2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科における患者‐看護師間の対立状況を解決するコミュニケーションスキルの開発
Project/Area Number |
23593468
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
岡田 実 弘前学院大学, 看護学部, 教授 (20438435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 大輔 弘前学院大学, 看護学部, 助教 (80458166)
阿保 順子 長野県看護大学, 看護学部, その他 (30265095)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 精神看護 / 患者-看護師関係 / 対立状況 / 援助関係 / コミュニケーションスキル |
Research Abstract |
本研究初年度の研究実績を,以下の4項目に沿って述べる.(1)文献検討:本研究のテーマである患者-看護師間の対立場面を扱った研究は少ない.川村(2002)は,患者への呼びかけ・注意・説得が患者との対立と衝突(暴力)の要因になっていること,また,安永(2006)は患者の暴力の引き金となった要因には,注意・促し・呼びかけ・説明・説得があると指摘している.これらの研究はケア場面での患者-看護師間のコミュニケーションのずれや行き違いに問題があると指摘している.欧米での研究も同様で,Nijmanら(1997)は患者との対立が多く観察される治療手続き・病棟規則・行動制限などの場面で,事前に適切な情報提供を患者に行えば暴力のリスクを減少できるとしている.さらに,Ward(1995)はケアのプロセスで患者との対立が観察されることから,こうした現象を"Care Confrontations"と称し記述している.いずれの研究も,精神科臨床のどのような場面で患者-看護師間に対立が生じているのか,その具体的な状況や場面の収集と分析・解釈が重要であることを意味している.(2)質問紙の作成:上記の文献検討を経て,精神科病棟のどこで(場所)・いつ(時間)・どんな(内容)対立場面がどのように(状況)発生しているのか,これらを明らかにする質問紙を作成した.(3)倫理委員会申請:研究計画書とアンケート調査用紙を添付し,弘前学院大学倫理委員会に本研究の倫理審査申請書を提出した.平成23年11月26日付で「承認」の結果が研究代表者に通知された.(4)アンケート調査の実施:平成23年12月下旬から青森県内20精神科病院,総合病院精神科病棟,県外精神科病院3施設にアンケート調査への協力可否を伺い,協力可と回答のあった15施設(32病棟)にアンケート用紙を配布した.回収(51.0%),有効回答率(97.3%)であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)平成23年度の達成度:当初予定していた平成23年度の研究課題は,初年度研究では上記の(1)~(3)まで達成した.アンケート用紙の配布・回収・分析は平成24年度の研究課題であったが,プレテスト(67件)と本テスト(278件)の合計345件のアンケートが収集された.当初,プレテストの回収率が51%であったため,有効回答数300件を確保するには500名以上の精神科看護師がアンケートに参加する必要があった.結果,545名の精神科看護師の参加が得られ予定を上回る345件のデータが得られた.また,プレテストで得られたデータの分析および研究の方向性について,以下の4本の論文(研究代表者および研究分担者)が作成された.(2)平成23年度の研究成果:1)岡田実,煤賀隆宏(2011):暴力のリスクを減らすために臨床で精神科看護師ができること(所収:阿保順子編著,回復のプロセスに沿った精神科救急・急性期ケア,p.81-92,精神看護出版,東京),2)岡田実(2012):精神科病棟において患者-看護師間に発生している対立場面の考察;対立が発生する場所・時間・内容について,弘前学院大学看護紀要,7(1):11-20,3)岡田実(2012):精神科病棟の日常的な看護場面に発生する患者の攻撃と暴力;与薬場面と食事場面で発生した事例の検討,弘前学院大学看護紀要,7(1):21-29,4)菅原大輔,岡田実(2012):強引な看護アプローチによる精神科看護師と患者の間に生じた対立場面の解釈;援助を構成する「患者理解」と「援助態度」の概念を用いて,弘前学院大学看護紀要,7(1):1-9(3)平成23年度の研究評価:予定していた平成23年度の研究計画は消化され,平成24年の研究計画課題の一部も遂行されるに至った.よって,当初の研究プロセスは順調に経過していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究課題として以下の5点があげられる.(1)345件の対立場面に関する情報を入力しデータベースとする:この作業はデータ整理補助要員によるものとする.(2)345件の対立場面を「対立内容」にしたがって定義する.(3)345件の対立場面に適用された看護師の「アプローチの方法」を定義する.この(2)(3)の作業を進める上で,事例の分析や解釈の臨床的な確からしさを確保するために,研究代表者,研究分担者および研究連携者(データ分析補助者でもあり,いずれも精神看護学領域の課題をテーマに修士論文を作成している研究者)の3名以上で検討する.(4)「対立内容」と「アプローチの方法」のカテゴリをプレテストで得られたそれと比較検討する.(5)患者と対立する場面において,その解決を意図して適用される看護師のコミュニケーションスタイルの構成要素を分析する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費用の使用目的とその計画は以下の通りである.(1)直接経費\1,100,000を次のように分担する:研究代表者\700,000,研究分担者2名分\400,000(2)直接経費\1,100,000の使用計画は次の通りである.(1)設備備品費:\140,000 (2)消耗品費:\70,000 (3)調査研究旅費:\400,000 (4)謝金等:\450,000(データ整理補助;\150,000,データ分析補助;\300,000)(5)会議費:\40,000(データ分析・解釈の会議,8回分)
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Research Products
(4 results)