2011 Fiscal Year Research-status Report
介護者のQOLの実態把握と口腔ケアによるQOL向上の可能性の検討
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23593097
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
相澤 文恵 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (80216754)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 介護者 / 要介護者 / QOL / 口腔ケア / 介護負担感 / セルフ・エスティーム |
Research Abstract |
本研究は家族介護者の介護負担感、QOL、セルフ・エスティーム(SE)の連関を介護者の生活環境をふまえて検討し、QOL向上のために必要な要因を総合的に把握することを目的とした。 平成23年9月15日から平成23年12月15日、家族介護者を対象とした質問紙調査を実施した。質問紙は要介護者と介護者の生活環境および介護者のQOLに関わる項目からなっている。介護者のQOLはSF-8、口腔関連QOLはGOHAI、介護負担感はBIC-11、SEはRosenbergのSE尺度を用いてそれぞれ評価した。サンプル数は許容誤差率5%、回収率60%として6,242通に決定した。質問紙は返送用封筒と共に岩手県内のすべての居宅介護支援事業所、地域包括支援センター宛(417カ所)に発送し、要介護度別に各2名の介護者を無作為に抽出して配布するよう依頼した。質問紙はケア・マネージャーが介護計画策定のために要介護者宅を訪問した際に調査説明書とともに配布し、次回訪問時に返送用封筒に封をした状態で回収した。 質問紙は237施設から2,358通(男性:437名、女性:1,903名、未記入:27名)が返送された。介護者のQOLは国民基準値と比較すると、30代以上の女性で精神的サマリースコア(MCS)が低く、50代以上では身体的サマリースコア(PCS)も低かった。男性では40代から60代でMCSが有意に低かったが、PCSではどの年代でも有意差は認められなかった。ついで、QOL、介護負担感、SEと生活環境との連関を分析したところ、すべての要介護段階においてQOL、SEは介護負担感と関連し、ソーシャル・サポートがある人ほど介護負担感が低かった。 本調査の結果、介護者の精神、身体、口腔に関わるQOLと、SE、生活環境、介護負担感の連関が示された。また、介護負担感の軽減に果たすソーシャル・サポートの役割の大きさが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では初年度において、岩手県内すべての市町村から無作為に抽出した家族介護者を対象として調査を行い、家族介護者のQOLの実態を把握する計画であった。 調査開始前に東日本大震災が発生し、沿岸市町村での調査実施が危ぶまれる状況であったが、岩手県、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターの協力を得て、質問紙の配布を市町村の介護保険担当課を介する方法から、ケア・マネージャーを介する方法に変更し、岩手県内すべての市町村から質問紙の回答を得ることができた。 回収された質問紙は2,358通であり、要介護度別に分析するために必要なサンプル数をほぼ満たした。また、岩手県内すべての市町村別に介護者のQOLを検討することができたとともに、東日本大震災の被災市町村に居住する介護者のQOLの実態を評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.岩手県内の介護老人福祉施設協会、介護老人保健施設協会、グループホーム協会の各理事会において調査の説明を行い、調査実施の同意を得た後、岩手県内のすべての介護施設に調査依頼文書、調査説明書および質問紙を発送する。2.介護職員に対して、QOL、自身の口腔ケアへの意欲、SE、介護職という職種に対する価値観などに関する質問紙調査を実施する。3.職員の口腔診査実施について同意の得られた施設を訪問し、診査結果の研究利用に関する同意書が得られた職員に対して口腔診査を実施する。4.調査データを用いてデータベースを構築し、介護施設職員のQOLにかかわる要因を解析する。5.前年度からの研究成果を国際学会において発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の次年度繰越が生じた理由は以下の3点である。1.調査が市町村介護保険担当課を介した方法から居宅介護支援事業所および地域包括支援センターを介した方法に変更になったため、市町村への調査説明のための旅費が必要なくなったこと。2.交付申請書作成時に計画していた研究補助者によるデータ入力の大部分を業者に委託することができ、データ加工、単純集計を研究代表者および連携研究者が行ったため、人件費が削減されたこと。3.質問紙の発送・返送を郵送から宅急便利用に変更したため、郵送費が削減されたこと。 繰越金は次年度調査で使用する質問紙の印刷および交付申請書作成段階で過小見積もりであった郵送費等にあてる。また、次年度に請求する研究費は、消耗品費、口腔診査を実施する施設までの旅費、研究成果発表のための外国旅費、研究補助者の人件費、データ入力委託費、投稿論文英文校正費等として使用する。
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