2011 Fiscal Year Research-status Report
抗精神病薬に依存しない認知症高齢者ケアを促進するためのケア・プロトコールの作成
Project/Area Number |
23593482
|
Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
河村 圭子 梅花女子大学, 看護学部, 教授 (30214274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中平 みわ 梅花女子大学, 看護学部, 講師 (90461970)
人見 裕江 近大姫路大学, 看護学部, 教授 (30259593)
中村 陽子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (00341040)
谷向 知 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90361336)
田代 麻里江 梅花女子大学, 看護学部, 准教授 (80336619)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 認知症 / BPSD / 行動症状 / 抗精神病薬 / 高齢者 |
Research Abstract |
認知症高齢者に対する抗精神病薬の投与については,現在,適応外処方とされているものの,我が国を含め多くの国で投与が行われている実情が報告されている。本研究では認知症高齢者の治療・ケアに従事する医師,看護師,介護福祉士,ヘルパーの計25名に対し半構造化インタビューを実施し,認知症高齢者に対する抗精神病薬投与の意思決定への関連要因および,スタッフが認識する抗精神病薬投与のメリットとデメリットについて質的内容分析を行った。内容分析の結果,抗精神病薬投与の意思決定要因については,主因となる高齢者の症状として<激しい行動症状の出現>が挙げられた。行動症状の中でも,特に暴言・暴力などの攻撃的行動がサブテーマとして抽出された。次に,行動症状による<本人の苦痛>を軽減するという治療目的が明らかになった。一方で,<集団生活への悪影響><ケア提供側の困難感>など周囲への配慮のために鎮静目的で処方されている実態も明らかになった。さらに,<ケア提供側の知識不足>と<ケア提供側の価値観>という,ケア提供者自身の課題となるテーマも抽出された。次いで,認知症高齢者に対する抗精神病薬投与のメリットとして,<症状の緩和>といった治療的メリット以外に,<事故防止><介護負担の軽減><集団生活の維持>などケア提供側のメリットも明らかになった。一方で,スタッフは,認知症高齢者が受ける副作用によるデメリットを強く認識していた。抗精神病薬による多様な副作用は認知症高齢者自身のQOL低下だけでなく,あらたな医療行為やケアを必要とする。しかし,スタッフは,抗精神病薬に依存せざるを得ない現状があることも訴えており,認知症高齢者の行動症状への適切な介入に向けて合理的かつ一貫性のある意思決定を行うために,患者要因以外の意思決定要因の検討が必要であると示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在,質的研究のデータ分析がほぼ終了しつつあり,実施計画以上に調査が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度研究計画1)質的アプローチによる知見の発表:7月14・15日老年看護学会。 2)調査票の作成と予備調査:質的研究によって抽出されたテーマに基づき調査票を作成し予備調査を行う。 3)本調査:便利標本抽出によって選択した近畿地方の高齢者施設・精神病院の施設長もしくは看護部(師)長宛てに,看護研究倫理委員会の規定に基づく研究協力依頼の説明書を配布し研究協力者を募る。データ分析(因子分析)に必要な標本数を確保するため約900名に調査票を配布する。研究対象者の選択基準は,(1)認知症高齢者ケアに携わる医師・看護師・介護,(2)介護老人保健施設に勤務する者とする。分析においては,因子分析とクローンバックα係数による解析を行い尺度の妥当性と信頼性を検証する。平成25年度研究計画1)知見の発表:20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics in Seoul, Korea, June 23-27, 2013, 日本老年看護学会等。 2)プロトコール作成:海外で発表された認知症高齢者の行動症状のケア・プロトコールに本研究知見を統合し,プロトコールを作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費(統計分析ソフトなど)550,000円,旅費(学会参加および調査費用など)405,000円,人件費・謝金(調査票配布およびデータ入力など)550,000円,その他(調査票および学会参加費など)255,000円現在,質的研究のデータ分析がほぼ終了しつつあり,実施計画以上に進展しているため,平成23年度の余剰金22万円の追加,および平成25年度予算を平成24年度に前倒しで請求し,調査票によるデータ収集(量的研究)を実施する予定である。
|