2013 Fiscal Year Research-status Report
思春期のレジリエンスと健康行動の関連についての実証的研究
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23601002
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
上地 勝 茨城大学, 教育学部, 准教授 (20312853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 正樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10202417)
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Keywords | レジリエンス / 思春期 / 健康リスク行動 |
Research Abstract |
レジリエンス(resilience)は弾力性、回復力、復元力などと訳され、個人の特性などの内的要因に加え、家族や学校、地域社会との関係などの環境要因を含めた包括的な概念とされている。その定義は十分に統一されてはいないが、ストレスのかかった状態や困難 な環境にも関わらずうまく適応する過程・能力・結果とされ、ストレッサーの防御因子、ストレス反応を低減させる機能であると考えられている。多感で、様々なストレスに曝されやすい思春期においては重要な意味を持つと考えられる。本研究では、レジリエンスの 概念について整理した後、思春期の子どものレジリエンスの実態を把握するとともに、健康関連行動(health-related behavior)との関連性について実証的に検討し、子どもの発育発達の一助となる知見を得ることを目的とした。 平成24年度は、レジリエンス尺度の信頼性と妥当性について高校生を対象に検討し、大学紀要論文に投稿、掲載された(筑波大学体育科学系紀要)。また、中学生を対象として尺度の信頼性、妥当性について検討した(投稿中)。さらに、高校生を対象とした横断研究により、レジリエンスと交通ルール遵守との関連についても検討し、その成果については第71回日本公衆衛生学会において報告した。その結果、特に男子高校生において、シートベルト着用、自転車乗車中の携帯電話使用による接触事故、ニアミス経験と学校得点に関連が見られた。 H25年度は高校生の健康リスク行動とレジリエンスとの関連性について縦断的に検討した。その結果、夏季休暇前から一貫してレジリエンスが高い生徒ほど夏季休暇中に危険行動を起こさない傾向がみられ、逆に低い生徒は夏季休暇中に危険行動に走りやすく、複数の危険行動を起こす傾向がみられた。その成果は第60回日本学校保健学会で報告した。また、論文としてまとめ、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レジリエンスの概念、及びその関連要因について整理した後、高校生用レジリエンス尺度を開発し、その信頼性と妥当性について検討した。その成果は大学紀要論文に掲載された。中学生用の尺度についても検討を行っており、高校生用とは異なる尺度構成となることが明らかとなった。 大学生約1000人を対象とした調査を実施し、スポーツ経験がレジリエンスと関連することを見出した。 高校生を対象とした調査を実施し、横断的に検討したところ、レジリエンスと交通ルールの遵守について関連性が認められた。特に男子高校生において、シートベルト着用、自転車乗車中の携帯電話使用による接触事故、ニアミス経験と学校得点に関連が見られた。これより教師や親からの期待や支援がこれらの関連性に影響している可能性が示唆された。 更に、高校生の健康リスク行動とレジリエンスとの関連性について縦断的に検討した。その結果、夏季休暇前から一貫してレジリエンスが高い生徒ほど夏季休暇中に危険行動を起こさない傾向がみられ、逆に低い生徒は夏季休暇中に危険行動に走りやすく、複数の危険行動を起こす傾向がみられた。 以上、思春期のレジリエンスと健康行動の関連についていくつかの知見を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高校生の健康リスク行動とレジリエンスの関係について、両者の因果関係を検討するために縦断データを収集し分析した。その結果、両者に有意な関連性を見出したが、分析手法が不十分であったことから、縦断データの特性を考慮した分析を行う必要が生じたため、本来ならばH25年度で終了予定だった研究期間をH26年度まで延長し、再度分析を行うこととした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高校生の健康リスク行動とレジリエンスの関係について、両者の因果関係を検討するために縦断データを収集し分析した結果を、平成25年度は研究成果を公表する目的で学会に発表した。その際、分析手法が不十分であることが指摘され、縦断データの特性を考慮した分析をする必要が出てきた。そのため計画を変更し、縦断データの分析に最適とされる潜在曲線モデルを用いた分析をすることとしたため、次年度使用額が生じた。 縦断データについて潜在曲線モデルを用いた分析を次年度に行い、その成果を学会誌に発表することとした。未使用額は潜在曲線モデルの分析が可能な統計ソフト(共分散構造分析ソフトIBM SPSS Amos)の購入、および研究成果の公表のための経費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)