2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性心不全患者の退院早期の在宅療養支援プログラムの開発とその有効性の検討
Project/Area Number |
23593230
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮脇 郁子 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (80209957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多留 ちえみ 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (90514050)
齊藤 奈緒 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (20403298)
服部 容子 甲南女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20337116)
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Keywords | 慢性心不全 / 在宅療養支援 / 再入院予防 / 支援プロトコール |
Research Abstract |
本研究では、慢性心不全患者の再入院予防を目標に、先行研究で明らかにした再入院を繰り返す慢性心不全患者の療養行動の特徴と慢性心不全患者のセルフモニタリングに焦点をあて、退院早期の訪問看護による在宅療養支援プログラムを開発し、その有効性を検証することを目的としている。24年度は、慢性心不全患者の退院早期における在宅療養支援プロトコールをより焦点化するために、23年度に検討したアセスメントのための指標をもとに、訪問看護師による生活調整の実際、特に再発予防に有効であった看護支援内容について、慢性心不全を主疾患とした訪問看護事例をもとに検討した。80~90歳代で心不全分類ステージDの患者4事例に共通した訪問看護師による看護内容は、①排便は怒責や排便時の姿勢、および徹底した排便管理。②感染予防として、上気道感染では口腔ケアの徹底、尿路感染では清潔保持に努め、常に清潔な下着を身に着けるための指導実践。③入浴時、洗髪時、歯磨き時、座位時の姿勢、労作時間の調整など、日常生活動作時の自覚症状を患者が体感しながら、楽な動作方法を習得するための指導の実施。④体重や血圧などの必要な自己管理の可視化(本人が関心を持って日常生活ができるよう努める)、1~2週に1回の訪問診療の実施であった。これらの生活調整を行うことによって、心不全の急性増悪を繰り返すことなく最期まで在宅で過ごすことができていた。これらのことより、共通した在宅療養での生活調整は、①排便コントロール②感染予防③日常の諸労作の具体的な指導および、ADL保持と筋力維持のための指導④セルフモニタリング能力の強化であり、慢性心不全患者の在宅療養を支える訪問看護師のこれらの看護内容に焦点をあてた退院早期の再発予防のためのプロトコール内容の再検討の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、訪問看護における支援プロトコールの検討において、より実際的な再入院予防に効果が期待される看護内容の調査を行ったため、プログラムの開発がやや遅れている。但し、当該年度の事例検討は、本研究における新たな知見の重要な仮説となる部分であり、当該年度の検討がなければ、最終年度による在宅支援のプロトコールの開発につながらないと考えれる。25年度は、当該年度の結果を元に、訪問看護における効果的な支援内容を抽出し、本邦初となる訪問看護における慢性心不全患者の在宅支援プロトコールの試案につなげる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は慢性心不全患者への再入院を予防するための支援プロトコールの作成をめざし、在宅における慢性心不全患者の生活調整の具体を明らかにすることを目的とする。対象は慢性心不全患者への訪問看護を行い、慢性心不全の急性増悪による入院経験がある患者を1年以上急性増悪を予防できている訪問看護師で、本研究への協力の同意が得られた看護師(約20名)とする。調査は、協力が得られた訪問看護師の指定する場所で行う(主には訪問看護師が勤務する訪問看護ステーション)。データ収集方法は半構造化面接を行い、訪問看護師が行っている生活調整の具体に関する面接を行う。データの分析は、内容分析の手法を参考にして質的にを分析を行い、観察の視点、アセスメント内容、ケアの内容、評価など看護の思考過程に基づきデータをフローチャートを作成し、看護の思考過程がわかりやすい形に整理する。フローチャートを用いて、対象者が持っている実際の事例の展開が可能かどうかを確認し、データとフローチャートとの信頼性を確認する。次に、循環器疾患看護のスペシャリストに作成したフローチャートが患者ケアとして活用可能かについて表面妥当性の検討を行う。データ分析における信頼性・妥当性を確保するために、データ分析の全プロセスにおいて研究者間でのディスカッションを定期的に行う。また、急性増悪が予防できている在宅療養患者の生活調整の状況を把握するために、在宅療養中の慢性心不全患者約20名を対象に、小型の心電図およびホルター心電図により患者の自律神経活動および心拍変動などの生理的指標の調査を行う。これらの調査結果をもとに、慢性心不全患者への再入院を予防するための支援プロトコールの作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)訪問看護師への面接調査のための交通費およびデータ整理のため、研究補助を雇用する(謝金)。2)慢性心不全患者の自律神経活動を簡易に調査するために、小型の心電図(FUKUDA電子FX-8222)を購入する。3)プロトコールなど研究成果の発表のために国内の旅費、および論文投稿費が必要となる。4)調査に関わる消耗品として、用紙およびパソコン関連の消耗品が必要となる。
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Research Products
(1 results)