2012 Fiscal Year Research-status Report
手の加温と高齢者の睡眠との関連をアクティグラフ・睡眠尺度を用いて検証する
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23593462
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
岩根 直美 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 助教 (90554527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 真由美 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 准教授 (00300377)
鹿村 眞理子 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (10143207)
羽野 卓三 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90156381)
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Keywords | 手の加温 / 睡眠 / 高齢者 |
Research Abstract |
平成24年度は安全で効果的な加温方法の確立と加温と睡眠効果の検証であった。そこで、文献レビューから乾性に比べ湿性加温が効率的な熱伝導であることが明らかとなったため、加温部位、範囲、時間を決める予備実験を行った。睡眠効果がある加温は深部・皮膚温が1℃以上の上昇が必要である。そこで、加温前後で深部・皮膚温の変化を測定した。成人女性では、タオルによる湿潤は15分間では安定して持続させることができたが、深部・皮膚温を1℃以上上げることはできず、15分以上の時間を要すると、皮膚の掻痒感が出現した。加温時間を延長するには安全性が重要であるため、蒸気式の加温に変更して予備実験を行い、皮膚の負担がない方法であることが明らかになった。 次に、加温範囲と部位の関係について検証し、手掌を15分以上加温することは拘束感が生じ、加温効果が少ないため、前腕のみ加温することにした。成人女性による実験では蒸気式加温を10名程度行い、手の皮膚温度が1℃以上上昇し、足の深部温もやや上昇することが確認できた。そこで、高齢者への加温も成人女性と同じ結果であるかを明らかにするため、65歳以上の軽労働できる女性高齢者10名を対象に、蒸気式による加温を30分間行い、深部・皮膚温が1℃以上加温するかを確認した。結果、足の深部温と手の皮膚温では有意に加温することで温度上昇することがわかった。この結果より、高齢者に対して安全で効果的に加温することができる用具を決定することができた。 加温と睡眠の効果の検証は、同じ高齢者においてクロスオーバーを用い、蒸気式加温を行う日と加温しない日によって睡眠への影響の有無を比較した。対象は不眠のない高齢者5名と不眠のある高齢者4名で実施した。現在、結果を分析中である。今後は対象数を増やして検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は予定通りの研究を進めることができたが、高齢者の睡眠データの測定数が少数であったため、統計学的な処理をもって明らかにするには至らなかった。 しかし、臨床研究までに仮説に基づき、生理的な変化をもたらす加温方法を実験し、検討することができた。深部・皮膚温と睡眠の関係を検討するには、加温する方法が生理的に体温変化をもたらす方法であるかを明らかにした上で行うことが、科学的根拠をもつ看護技術の開発につながる。その点において、手の加温時間は15分では短く、30分程度必要であることがわかった。また、睡眠効果を意識した加温は最低30分間が必要であることや高齢者の皮膚状態を考慮すると、湿性の方法はタオルや手浴のように十分に皮膚を湿らせる方法は向かないことがわかった。睡眠と加温の関係を明らかにするために行った実験により、安全で効果的な睡眠への援助方法の資料となった。 この研究は外気温が低い環境において効果的な研究であり、睡眠データの測定は冬期に限定されるため、データ収集期間が短い。しかし、少数ながらも安全な手の加温方法を用いて睡眠データの測定を行うことができた。内訳として、不眠のある高齢者4名と不眠のない高齢者5名の測定ができている。そのうち、糖尿病をもつ高齢者1名も測定している。現在、データを分析中ではあるが、加温によって入眠潜時が短縮し、睡眠効率が上昇した高齢者もいるが、効果がない高齢者も存在している。それは、加温時の高齢者の体温条件や疾患の有無によって影響があることが予測できた。効果の有無と対象の条件など、結果について生理的なメカニズムを考慮し、検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度に測定した高齢者のデータを詳細に分析し、学会発表と論文作成し、結果を速やかに公表する。また、今まで得たデータの根拠を明らかにするための実験研究を推進する。 1つ目として、臨床研究で得た睡眠のデータについては、個別な体温条件や疾患の有無によって加温状態が異なるかを明確にする。4~8月は糖尿病や末梢循環障害をもつ高齢者に対して加温し、その体温変化は今まで得たデータと異なるか比較し、生理的な変化についてのデータを得る。さらに、生理的な変化を明確にする測定器具の検索を行い、データの精度を高めるよう検討し、購入する。できるだけ、個別な条件をデータ化する。 2つ目として、実験結果を考慮し、睡眠に関する臨床データを収集する。平成24年度に収集した不眠のある高齢者と不眠のない高齢者の対象数を増やし、統計学的な処理を行い、加温がもたらす睡眠への影響を明らかにする。 3つ目として、糖尿病をもつ高齢者についても加温が睡眠に影響するかを明らかにするために、データ収集を行う。 データ収集した結果は速やかに分析し、学会発表および論文作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は臨床実験を重ねてデータ収集し、学会発表と論文を行う予定である。 研究遂行に関する費用として、使い捨てである蒸気式加温用具を加温する回数分を随時購入する。さらに、実験で使用する体温測定用具であるサーモグラフィやレーザー式体温測定器具を購入する。実験の精度を高めるために人工気候室を使用する予定であるため、その借用費用や実験回数に応じた協力人員のアルバイト代金、対象への協力依頼など研究実施に応じて使用する。 また、結果については学会発表を行うため、学会参加と出張費用として使用する。論文作成については英文校正や投稿費用として使用し、研究成果を公表する。
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Research Products
(1 results)