2012 Fiscal Year Research-status Report
世界的所得分配の不平等・貧困度・相対的剥奪に関する計量分析
Project/Area Number |
23610005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 建夫 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00150889)
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Keywords | 所得分布 / 不平等 / 貧困度 / 世界的所得分配 / グローバリゼーション / 所得格差 / 経済統計 / ローレンツ曲線 |
Research Abstract |
グローバリゼーションの進展に伴って,世界を一体的に理解することの重要性は今日ますます高まっている。本研究はこのような観点から,国境の存在をいったん離れて人々の所得のありようをいわば地球市民の観点から世界的所得分布として再構築し,そして,この世界的所得分布を核として,世界の各地域・各国の所得分布の一とその変動をその中に位置づけようとするものである。より具体的には世界各国の国内一人当たり所得・人口・国内所得分布の3種類のデータをすべて用いて世界全体を対象とした「世界的所得分布表」を作成し,世界全体としてどの程度大きな所得不平等度および貧困度が存在し,それがどのように変動してきたのか,を明らかにすることを第一の目的とする。他方,不平等度や貧困度を正しく計測するためには,不平等度や貧困度計測理論の数理的研究が欠かせない。本研究では,現在考察中で一定の成果を得ている「中間的不平等概念」を発展させ,有用な不平等度尺度関数族を導出し,実証分析に役立てるための基礎とすることを第二の目的としている。 第一の目的に関しては,本年度は,平成23年度に引き続いて所得分布データの蓄積に努め独自の包括的なデータベースの充実を図るとともに,世界的規模で見た所得分布の推移を計量手法に基づいて計測した。第二の目的に関しては,平均所得に依存して不平等に関する中間的価値判断のパラメータが変化し得るような新しい不平等概念を提唱する研究を行った。研究成果は2012年度統計関連学会連合大会(2012年9月9日~12日開催)において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画は(1)平成23年度に引き続き所得分布データベースの蓄積に努め包括的なデータベースを可能な限り充実させること,及び(2)上記所得分布データベースに基づいて世界的規模で見た所得分布の推移を計測すること,更には(3)独自の中間的不平等概念に基づいて不平等度尺度計測理論を発展させること,である。これらのうち(1)については,着実にデータの整備を図っている。(2)に関しては推計手法を工夫しつつ様々な不平等度尺度を用いて計測中である。(3)についてはほぼ完成した英語論文のreviseを進めているところである。なお、本来は平成25年度に実施予定であった貧困度計測の計量分析を平成24年度に前倒しして行う予定であったが,結果としては平成25年度まで持ち越すこととなった。しかし、進捗状況としては本研究開始当初に記載した交付申請書(平成23年5月25日付)にほぼ沿うような形となっている。これらの研究はほぼ順調に進展していることから,上記の事項評価が適切ではないかと判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究してきた所得分布データに基づいて世界的規模で見た所得分布の不平等と貧困度及び相対的剥奪度に関する推移を計量的に明らかにする。更に貧困に関しては通常の絶対水準に基づく貧困分析だけでなく,世界的所得分布から見た相対的貧困率や準相対的貧困率という新しい貧困概念に依拠した貧困率の水準とその推移についても計測を進めたい。不平等度尺度の数理研究に関しては,現在考察中の中間的不平等概念を更に発展させることを計画している。より具体的には相対的不平等概念と絶対的不平等概念の間にある中間的不平等に関するパラメータが平均所得に応じていかようにも変化しえると想定したときの所得不平等度尺度関数の関数族の導出,およびそれに対応するローレンツ曲線優越との同値定理を社会的厚生関数族との関連を明らかにすることを含めてより深化する方向で研究を進める。そのうえで,世界的所得分布の不平等推移の実証分析への応用を推進したいと方策している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度請求金額は500,000円であるが,平成24年度は書籍購入価格が当初予定よりも低下傾向にあったこと,研究遂行推進の必要度に応じて並列プログラミング計算能力増強用の付加ボードの購入を見合わせていたこと,本年度に前倒しして行う予定であった貧困計測の計量分析を平成25年度に持ち越したこと(なおこれは本研究開始時の交付申請書記載の予定にほぼ沿うものとなる)、等により、次年度使用額(B-A)が726,234円となったため,平成25年度の研究使用予定額は1,226,234円である。次年度研究費の使用計画の概算は次の通りである: (1)物品費 720,000円 (所得分配研究関連書籍 400,000円:統計計算ソフトウエア 200,000円; ノートパソコン 90,000円;磁気記憶媒体他 30,000円) (2)旅費 400,000円 (研究資料収集国内旅費 200,000円 研究成果報告国内旅費 200,000円) (3)人件費・謝金 100,000円,以上。
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