2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23593018
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
志賀 百年 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (20596134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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Keywords | 歯根膜 / 弾性線維 / ペリオスチン / fibrillin-1 |
Research Abstract |
本研究の目的はヒトの歯根膜細胞のfibrilli-1遺伝子(FBN1)の発現を抑制することによってフィブリリンとペリオスチンの関連を詳細に検討し、歯根膜弾性線維の新たなる働きを探索することである。初年度の計画は歯根膜細胞から産生される弾性線維の機能を特異的に低下させることを目標とし、RNA干渉法により有意なFBN1の発現の低下が確認された。本年度においてはRNA干渉法によるFBN1の発現低下を詳細に検討し、さらにfibrillin-1とぺリオスチンのたんぱく質発現も探索した。 合成オリゴによるRNA干渉(siRNA)を行った結果、1日、2日、7日目においてはコントロール群に比べ10%以下の発現となった。14日目においては約45%、21日、28日目は60%前後の発現低下となった。この結果からsiRNA法では7日目までは効果的にFBN1発現が抑制されることを確認した。14日目においては50%以下の発現ではあったが明らかに抑制効果が減少した。この結果を踏まえ、プラスミドを歯根膜細胞にトランスフェクションし、より長期的なRNA発現低下を期待できるRNA干渉法(shRNA)を試みた。しかしながら様々な条件下においてもトランスフェクション時に起こる細胞死を避けることができず、本年度においてはsiRNAまたはshRNAによる長期的なFBN1の発現低下による実験系を再検討する必要があると思われた。 FBN1の発現低下している状態においてfibrillin-1とぺリオスチンのたんぱく質発現をwestern blot法により検討した。7日目におけるfibrillin-1たんぱく質の発現はほとんど確認できなかった。ぺリオスチンたんぱく質はコントロール群に比べ発現の増加が認められた。この結果からfibrillin-1の発現低下とぺリオスチンの発現増加になんらかの関係性が予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
siRNAによるFBN1発現の低下は確認できたが、この方法では4週に及ぶ長期的な発現低下は期待できない結果となった。長期的な期間を4週としたのは移植実験において適切に移植塊が摘出できる期間である。これより前に移植塊の摘出を試みても移植したアパタイトは一塊とならず、崩れてしまう。よって当初の目標であった長期的なFBN1の発現低下をさせるためにsiRNAだけではなく、より長期的な抑制の期待できるshRNAを試みた。プラスミドのデザイン、トランスフェクション試薬の暴露時間更、トランスフェクション試薬の変更など様々な条件設定を行ったが、トランスフェクション時に引き起こされる細胞死を避けることが困難であった。よって本年度においては当初の実験系を変更し、違った角度から歯根膜細胞の弾性線維の機能解析を試みることを検討する必要性があった。新たな実験系を検討するために当初の計画よりやや遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的はヒトの歯根膜細胞のFBN1の発現を抑制することによってフィブリリンとペリオスチンの関連を詳細に検討し、歯根膜弾性線維の新たなる働きを探索することである。これまでの実験結果より短期的なFBN1発現抑制は達成できたが、長期的な発現抑制は困難であった。しかしながら、短期的な発現抑制においてもぺリオスチンたんぱく質の明らかな発現増加が確認された。この結果を踏まえ次年度においては短期的なFBN1の発現低下によるfibrillin-1とぺリオスチンの関連を検討し、歯根膜弾性線維の新たなる働きを探索する予定である。 ペリオスチンは創傷治癒や細胞増殖・アポトーシスなど組織恒常性の維持に関与していると推測されている。FBN1 異常であるMarfan症候群患者においては健常者と比べ歯周病の罹患率が高いのと報告があり、歯根膜組織においても組織の恒常性の維持や修復機構の異常とペリオスチンやフィブリリンになんらかの関連性があることが予想される。 今後の課題は短期的なFBN1の発現低下より得られた結果をさらに発展させることである。よって今後はFBN1が有意に発現低下している期間において歯根膜細胞に意図的に外傷を加え、歯根膜が再生する過程におけるペリオスチンとfibrillin-1の変化を探索する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究にはsiRNA法は必須であり、実験を行うための合成オリゴや各種試薬は必要となる。さらに今後は新たな実験系を確立する必要があるが、今まで行っていた細胞培養を応用することで遂行する予定である。よって歯根膜細胞培養に必要な培養液、抗生剤、試薬などは必要となる。さらにタンパク質の解析にwestan blotは継続して必要であり、試薬、抗体、標識などは追加して購入する必要がある。また、western blot法以外にもELAISA法による評価も検討している。ぞれぞれの実験にはディッシュやピペットなど各種消耗品は必要となり、次年度の研究費をそれらの購入に使用する予定である。また、本研究に必要な情報を収集するための学会の参加の費用、本研究を発表するために必要な印刷等の諸経費に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(16 results)