2011 Fiscal Year Research-status Report
周術期肺がん患者における二次元口内気体解析による口腔環境指標の構築
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23593083
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星川 康 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90333814)
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60183852)
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺癌 / 口腔内細菌 / 口臭 / 呼気 |
Research Abstract |
周術期肺がん肺切除患者の口腔は「ブラックボックス」になりやすいため、医科歯科連携の専門的・継続的口腔ケアは術後肺炎発症を抑制する重要な要素であるが、現状では医科と歯科で共有できる口腔評価指標が確立されていない。本申請の目的は、肺がん患者の口腔について、二次元的な口内気体解析から患者の病態を反映した口腔環境指標を構築すること、さらには呼気と口内気体を比較検討することにより、口内気体分析が肺がんのスクリーニングとしての呼気分析に寄与できる基盤を究明することである。 本年度は(1)専門的口腔ケア前後の臨床口腔診査指標値と細菌学的検索、(2)臨床口腔診査指標値と、呼気ならびに口内気体中の揮発性硫黄化合物、有機化合物濃度との関係を究明、のために、有機溶剤系物質検出用分析装置の調整、口腔内細菌由来発生気体について分析装置を使用しての検索、さらには本研究を臨床患者に実施するための学内倫理委員会への承認申請を行った。 口腔内細菌については、健常者を対象に唾液中の総細菌数を蛍光染色法とデジタル画像処理を組み合わせた迅速測定器を用いて刺激時唾液採取直後生菌数を測定し、培地を用いて嫌気培養、好気培養によって総菌数に占める連鎖球菌の比率をみる予備実験を繰り返した。さらに唾液を嫌気、好気下で培養後発生した気体について、揮発性硫黄化合物、有機化合物検出用分析装置を用いて測定した。口内気体中の口腔内細菌由来成分を明らかにすることは、口腔経由で採取される呼気からの情報をより正確に解釈するために必須と思われる。今回の予備的な実験の結果、口内気体中の揮発性有機化合物の中で口腔内細菌が発生する可能性が低い気体が類推された。 大学院歯学研究科倫理専門委員会からは本研究の臨床患者への実施が承認された(受付番号23-17)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、初年度は、(1)倫理委員会への申請、承認を可及的速やかに得る。(2)それと並行して採取した気体を正確に同定し、測定できるように、呼気と口内気体の基礎的なデータを収集、分析し、採取条件の設定、気体測定機器の調整をはかる。(3)承認後は実際に設定条件を確認しながら、周術期肺癌患者を対象に研究計画を実施していく。の3項目について達成することが目的であった。 しかしながら、3月11日の東日本大震災による甚大な被害を受け、歯学研究科としての検死派遣、仮設研究棟への仮移設など、研究体制の遅れがあったことは否定しがたい。さらに、多くの高齢被災者が肺炎を発症し、中心的役割の東北大学病院医科部門での対応が重なった。このため、(1)、(2)は実施できたが、肺癌患者を対象としての(3)については未実施という意味で、本年度の達成度はやや遅れている、と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究費は次年度以降も継続する臨床研究のための物品費として全額使用した。初年度も東北大学病院において予防歯科は呼吸器外科から入院手術予定の肺癌患者さんの誤嚥性肺炎予防のために術前術後の口腔ケアの依頼を受け、周術期に口腔ケアを実施してきた。東日本大震災から1年過ぎた次年度は、担当患者への研究説明と同意書への署名、謝礼の振り込み手続きなどを行い、臨床の場で、研究を実施していきたい。 その上で、(1)周術期肺がん患者の臨床口腔診査指標値と、口内滞留気体のマップ上での分布状態、(2)その二次元的な測定分布と、糖尿病など全身合併症との関連、(3)肺がん摘出術前後でのマップ上の分布の変化、(4)呼気と口内気体との関連、についてそれぞれ検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度使用内容との大きな相違は、臨床研究を実施する際に対象患者への謝金として一部使用するということである。 当初の計画との大きな変更はなく、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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