し、既存のシステムを調整する計画を立案した。 方法として、10名以上の健康成人を被験者とし、4℃のアイスパットに3分手首を浸すcold pressor test を施行しストレスを与えた。 その結果、αアミラーゼ濃度は、刺激直後(刺激後1~3分)にピーク値を示したが、刺激後5分には刺激前値に戻った。一方、コルチゾール値は、刺激後5~7分で増加し始め、刺激後10~12分でも有意に上昇した。しかし、刺激後30分では刺激前値に戻った。 これらストレスホルモンの経時的変化を前もって知っておくことで、既存のシステムのを調整することが可能となり、研究遂行をスムーズに行うにあたり、極めて重要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当該年度(平成23年度)の研究計画は、cold pressor test を用いたαアミラーゼの時間的推移の検討であった。 具体的には、4℃のアイスパットに3分手首を浸すcold pressor test を施行しストレスを与え、ストレス前、中、後のコルチゾールおよびαアミラーゼの変化を測定し、既存のシステムを調整することにあった。 本研究は、最終的には、痛みの客観的測定、自律神経反射の測定、ノルエピネフリンの測定など、様々なパラメーターを用いる。中でも、2つのストレスホルモンのストレスによる経時的変化を前もって把握しておくことは、瞳孔測定の既存システムを含めた全システムを調整する上で大変重要なことを意味する。このことから、順調に進展していると断言できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、刺激後30分までにはαアミラーゼおよびコルチゾールは刺激前値に戻ることが分かった。つまり、刺激後30分までαアミラーゼおよびコルチゾールを測定すればよいことが分かった。 ところで冷刺激(tonic pain)による瞳孔径の変化は、電気刺激(phasic pain)による変化とは異なり、かなり散大が持続する。そのため、瞳孔の変化を詳細に採取できるよう、瞳孔測定の既存システムを最終的に調整中である。具体的には電気刺激のようなphasic painのような刺激後2秒以内の変化をみるのではなく、刺激後数十秒以内の変化を測定できるように最終調整している。 この調整が完了した後、平成24年度以降は実際に各種パラメータの測定に入る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)は、平成23年度の結果を参考に、「瞳孔散大反応のストレス応答しての有用性」をテーマに行う。 具体的には、30名以上の健康成人を対象に、まず点滴確保後、コットンロールを噛ませ唾液採取をする。同時に瞳孔径、心拍変動、血圧、脈拍数を測定する。さらにノルエピネフリン測定のための採血を行う。唾液の採取は、ストレス時、ストレス後1~3分、5~7分、その後も刺激開始から30分まで行う。 痛みおよびストレスの主観的評価法としてVisual Analogue Scale(VAS)を用いる。また自律神経活動測定は、MemCalc/Tawaraを用いる。本装置は、心拍変動、すなわち心拍R-R間隔の周波数解析により交感神経と副交感神経のバランスの変化によって影響される「心のゆらぎ」を定量化し、自律神経を客観的に評価するものである。同時に血圧および脈拍数を測定する。これらは刺激開始前より刺激開始後30分まで経時的に測定する予定である。瞳孔径の測定は、刺激前と刺激中および刺激後も適宜行う。 上記の研究を円滑に行うため、αアミラーゼアッセイキッド、コルチゾールアッセイキッド、ノルアドレナリンの測定に必要な分析検査代を実験材料費として申請する予定である。 また、データ解析のために、personal computerを申請するつもりである。 さらに海外研究者と打ち合わせのために渡航し、さらにデータの一部を国際学会で発表するつもりである。
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Research Products
(2 results)