2012 Fiscal Year Research-status Report
震災時の健康被害の抑止に向けた関係機関連携による在宅療養者の防災支援モデルの開発
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23593449
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
高橋 和子 宮城大学, 看護学部, 准教授 (00315574)
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Keywords | 地震災害 / 在宅療養者 / 健康被害 / 防災支援 |
Research Abstract |
本研究は、防災支援システムの構築を図り、関係機関の連携による、震災時の在宅療養者の安全と、被災後の健康状態の悪化の抑制につながる平時における防災支援モデルを開発することを目的としている。 震災時の在宅療養者の健康悪化の実態と関連要因を検討するため、平成23年度に引き続き、阪神・淡路大震災以降の震災を対象とし、文献検討を行った。 文献検索は、GeNii(NII学術コンテンツポータル)、医学中央雑誌Web版、社会老年学文献データベース等を用い、在宅療養者の被災後の健康被害の状況が記載されている文献を抽出した。 抽出した文献を、災害別、対象者別、災害サイクル別に整理した。その結果、阪神・淡路大震災では、災害サイクルの急性期において、特に高齢者では、脱水や栄養状態の悪化、不穏や精神症状の出現、基礎疾患の悪化、肺炎、ADLの低下、死亡などが健康被害の内容として挙げられた。また、関連もしくは関連が予測される要因として、水分摂取不足、自宅の被害状況、停電や避難場所での医療機器・介護機器の使用困難などが挙げられた。慢性期では、ADLの低下、体調不良、肺炎、心疾患や脳血管疾患などの新たな疾患の発生、死亡などが挙げられた。関連が予測される要因として、生活環境の変化や介護者・介護支援者の不足による生活上の制限が挙げられた。新潟県中越地震・中越沖地震においても肺炎以外は、阪神・淡路大震災と同様の傾向が認められた。その他、各疾患特有の被害も把握されていた。 急性期は、水分摂取や必要な医療機器・介護機器の使用も含めた環境の確保、慢性期は、安心できる療養環境と必要な介護を受けられる人的・物的環境が在宅療養者の健康に関係してくることが伺われ、これらの点を踏まえ、療養者・家族の備えの現状把握と、防災支援モデルの検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度が東日本大震災の発生年となったことから、文献収集の活動開始時期が遅れた。在宅療養者に関する災害被害の報告は、被災住民を対象にした調査の一部として報告されているものも数多くあった。また、同じ震災であっても用いられている名称の違いにより、検索される論文数が異なった。そのため、該当論文が可能な限りもれなく検索されるよう、データベースの検索語を見直しながら、繰り返しの作業が必要となり、文献抽出と入手に時間を要した。本年度までに、東日本大震災以前の震災における該当文献からの在宅療養者の健康被害と関連要因の抽出は概ね終了した。今後は、東日本大震災後に公表された論文等の報告も加味しながら、在宅療養者・家族介護者を対象とした震災後の健康被害の防止に関わる備えの実態調査の準備を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、在宅療養者・家族介護者を対象に、震災後の健康被害の抑止に関わる、防災支援ニーズを明らかにするための実態調査を行う。東日本大震災後、被災住民を対象とした様々な機関・研究者等による調査が行われており、研究者の所属機関が被災県であることから、調査協力機関の確保が計画時よりも、やや難航することが予想される。質問紙調査の準備を進めるとともに、対象者へのアクセスの窓口となる研究協力機関の確保に向けて、関係機関に理解と協力が得られるよう、働きかけを行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に整理した震災による在宅療養者の健康被害の実態と関連要因について、平成25年8月に開催される日本災害看護学会年次大会(演題採択済)や、その他の学会等で報告する。成果発表と並行して、連携研究者や他の研究者等の協力を得て、質問紙の作成と内容の妥当性の検討を行い、調査を実施する。
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