2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23593018
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
志賀 百年 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (20596134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯根膜 / 弾性線維 / ペリオスチン / fibrillin-1 |
Research Abstract |
本研究の目的は歯根膜弾性線維の機能の解明である。初年度の計画は歯根膜細胞から産生される弾性線維の機能を特異的に低下させることを目標とした。弾性線維の機能低下を達成するため弾性線維の主要構成要素であるfibrillin-1の遺伝子発現を低下させた。遺伝子発現低下にはRNA干渉法を用いた。現在用いられるRNA干渉法には大きく分けsiRNA法とshRNA法がある。今回は比較的手技が簡便なsiRNAを選択した。化学的に合成したsiRNA(合成オリゴ)を複数使用し、それぞれを歯根膜細胞にトランスフェクションした。予備実験としてそれぞれの合成オリゴが細胞にトランスフェクションする最適な濃度を検討した。3種類の合成オリゴを歯根膜細胞にトランスフェクションした後、1日経過した細胞のfibrillin-1 RNAの発現をリアルタイムPCRにて解析したところコントロールに比べ、すべての合成オリゴでfibrillin-1 RNAの発現量が低下した。この中で最も発現量が低下したオリゴを用い、1日、3日、7日目におけるfibrillin-1 RNA発現量の変化を調べた結果、3時点にすべてにおいて12%以下の発現となった。1日目から3日目は発現がさらに低下したが7日目においては発現量の低下が若干戻る傾向を認めた。以上の結果によりRNA干渉法を用いて歯根膜細胞におけるfibrillin-1の効果的なRNA抑制が可能であることがわかった。この結果を踏まえ現在さらに長期間でのfibrillin-1 RNAの発現を検証している。RNA干渉法の成否は合成オリゴの種類の選定、効率的な合成オリゴの細胞導入条件が重要となる。今回効果的な合成オリゴの選定と効率的な細胞への導入条件を決定することができた。これは今後本実験を進行させるうえで非常に重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においてはfibrillin-1のRNAの発現低下だけではなく、表現型の変化も確認する必要がある。しかしながら現在まではRNA干渉法を用いてfibrillin-1 RNA発現の低下は確認できたものの表現型の変化までは確認できていない。これはRNA干渉法を用いて効果的にRNAの発現を低下させるための条件の設定に予想以上に時間がかかったためである。現状では効果的なRNA干渉法の条件設定はほぼ確定しており、現在表現型の変化の解析を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにRNA干渉法により1週間目までの有意なfibrilli-1 RNAの発現の低下が確認された。in vivoの実験を見据え、さらに長期間の細胞培養でのfibrillin-1の発現量を検証する。また、タンパクの解析を行い、さらにfibrillinの形成の変化を検証することで、表現型の変化を確認する。タンパクの解析はwestan blot法による解析、fibrillinの形成の検証は培養細胞を固定し、fibrillinの免疫染色を行う。コントロール群と実験群のfibrillinの状態がどのように変化するかを比較する。さらにペリオスチンの変化を解析し、歯根膜弾性線維の機能低下とぺリオスチンの関連を解析し、本研究の目的を達成しようと考える。現在までの研究結果を踏まえると今後課題となりうることはsiRNAによる効果的なfibrillin-1 RNA発現低下の持続期間である。仮にsiRNAによる発現低下が持続できない場合はshRNAを試みることも検討している。in vitroの解析の終了後はin vivoの解析を行う。Fibrillin-1が機能低下した状態の歯根膜細胞をハイドロキシアパタイト顆粒とともにSCIDマウスの背側皮下に移植し、約1か月後の組織の状態を解析する。移植したハイドロキシアパタイト塊を固定、脱灰、包埋し、組織切片を作成する。組織切片を免疫染色することにより歯根膜弾性線維とぺリオスチンの組織中での状態を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き歯根膜細胞のfibrillin-1の発現低下にはRNA干渉法は必須である。さらに評価を行うためにRNAの抽出、リアルタイムPCRは必要である。以上の実験に必要な試薬に加え、以下のものが必要となる。(1)歯根膜細胞培養に必要な培養液、抗生剤、試薬 (2)タンパクの解析としてwestan blotに必要な試薬、抗体、標識。順調に実験が進行すれば(3)SCIDマウス (4)移植実験に必要な試薬 (5)組織切片作成に必要な試薬 (6)組織切片の解析に必要な試薬・抗体・標識。また、それぞれの実験に必要な消耗品が必要となり、次年度以降の研究費をそれらの購入に使用する予定である。また本研究に必要な情報を収集するための学会参加の費用、本研究を発表するため必要な印刷等の諸経費に研究費を使用する予定である。
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