2012 Fiscal Year Research-status Report
「柚子」のタッチによる終末期がん患者の倦怠感とQOLに関する多施設共同前向き試験
Project/Area Number |
23593274
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
坊垣 友美 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (00469545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 卓 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (30171044)
片桐 祥雅 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (60462876)
宇佐美 眞 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00193855)
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Keywords | 精油 / 柚子 / 疼痛・倦怠感制御 / 脳機能計測 / 慢性疼痛評価 / タッチ / QOL / 寒冷昇圧試験 |
Research Abstract |
柚子タッチによるがん疼痛除痛効果の原理を明らかにするため,健常成人を対象に慢性痛に係るC繊維を刺激できる寒冷昇圧試験を実施した.その結果,柚子タッチが優位に疼痛感を緩和し,無痛に近い状態を誘導できた.さらにhemoencepharogramおよび脳波による脳機能計測から,この無痛状態は前頭部皮質血流が低下し後頭部α2強度が増大するときに出現することが明らかとなった.以上の結果から,柚子タッチは視床を含む深部脳活動の増大を誘導することで慢性疼痛の緩和作用を有することが推察された.柚子タッチの疼痛緩和効果は健常被験者に対して発現した.適用範囲を明らかにするための質問紙法では,特性不安尺度(STAI)および軽度うつ尺度(SDS)が極度に高い/低い被験者は強い疼痛感を申告し,緩和効果が発現しにくい傾向にあることが判明した.適用範囲を規定する条件を得るまでには至らなかったが不安・うつを緩和する心理療法との併用により柚子タッチの臨床導入が可能であるとの見通しを得た. 早期臨床試験開始を目途に,パイロット的に直腸癌術後多臓器転移のある患者に柚子精油のタッチを6日間実施した.その結果,心拍変動のから推定される自律神経活動では副交感神経が優位となり,また,ストレスの生理指標である唾液クロモグラニンA濃度も有意に低下した.また介入開始後3日間は突出痛の発現がなくレスキュー・ドーズを必要としなかった.血圧と呼吸数は低下傾向にあった.倦怠感(CFS)は介入3日後から漸減し闘病意欲が高まる発言も出るようになった.健康関連QOL(SF8)と個人の生活の質(SEIQoL-DW)の全ての項目の得点が上昇し,心理的改善が定量的に裏付けられた. 今後,柚子タッチの適用条件の全貌を健常被験者を対象に明らかにしていくとともに,臨床での介入試験によりがん疼痛緩和の代替補完医療としての柚子タッチの確立を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常成人被験者に対して精油吸引および精油マッサージ施術下で無痛状態(analgesia)を再現性よく出現させることを確認し、がん性疼痛・慢性疼痛を有する患者に対して適応できるとの見通しを得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに深部脳機能と情動への関与から疼痛緩和効果の個人差について検証を続け,無痛効果の個人差に関する定量化をすすめ,適用条件を明らかにする.この結果を受けて,施術対象をがん患者・慢性疼痛患者等に広げ効果の検証を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
無痛効果の個人差に関する定量化や適用条件を明らかにするため,被験者への謝金,データ解析に使わせていただく.
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Research Products
(5 results)