2011 Fiscal Year Research-status Report
世界的所得分配の不平等・貧困度・相対的剥奪に関する計量分析
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23610005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 建夫 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00150889)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 所得分布 / 不平等 / 貧困度 / 世界的所得分配 / グローバリゼーション / 所得格差 / 経済統計 |
Research Abstract |
平成23年度は,所得分布データベースを整備するとともに,経済的厚生や不平等の観点から異なった所得分布を比較するための計測手法について理論的な基礎研究を行った。(1)所得分布データベースの整備:本研究には,可能な限り多くの国について,一人あたり所得・人口のみならず,所得分布データを蓄積することが必要である。所得分布データベースの基本的部分は継続的に作成してきたが,引き続きデータベースの整備充実を計った。所得分布問題への世界的関心の高まりの中で,近年多くの所得分布データやその改訂版が国際機関や研究機関から公表されるようになっている。これら各所得分布データについて内容を吟味し,批判的に摂取し,データベースの充実を図った。未整備の所得分布についてはも国際機関等の研究資料に直接あたり,収集に努めた。(2)経済的厚生や不平等の観点から異なった所得分布を比較するための計測手法についての基礎研究を厳密な公理主義的アプローチに基づいて研究した。現在考察中で一定の成果を得た「中間的不平等概念」を発展させ,有用な不平等尺度関数群とローレンツ曲線規準との関連を研究した。(3)世界的所得分布が推計されていれば,世界的な観点から見た相対貧困率や準相対貧困率という新しい貧困概念を定義することが可能となり,絶対的貧困水準(例えば1日1ドル又は2ドル)に専ら依拠して行われてきた先行諸研究には見られない相対的剥奪という新しい視点からみた世界的貧困の実証分析を行うことが可能となる。そのための準備として,貧困計測に関する理論的研究の深化に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画は(1)所得分布データベースの整備、(2)経済的厚生や不平等の観点から見た所得分布比較のための計測手法についての基礎研究、(3)世界的規模で見た貧困度の推移を計測するための基礎研究、である。これらのうち、(1)については順調に整備が進んでおり、(2)に関しては、新しい中間駅不平等概念に基づくオリジナルな研究成果のひとつを英語論文にほぼ取りまとめたところである。(3)については、貧困計測に関する理論的研究の深化に努めているところである。本年度は次年度以降の研究のための基礎研究を固めることが到達目標であり、全体としては、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究推進方策:平成23年度に引き続き所得分布データの蓄積を碓続し、デ-夕ベースを充実させ、世界的規模で見た所得分布の推移を計測する。世界の可能な限り多くの国について収集した国民所得人口.国内所得分布の3種類のデータをすべて用いて世界全体を対象とする「世界的所得分布表」を作成し分析を行う。世界的所得.分布表の推計結果に基づいて、当初は平成25年度に実施する予定であった世界的規模で見た貧困水準とその推移の計量分析を前倒しにして実施する。特に同分野においては世界銀行のRavallionをはじめとして意欲的な研究成果がワーキングペパー等を通じて発表されはじめているという状況があり、独自の研究貢献を目指すうえでは、研究の実施を当初予定よりも速める必要がある。絶対的貧困水準だけでなく、相対的貧困率や準相対的貧困率等の新しい貧困概念に依拠した貧困率の水準とその推移の計測にも着手したい。平成25年度の研究推進方策:平成24年度から研究途上にある世界的規模での貧困度計測の計量分析を完成させる。更には、これまでの分析結果をもとに世界的規模で見た所得分布の不平等と貧困率の最新の推移とそれに影響を及ぼす要因を考察し、成果を論文にまとめ、学会等で報告を行うとともに査読付専門誌に投稿し、研究目的の達成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度請求金額は1,600,000円であるが、本年度(平成23年度)は書籍購入価格が当初予定よりやや下落気味であったこと等により次年度使用額が98,012円であったため、次年度研究使用予定額は1,698,012円である。主な使用計画は次の通りである。なお、次年度は膨大な計量計算を予定しており、その遂行に必要なソフトウエアの購入とハードウエアの増強を行う。このため下記物品費として(1.a)(1.b)(1.c)を計画している。(1)物品費1,200,000円【主な内訳:(1.a)統計計算ソフトウエア(Fortran compiler, Stata他)等300,000円,(1.b)ワーキングステーションCUDA並列プログラミング計算能力増強用の付加ボード(NVIDIA社製TeslaC2075プラスQuadro2000)・メモリ増設等400,000円,(1.c)磁気記憶メモリ(外付けハードディスク,USBメモリ等)100,000円,(1.d)所得分配研究に必要な専門図書400,000円)】(2)旅費400,000円【主な内訳:研究資料収集国内旅費200,000円、研究成果報告国内旅費200,000円】(3)人件費・謝金100,000円.以上
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