2011 Fiscal Year Research-status Report
「柚子」のタッチによる終末期がん患者の倦怠感とQOLに関する多施設共同前向き試験
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23593274
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
坊垣 友美 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (00469545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 卓 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (30171044)
片桐 祥雅 独立行政法人情報通信研究機構 未来ICT研究所, 脳情報通信融合研究センター, 専攻研究員 (60462876)
宇佐美 眞 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00193855)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 覚醒系精油 / 倦怠感 / 疼痛 / 脳波 / 基幹脳機能 / 寒冷疼痛試験 / 柚子 / 自律神経 |
Research Abstract |
精油による慢性疼痛を伴う癌患者の倦怠感緩和法確立を狙いに、原理検証研究を行った。具体的にはヒトの脳に生得的に備えられたモノアミン神経系による疼痛制御システムは精油の嗅覚刺激により増強されるという仮説を立て、同システムが共通に作用する運動誘発性の中枢性疲労(倦怠感)及び寒冷刺激による疼痛を対象に健常若年成人(20代男女各12名)に対する精油吸入による緩和作用の試験を実施した。ここでは嗅覚は情動系に作用するため、従来から作用が異なるとされている覚醒系、鎮静系および特定物質(柚子)の三種類の精油の効果を試した。緩和効果評価にはVASによる主観評価、脳波および自律神経指標を用いた客観的評価を採用した。試験の結果、精油を用いない寒冷疼痛負荷下では前頭部のα1波強度の増大と基幹脳機能(主としてドーパミン系機能)低下(後頭部α2波強度の低下)を確認し、疼痛が軽減した状態では基幹脳の賦活と前頭部α1波強度の低下を確認した。この結果から、脳が覚醒している状態で疼痛の緩和が起きる傾向にあるという知見を得た。精油吸入に対しては覚醒作用が強く表れた症例で顕著な疼痛緩和作用を認めた。また自転車エルゴメータを用いた誘発性疲労試験においても同様に、脳が覚醒作用を受けた時に顕著な倦怠感の緩和作用が示された。以上の実験結果より覚醒作用のある嗅覚刺激に対して顕著な倦怠感・疼痛緩和効果があると結論付けた。なお従来鎮静系と言われていた柚子は健常若年成人では覚醒作用を示すことが多く、倦怠感と疼痛を抑制した。この結論は、高い覚醒状態で脳機能の活性を促すモノアミン神経系による除痛仮説と整合する。精油の種類に対して統一的作用が得られなかった。これは被験者個々の嗅覚と報酬記憶系の関係の違いに起因するものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精油の倦怠感・疼痛の緩和作用を健常被験者に対して厳密に試験をした結果、従来使われていた定説と異なる作用があることが判明したため、介入試験の根拠となる科学的根拠となる脳機能計測を中心とする生理指標を基準に精油の作用の全容解明を優先させた。課題の難易度から時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
精油による嗅覚刺激に対する脳の反応が覚醒か鎮静かは個々の被験者の状態に強く依存することが判明した。このため、被験者毎に精油の作用機序を精密に鑑別し、嗅覚刺激による倦怠感と疼痛の全容の解明を図る。ここで得られた 基礎的知見を基盤に介入試験方法の最適化を図った上で、終末期がん患者での多施設共同前向き試験の開始を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、嗅覚刺激による倦怠感と疼痛の全容の解明を図るために、被験者毎に精油の作用機序を精密に鑑別していく。そのため研究費は試験の消耗品や被験者の研究協力への謝礼等を中心に使用させていただく。
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Research Products
(8 results)