2012 Fiscal Year Research-status Report
多職種によるリエゾン精神医療チーム内および一般科との間の連携・協働のあり方の検討
Project/Area Number |
23593473
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
山内 典子 東京女子医科大学, 大学病院, 看護師 (10517436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 美恵子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10171802)
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Keywords | 精神科リエゾンチーム / リエゾンナース / 臨床心理士 / 連携・協働 |
Research Abstract |
【目的】A施設の精神科コンサルテーション・リエゾンチーム(以下、精神科CLT)が介入した755件の事例について、単独の職種およびチームの介入の差異を概観し、リエゾンナース・臨床心理士が介入した63事例の内容とその構造を明らかにした。 【方法】2011年9月~8月に精神科CLTが介入した755件の事例について、依頼者の職種、身体疾患、依頼理由、精神科診断大分類、介入した職種およびチーム、介入方法を調査した。介入職種は「医師単独介入群」「リエゾンナース単独介入群」「精神科CLT介入群」に分けて分類し、各項目に関してχ2検定により群間比較を行った。また、リエゾンナース・臨床心理士が介入した63事例に対し介入内容を詳細に記述し、そこから各職種の役割の特徴を抽出し内容を質的に分析した。 【結果】適応障害はリエゾンナースが単独により、せん妄等、うつ病性障害、移植前の精神機能評価、IV軸のある患者はチームにより多く介入していた(p< .01)。リエゾンナースと臨床心理士は、患者・家族の精神状態の理解の仕方を示すことにより、医療者に対しても教育的・情緒的な支援に重きをおいた介入を行っていた。また、精神科CLT内、他部門、他専門職者との調整および橋渡しを担っていた。 それぞれの特徴として、リエゾンナースはチーム内の葛藤の調整や対応困難な患者理解への促進、セルフケアの査定、適応障害患者への積極的傾聴を中心とした保証や認知の気づきの促しを行っていた。臨床心理士は、客観的ツールも加味した精神状態の査定、より精神病理の重い患者に対する体系的な心理療法を担っていた。 【考察】各職種の役割に共通の役割および各々の特徴が明示された。従来より提唱されている医学的・心理社会的複雑さからみる精神的問題とともに、医療者の対応の困難度を役割分担の指標とすることにより、多角的な見方、多方面からのチーム介入が可能となると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精神科リエゾンチームにおける各職種の役割について、特にリエゾンナースと臨床心理士の役割を明らかにした。本研究では、リエゾンナースと臨床心理士の役割機能の重なりとともに、その中でもその職種が有する専門的な特性を示した。そのうえで、精神医療の質の維持・向上、特定の医療者への負担の軽減、両者のバランスをとった精神科CLT内の役割分担およびチーム連携の指標について示唆を得た。 また、A施設内の各科における精神科リエゾンチームへのコンサルテーション件数、主たる依頼内容、精神疾患の内訳が明らかとなった。また、循環器科、救命科、糖尿病科においてヒアリングを行ったことにより、精神科リエゾンチームに求められる精神ケアのニーズの具体的な内容が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究結果では、精神科リエゾンチーム内の各職種の役割とその分担の指標を明らかとなったため、今年度は本研究の最終的な課題である「連携のあり方」について示し、特定の診療科に応じた連携体制の基本的な枠組みを提案することを目指す。 方法として、まず、精神科リエゾンチーム内の精神科医・臨床心理士・リエゾンナースの職種の連携について、コンサルテーション活動内容の質的データより導き出す。次に、精神科リエゾンチームに対するコンサルテーションの依頼件数のもっとも多かった循環器科と救命科に特化して、精神科リエゾンチームとの間の連携方法について明らかにする。後者については、これまでの結果より、循環器科ではせん妄の治療およびケア、救命科では、それとともに自殺企図後の精神状態の評価や精神ケアへのニーズが高いことが明らかとなっている。このことから、今年度はニーズに対する介入内容と方法についてデータ収集し、質的に分析を行う。 これらをチーム内連携および特定の診療科との間の連携を体系化させたフローチャートとしてまとめ、今後の介入研究につなげる枠組みを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度までにまとめた研究結果を論文化するための諸費用にあてるとともに、上記に述べた研究課題の取り組みに関する学術集会での報告のための費用、関連図書の購入にあてる予定である。
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