2014 Fiscal Year Annual Research Report
パルス中性子およびミュオンの相補的利用による分子性導体のダイナミクス解明
Project/Area Number |
23600012
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
河村 聖子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 副主任研究員 (70360518)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 分子性導体 / 中性子非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度までに行ったβ'-(BEDT-TTF)2ICl2の中性子非弾性散乱実験の解析をさらに進めた。本研究では、最も低エネルギーE=4.2meVに現れる光学フォノンモードに着目し、このモードと電荷・スピンのダイナミクスとの関連を調べてきたが、4.2meVモードの温度変化を詳しく調べると、ゾーン中心の強度は電荷・スピンのダイナミクスに伴う変化がほとんどなく、一方、ゾーン境界の強度は、グラス的な強誘電あるいは長距離反強磁性秩序の発現に伴い変化を示すことが明らかになった。このことから、4.2meVの光学フォノンモードは、電荷および、スピンの反強磁性相関と強く結合していることを明確に示すことができ、現在論文にまとめている。 また、同物質は、TN=22K以下で長距離反強磁性秩序を示すことが知られており、中性子非弾性散乱によって磁気励起を観測することも、本研究の目標のひとつであった。TN以下では磁気ブラッグ点からのスピン波の分散、TN直上温度では2次元的なロッド状の励起がそれぞれ観測されると予想される。前年度までに行ったTN以下の非弾性散乱の結果を解析したところ、最も低い波数ベクトルQをもつ磁気ブラッグ点(0.5 0.5 0)のまわりで、磁気励起の可能性のあるシグナルを検出した。分子性導体では、スピンが1個の分子あるいはダイマー上に広く分布しているため、Qの増加に伴い急激に磁気シグナルの強度が減衰するため、これまで非弾性散乱を用いた磁性研究は報告されていない。本研究で観測されたシグナルが本質的な磁気励起であることを確認するために、本研究終了後も、温度変化、2次のブラッグ点での観測、TN直上での2次元的な励起の観測等を行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)