2011 Fiscal Year Research-status Report
観光資源を利用したパーキンソン病の人のリハビリテーション効果についての研究
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23614029
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
赤松 智子 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80283662)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 観光学 / 京都 / 社会系心理学 / リハビリテーション / QOL / パーキンソン病 / 余暇活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、パーキンソン病(Parkinson's disease;以下PD)の人の健康状態および生活の質(Quality of life;以下QOL)を維持向上させるため、観光資源の活用と有効性について科学的根拠を提示することである。 研究期間の初年度にあたる平成23年度は、京都市在住のPDの人の生活について情報収集を行い、利用している観光資源とその行為について聞き取り調査を行った。また、京都における観光資源と行為について、これまでに報告されている情報や統計学的データから総合的に把握し、レジャーやヘルスツーリズムに関連した文献から観光資源の利用について検討を行った。 PDの人の病態には、すくみ足や突進歩行といった歩行障害や抑うつ気分などを伴うが、薬物療法による薬の効果が良好である場合には、外出や旅行も可能である人は多い。また、歩行能力の維持向上と気晴らしのために、散策や散歩をしていると回答した人もおり、散歩コースは嵐山や嵯峨野であり、日常的に観光資源を利用している人もいた。さらに、日頃、旅行や文化娯楽、買物、趣味、教養などの情報をよく入手しているPDの人のQOL満足度は、入手していないPDの人と比較すると有意に高い傾向を示しており、観光資源の活用は、PDの人のQOLを高めることが期待できる。平成22年京都市観光調査年報の市内訪問地先の上位には、清水寺、嵐山、金閣寺であり、満足度の上位には、寺院・神社や名所・旧跡、自然・風景、伝統文化であった。また、緑を眺めたり、緑の中に身をおくことは、心拍周期や筋肉の緊張度に影響を与え、疲労感の軽減や意欲の向上といった生理的および心理的変化について報告されていた。これらのことから、嵐山や嵯峨野は観光資源が多く含まれる地域であり、自然環境には緑が多く、PDの人のリハビリテーションとしての活用場所として期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
京都市在住のPDの人から情報収集を行い、日常生活において観光地である嵐山や嵯峨野を散歩コースにしている人の情報を得た。その状況を具体的に把握するため、散歩コースに同行し調査を行う予定であったが、天候に恵まれなかったり、PDの人の体調不良や薬の効果が不良であったりするなどといった理由から、実際に観察を通して行動分析を行うことができなかった。 また、観光行為によって生体内変化としての生理機能や精神・認知機能の指標となる各種検査についての情報収集が不足しており、なおかつ、全てにわたり試験的な実施によるデータ収集を十分に行えなかったことから、研究目的の達成度については、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
日常において京都では人気の高い観光地である嵐山や嵯峨野を散歩コースにしているPDの人に同行し、調査を行う予定であったが、天候に恵まれなかったり、PDの人の体調不良や薬の効果が不良であったりするなどといった理由から、実際に観察して行動分析を行うことができなかった。また、観光行為による生体内変化としての生理機能や精神・認知機能を測定するための各種検査について、情報収集が不足しており、適切な自律神経活動を測定する機器の選択ができず、購入に至らなかったため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 次年度では、嵐山や嵯峨野の散歩コースを利用していたPDの人から、これまでの経過や内容について詳細に聞き取り調査を行い、同行が可能な場合は行動観察を行う。また、聞き取り調査から得た観光資源の利用内容を、協力が得られるPDの人に実施して貰い状況観察を行う。現時点では、観光資源として嵐山もしくは嵯峨野を候補として挙げているが、他の観光資源の利用についても検討する。 京都市在住のPDの人の病態や病前後の観光行為について情報収集を引き続き行い、拡大して、京都市外・他府県在住のPDの人から観光行為に関する情報収集と解析を行う。 リハビリテーションに関わる各々の専門の立場からの視点、地域保健・福祉の専門の立場からの視点、京都の歴史や祭り・観光学を専門とする国内研究協力者の視点を融合した京都の観光資源を利用したリハビリテーションプログラムを検討する。また、リハビリテーション実施前後の変化を測定するための生体内機能、および精神・認知機能を測定する手法や検査についての妥当性について試験的に実施し、手技を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費には、観光資源を活用したリハビリテーション体験前後の生体内機能の変化を把握するため、自律神経活動を測定できる携帯型の機器を購入する。活動量計は、対象者に一定期間貸し出す予定であるため複数購入し、これらのデータを解析するソフトおよびプログラムを購入する。観光資源を利用したリテーションプログラムの作成のため、参考となる国内外の資料や文献、観光学、精神・認知行動学、社会心理学、リハビリテーション関連図書を購入する。 旅費には、京都市内および市外在住者も対象として調査を行うための日帰り交通費が必要となる。 人件費・謝金には、調査協力において、拘束時間と現地往復の交通費を鑑み被験者に謝金を支払う。自律神経活動などの生体内変化の解析については、より高度の専門的知識や技術が必要であるため、専門的知識の提供者に対して謝金を支払う。 その他の費用には、PDの人が外出先において、薬の効果が低下し歩行困難となる可能性が考えられることから、リスク管理上、転倒などの危険性もあるため、研究補助者の配置および簡易型車いすを準備するための費用を検討する。また、PDの人が観光行為を行う際には、レクリエーション保険の加入を考慮する。
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