2013 Fiscal Year Annual Research Report
国際観光局設置に至るまでの観光政策立案過程に関する歴史学的研究
Project/Area Number |
23614017
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
千住 一 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50409546)
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Keywords | 外客誘致 / 経済調査会 / 経済審議会 / 国際貸借審議会 / 帝国議会 / 国際観光局 |
Research Abstract |
まず、本年度の研究成果であるが、当初計画どおり、経済審議会と国際貸借審議会に関する知見の検討を行った。経済審議会については、1928年に田中義一内閣の諮問機関として成立した同審議会を取り上げ、研究期間を通じて収集した史料に依拠し、そこで検討された外客誘致政策のありようについて考察を行った。具体的には、当時の外客誘致政策をめぐる議論の特徴として、国内における名勝の保存やホテルの増設、観光関連施設の整備だけでなく、国情紹介や内外国民の相互理解、国際収支の改善といった要素についても積極的に言及されていることが明らかになった。 国際貸借審議会については、1929年に浜口雄幸内閣の諮問機関として成立した同審議会を取り上げ、研究期間を通じて収集した史料に依拠し、そこで検討された外客誘致政策のありようについて考察を行った。具体的には、国際貸借審議会で、政府内に外客誘致に関する中央機関(後に国際観光局として結実)と官民合同による諮問機関の設置が決議された点や、今後日本政府が取り組むべき方策として、海外向け国情紹介の活性化、国内の観光資源開発、外客向け交通網および宿泊施設の充実、観光産業における外客接遇向上などが言及されている点が明らかになった。 次に、期間全体の成果であるが、研究課題である1912年のジャパン・ツーリスト・ビューロー設置から1930年の国際観光局設置までの日本における観光政策の立案過程に関する歴史学的研究について、当初計画どおり、経済調査会、経済審議会、国際貸借審議会といった各諮問機関や各帝国議会における議論を、外客誘致政策という観点から時系列的に整理することができた。また、そうした政策的動向の背景として、外客誘致を積極的に行うことにより、国際収支を改善するという経済的関心だけでなく、国情紹介や国際交流を積極的に展開するという外交的関心も存在していたことが明らかになった。
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