2011 Fiscal Year Research-status Report
軽度発達障害の幼児を看護支援するペアレントトレーニングと被虐待児への応用
Project/Area Number |
23593282
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
横山 浩之 山形大学, 医学部, 教授 (40271952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 淳子 山形大学, 医学部, 教授 (30250806)
富澤 弥生 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (60333910)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 軽度発達障害 / 幼児 / 虐待 / 行動異常 / ペアレントトレーニング |
Research Abstract |
研究協力者の保育士を対象として、ペアレントトレーニング(PT)の研究会を開催した。事後の実践報告によれば、軽度発達障害がある幼児の行動異常のに対しても、の手法が有用であることが示された。また、軽度発達障害がある子どもが在籍している集団についてもPTの手法が有用であった。大学院公開ゼミに参加する教師、養護教諭の協力を得て、小中学校に在籍する被虐待児の行動異常に対して、PTを施行して、行動異常の変容を観察したところ、周囲への他害行動、興奮等があって指導を要した回数は有意に減少した(p<0.05)。PTの手法を行うに当たり、本人の愛着形成を促進する役割(母親役)と集団への適応を促す役割(父親役)のチームアプローチが、PTを行うためにも必要であった。これらの手法を行った学級において、よりよい学校生活と友達作りのためのアンケート(hyper Q-U)を施行した。PTの施行により、学級生活満足群に属する児童・生徒の数が試行前に比べて有意に増加(p<0.05)した。PTの手法が被虐待児の行動改善のみ鳴らず、不登校児対策、学級経営上も有用であることが判明した。これらの保育・教育実践から、被虐待児および発達障害がある幼児の双方において、基本的な生活習慣や社会生活スキルの乏しさが浮きあがった。これは、保護者にとって扱いにくい子どもたちであるため、生活習慣をしつけられないので保護者が代わりにしてあげる、社会生活体験をさせるよりテレビゲームなどで時間稼ぎをして家庭内にとどめおく傾向が強いためと思われる。従って、さらなる行動改善を得るためには、ソーシャルスキルトレーニングの手法をPTに加えて取り入れる必要があることが示唆され、今後、被虐待児・軽度発達障害がある幼児に特化したソーシャルトレーニング教材の開発が必要であり、現在印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児に対するペアレントトレーニング(PT)の有用性の検討については、事例報告のレベルまで進展し得た。しかしながら、これは予定より遅れている。東日本大震災によって、研究協力者が被災したために、PT手法を行う全10回が1クールである研究会に参加できないためである。今年度は、考え方を理解していただき、事例報告のレベルでの有用性確認(質的研究レベル)での有用性確認にとどめた。一方、被虐待児に対するPTの有用性の検討については、現場のニーズが高いこともあって、予定以上に研究が進展した。具体的には、来年度以降に予定していた hyper Q-U を用いた検討を今年度のうちに行うことができた。この結果によれば、PTの手法は、被虐待児の行動改善(CBCLによる)にも有効であるのみならず、その子どもが所属する学級の子どもたちのクラス満足度の改善にも有用であった。また、研究の伸展によって、PT手法の有用性が明らかになる一方で、この手法を使いこなす支援者(教師、養護教諭、保健師)が誤りやすいポイントが研究会での検討で明らかになった。愛着形成を形成しつつある被虐児は、支援者に対して、自分の要求を甘えて伝える。この要求は、いわゆる「好きな子いじめ」と同じ性質をもつので、支援者が被虐児の行動が悪化したと勘違いして対応してしまうという点である。今回の検討では、研究者が誤りを指摘し得たので、行動改善が得られているが、今後のPT手法の修正につなげるべきと考えられる。このように被虐待児におけるPTプログラムを改善すべき示唆が得られたことは、今回の研究で当初予定していた研究成果を超える成果が得られていると考えられる。以上から、総合的には、研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
軽度発達障害がある幼児に対するPT手法の検討については、本来今年度行う予定であったが、東日本大震災の影響で、予定されていた研究協力者の参加が困難となったため、来年度から2年間かけて実施し、成果を検討することとしたい。一方、被虐児に対するPT手法の効果検討については、今年度1年間の研究で、3年間の計画全体で予定されていた研究を全て終了し得たことから、さらなる発展的検討を予定している。具体的には、PT手法を補うことに特化したソーシャルスキルトレーニング教材の開発であり、来年度はその実証試験を行いたい。ちなみに、教材作成は今年度のうちに作成が終了しており、軽度発達障害のために行動異常がある子どもでは有用性を確認した。来年度は、虐待がある行動異常がある子どもにも使用すると共に、この教材が地域社会にとっても有用であることを確認したいと考えている。現時点で、山形県内および宮城県内の3市町村、10小学校に協力を依頼しており、数千人程度の小学生を対象として調査する方向で準備を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の残額を、ソーシャルスキルトレーニング教材の印刷に使用する予定で、2012年4月現在、見積もりが終了している。この印刷費用のために、おおよそ30万円を支出する予定である。 来年度も今年度同様に、よりよい学校生活と友達作りのためのアンケート(hyper Q-U)の施行のために予算を利用したいと考えている。また、既に被虐児を対象としたPT手法の改善すべきポイントが理解できたことから、PT手法を広く周知するための手法についても、来年度に予備的検討を行い、最終年度には、何らかの形で世に問うことができるようにしたいと考えている。具体的には、e-learning の活用がよいのではないかと思われる。以上に示したように、次年度の研究費は、いずれも消耗品を主として利用される予定である。
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