2011 Fiscal Year Research-status Report
インターロイキン22を用いた新しい歯周組織再生療法開発のための基礎的研究
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23593076
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 信行 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50150339)
中正 恵二 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00217712)
山田 直子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10319858)
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒト歯根膜由来細胞 |
Research Abstract |
本研究は,IL-22を用いた新しい歯周組織再生療法の可能性を示すことの一環として,歯根膜(PDL)細胞に対するIL-22の生物学的活性を明らかにすることを目的とする。本年度は,1.PDL細胞株の樹立すること,2.IL-22存在下におけるPDL細胞の生物活性を調べることについて行った。PDL細胞株は兵庫医科大学病院・歯科口腔外科を受診し,智歯の抜歯および矯正治療における便宜抜歯が行われる際にインフォームド・コンセントが得られた被験者5名から,Nishimura らの方法を一部改良した方法を用いることによって樹立することができた(倫理委員会承認済み)。それら細胞株におけるIL-22レセプターの発現は,real-time PCR法およびウェスタンブロット法を用いて遺伝子およびタンパクレベルで確認することができた。なお,IL22RA1遺伝子発現は,炎症性サイトカインであるIL-1βおよびTNF-α存在下において上昇すること,また両者が存在する場合,さらにIL22RA1遺伝子発現が亢進することが明らかとなった。さらに,それらPDL細胞株を用いて,IL-22がPDL細胞の細胞増殖および石灰化物形成能に及ぼす影響を調べた。PDL細胞を無血清培地で1日間培養を行った後,様々な濃度のIL-22存在下および非存在下で培養し,3H thymidine存在下で一定時間培養した後の3H thymidine の取り込み量を測定した結果,両者間に有意な差は見られなかった。また,PDL細胞をIL-22存在下および非存在下において骨形成誘導培地で培養を行ない,それぞれの条件における石灰化物形成を評価した結果,培養初期にIL-22が存在した場合,アリザリンレッド染色および破砕した細胞内外のカルシウム濃度定量において,その石灰化物形成能が促進されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,IL-22がPDL細胞に対して示す生物学的活性を明らかにすることを目的としている。その一環として,1.IL-22がPDL細胞の細胞増殖に及ぼす影響を明らかにすること,2.IL-22がPDL細胞の石灰化物形能に及ぼす影響を調べること,3.IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に解析することを本年度に実施する計画を立てた。さらに本年度は上記項目を実施する準備として,PDL細胞株を樹立することを行った。本年度は5細胞株を樹立するにとどまったが(研究計画調書においては10細胞株を予定),上記項目1および2については「研究実績の概要」に示す成果を得るにいたった。これらの成果は,論文としてまとめられ,Cytokine誌において掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度,本課題において,IL-22はPDL細胞に対して,細胞増殖に対して影響を及ぼさないものの石灰化物形成能を亢進させるという生物学的活性を有することを見出した。今後,IL-22によるPDL細胞の石灰化物形成能の亢進に関わる機序を明らかにする必要があり,次年度以降の研究課題の中心となる。本年度,IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に解析することを,実施計画に含めていたが,現状においてその解析は十分に行えていない。次年度以降,DNAマイクロアレイを用いた検索を行い,得られた結果をもとにreal-time PCR法によって発現量の異なる分子の特定,さらにはIngenuity Pathway Analysis(IPA)を行うことによって,想定される伝達系についての情報を得ることに努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.本年度に引き続き,PDL細胞株の樹立を行うため,細胞の初代培養および継続培養に必要となる培地および血清を購入する必要がある。さらに,in vitro培養系における種々の刺激タンパク(リコンビナント・ヒトIL-22を含む)およびその産生物の検出・同定を行うための試薬を購入する必要がある。2.IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に解析するためにかかるDNAマイクロアレイおよびその試薬を購入する。さらに,その結果において発現量が異なる遺伝子をターゲットとした解析をreal-time PCR法によって行う必要があり,プライマーの合成およびその試薬を購入するために研究費を使用する。3.本研究に関わる意見の交換を行い,研究の発展のために有用となる情報を収集するために,日本大学松戸歯学部を含め,多くの研究者と共同研究打ち合わせを行う。その際に必要となる旅費として研究費を使用する。4.研究の成果を学会および論文にて発表する。学会に参加するための旅費および論文投稿料,英文校正費等を研究費から使用する。
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Research Products
(6 results)