2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化亜鉛中不純物ドナー位置での伝導電子散乱現象の探索
Project/Area Number |
23600004
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 渉 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90333319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 嘉高 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (70201374)
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Keywords | 酸化亜鉛 / 不純物 / 摂動角相関 / インジウム / RI / Cd-111 |
Research Abstract |
本研究では、ZnO中にドナーとして機能することが期待される13族元素を不純物として導入し、それらの極微量の原子の存在状態を不安定核をプローブとして原子レベルで解明することを目的としている。平成23年度の研究において、ZnO中でInは広く拡散しているのに対してAlは凝集相を形成していることを示唆する結果が得られた。平成24年度は、Inの存在状態をより詳細に調べることを目指して、Cd-111(←Cd-111m)プローブをZnO試料中に拡散させて摂動角相関測定を行った。ZnO中でのInの濃度を0 ~ 5%の間で変化させてスペクトルを観察したところ、In濃度が増すに従って周波数の分布が大きくなる傾向が見られた(In濃度が5%の場合、相対分布は12%)。これまでのCd-111(←In-111)プローブを用いた研究によって、ZnO中でIn原子同士が凝集してユニークな構造を形成していることが分かっていたが、本実験によってこのユニークな構造は数個のInが集まった小さな集団であり、この構造体がZnO中に均一に分散していることが明らかとなった。 また、Inの濃度が10%のZnO試料を合成し、Inが高濃度の状態でもこの局所構造が形成されるか否かをCd-111(←In-111)プローブで調べた結果、Inは異なる3つのサイトを占有し、より複雑な構造を形成していることが示唆された。スペクトルの周波数と電場勾配の非対称性から、この3つのサイトのうちの1つはInの濃度が0.5%の試料に存在する成分と一致していることが分かった。 上記の研究成果の一部は投稿論文にまとめて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はZnO中の不純物位置の局所構造の解明と不純物による伝導電子散乱現象を明らかにすることを目的にしている。平成24年度は、前年度におおまかに得られたInの存在状態に関してより詳細な情報を得て報文にまとめることができた点において、目的達成に向けて研究が進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ZnO中の不純物の存在状態についてさらに研究を進める。Inと同じ13族元素を不純物として導入し、これらの原子が構成する特異な局所構造やこの位置における伝導電子散乱現象を、これまでのCd-111(←In-111)とCd-111(←Cd-111m)に加えてIn-117(←Cd-117)プローブを用いた摂動角相関測定によって原子レベルで観察する。また、これらの不純物がバルクの物性に及ぼす影響を明らかにするため、構造や電気抵抗率の不純物濃度依存性を粉末X線回折法や4探針法による電気伝導度測定によって調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
摂動角相関スペクトルの温度依存性をより高温で観測する必要性が生じたため、新規に電気炉を設計・製作するための費用として使用する。また、国内外の学会・会議への参加費用や論文の投稿代や別刷の購入に研究費を充当する予定である。
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Research Products
(8 results)