2012 Fiscal Year Research-status Report
わが国の文化に基づく看護実践の倫理 ‐倫理学的理論からの探究‐
Project/Area Number |
23593127
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Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
木山 幹恵 浜松大学, 健康プロデュース学部, 准教授 (20345820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70200409)
岡田 勇 創価大学, 経営学部, 准教授 (60323888)
田島 博之 秀明大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40406715)
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Keywords | 医師‐看護師関係 / 看護倫理 / コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、看護師が直面する倫理的問題の背景を詳細に把握し、わが国の文化的特徴をふまえた看護師の倫理的立ち位置を提示することである。平成23年度はアリストテレスやカントの倫理学的理論をもとに、看護倫理におけるキー概念である「徳」と「自律」について、その真意および倫理的判断の基礎になる能力について明らかにした。 本年度は、我が国の看護師が倫理的ジレンマを感じている治療場面4つ(疼痛管理、薬剤による鎮静の是非、過剰もしくは不十分な検査・処置の指示、不必要な死期の延長)に着目して研究をすすめた。まず、すべての場面に共通する背景として、医師‐看護師間の役割遂行上の対立が潜んでいることを明らかにした。次に、対立の要因として、医師側には看護師の専門性に対する認識や職種間関係への関心の低さがあり、看護師側には自律性の希薄さや医療におけるヒエラルキーの存在、教育背景が関係していることを明らかにした。さらに、両者に関わる要因として「専門職としての死生観」が影響していると推察した。これらをふまえ、医師と看護師間の治療場面における対立の様相を解明する必要性から、本年度後半から、ニクラウス・ルーマンの社会学理論をもとに、我が国の医療場面におけるコミュニケーションをシステム論の視座からとらえることを試みた。それによって、医療現場における医師-看護師‐患者の三者関係の本質なあり方として、人と社会(医療現場)との関係、コミュニケーションシステムとしての社会のあり方、相互行為システムとしての関係性といった側面が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、看護師が直面する倫理的問題の背景を詳細に把握し、わが国の文化的特徴をふまえた看護師の倫理的立ち位置を提示することである。また、本研究の意義は看護師の倫理を倫理学理論および関連学問領域の理論をふまえて構築することにある。以下の理由により、研究は概ね順調に進展していると考える。 1.平成23年度は看護倫理における倫理的重要概念である「徳」と「自律」について、倫理学理論をもとにその真意および倫理的判断の基礎になる能力について明らかにした。 2.平成24年度は看護師が倫理的ジレンマを感じる治療場面を選定し、ジレンマの背景にある医師‐看護師間の役割遂行上の対立とその要因を詳細に明らかにした。 3.2に続き、医療現場における医師-看護師の本質なあり方について、社会学理論をもとに、コミュニケーションシステムとしての社会(医療現場)、相互行為システムとしての関係性といった側面から明らかになった。現在までの研究において、これまで看護倫理研究でとらえられてこなかった理論的基礎部分を構築することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでの研究結果をふまえ以下のことを推進する。 ①医師-看護師間の協働的実践と役割認識の実態調査 ②「最善の医療」の実現を目指した看護師の倫理的立ち位置の導出 ①は当初計画では平成24年度に実施する予定であったが、医療現場における医療者間の対立の様相をまず社会学理論から解明することを優先したため、本年度実施する。具体的には医師と看護師を対象として、協働的実践状況や行動特性、死生観等の医療コミュニケーションの状況を把握し、医師と看護師双方の協働上の問題点や課題を探る。 ②は①の結果をふまえて、患者が望む「最善の医療」を実現することを共通のゴールとした医療コミュニケーションのあり方について社会学理論をもとに考察を深める。それとともに、これまで明示されてこなかった看護師の哲学の基盤を明らかにすることを試みる。研究結果は、国際学会での発表や誌上で公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の直接経費は約80万円(昨年度の繰越額を含む)である。今年度は全国調査を実施し、その成果をふまえて国際学会等で発表するため、次のように研究費を使用する。【物品費】調査票作成費用および関連書籍の購入として25万円、【旅費】国際発表のための渡航費および滞在費、研究分担者との打ち合わせ旅費として30万円、【その他】インターネット調査におけるシステム構築費用、調査票郵送費として25万円、合計約80万円。
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