2012 Fiscal Year Research-status Report
病腎移植に関する諸調査の実施とそれに基づく倫理問題の検討
Project/Area Number |
23613009
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高木 美也子 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (00149337)
|
Keywords | 病腎移植 |
Research Abstract |
日本において臓器提供は非常に少ない為、腎移植希望者は平均待機年数14年で、待機中に死亡する患者も多い。また腎移植の80%以上は家族からの生体腎移植という異常な状況である。当初問題視された、腎ガン等で摘出された腎臓を修復して移植する病腎移植は臨床研究が進行中で、現在までに第三者間で12例、親族間で2例、合計14の症例が示されている。平成24年度の研究実績としては、23年度に行った国内外の医師らに対する病腎移植の是非や見解を聞いたインタビューや奄美大島で実施した夫婦間の生体腎ドナー8名に対する聞き取り調査の結果をまとめたものを、国際学会で3回発表し、さらに論文も2本発表した。 また病腎移植に対して、人工透析患者、生体腎ドナー、生体腎レシピエントはどのように考えているかについて、多くの病院の協力の下、大規模のアンケート調査が実施できた。人工透析患者については、病腎移植の臨床研究を実施している宇和島徳洲会病院を含む徳洲会系列50病院から1495名のアンケートを回収した。アンケートの偏りをなくすため、実施病院系列以外の多数の病院にお願いし、1232名分が集まった。生体腎移植では、ドナーにおいて、宇和島徳洲会病院85 名vs.それ以外の病院 57名、レシピエントでは、宇和島徳洲会病院94 名vs.それ以外の病院 58名のアンケートが集まった。その後、これらの結果をコンピュータにデータ入力した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に行った国内外での医師に対するインタビューや奄美大島で実施した夫婦間の生体腎ドナー8名に対する聞き取り調査結果を考察し、生命倫理関連の国際学会で発表4回、さらに論文も2本掲載されたので、この件に関しては100%達成した。 アンケート調査は、人工透析患者については、徳洲会系列50病院から1495名、病腎移植実施関連病院以外の多数の病院から1232名分を回収した。また生体腎移植では、ドナーにおいて、宇和島徳洲会病院85 名vs.それ以外の病院 57名、レシピエントでは、宇和島徳洲会病院94 名vs.それ以外の病院 58名が集まった。このような大規模調査が実施できたので、この件に関しても100%達成といえる。しかしながら今年度に病腎移植裁判関係者へのインタビューは行えなかったので、トータルとして達成度95%といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.アンケートにおいて、生体腎移植時のドナー・レシピエントの年齢、レシピエントの透析期間、宗教の有無、生体腎移植後のドナー・レシピエントの体調・精神状態など個々の質問項目と、病腎移植が可能であるなら(あったなら)それを受けたいか(受けたかったか)の質問項目は、ベースライン情報と結果情報に分かれるので、これらの総当りによるクロス集計を実施する。さらに上記に加えて、ベースライン情報を群としたノンパラメトリック多重比較法によって群間比較を実施する。また、特にドナーとレシピエントは同一構造なので、ベースライン情報を説明変数として、各結果情報を2値に集約して多重ロジスティック回帰分析を実施する。 2.移植医療ではレシピエントが中心になり、ドナーの問題は御座なりにされがちである。ドナーの身体的・精神的な不安は、アンケートに特記事項として記されていた。これらをドナー問題に焦点をあてた論文としてまとめる。 3.24年度調査をまとめて、3rd Ethical, Legal and Psychosocial Aspects of Transplantation Congress (オランダ、ロッテルダム)、14thアジア生命倫理学会(チェンナイ、インド)、その他で発表する。 4.病腎移植の原則禁止により治療の選択権と生存権を侵害されたとする腎臓病患者による、日本移植学会幹部を相手取った裁判は、生命倫理的な争点も多くあるので、患者団体代表等にインタビューを行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年分よりの繰越金53,095円に25年度分の直接経費1,100,000円を合計して、今期の経費は1,153,095円となる。使用計画として、生体腎移植ドナー・レシピエント、透析患者に対して実施した、病腎移植についてのアンケート調査結果をクロス集計、ノンパラメトリック多重比較法による群間比較、多重ロジスティック回帰分析等で解析する(525,000円)。現在、3rd Ethical, Legal and Psychosocial Aspects of Transplantation Congress (オランダ、ロッテルダム)、14thアジア生命倫理学会(チェンナイ、インド)に参加・発表予定であり、その費用は夫々200,000円、350,000円。病腎移植裁判に関し、患者団体代表にインタビューを行うため松山出張、出雲出張は合計して75,000円となる。
|
Research Products
(5 results)