2011 Fiscal Year Research-status Report
一次代謝産物S-アデノシルメチオニン生合成経路によるトランスポゾンの発現調節
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23616007
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
吉川 学 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80391564)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティク制御 / メチオニン代謝 |
Research Abstract |
エピジェネティク制御では、DNAやヒストン、siRNAなどへのメチル基修飾が重要な役割を果たす。それらのメチル化には、S-アデノシルメチオニン(SAM)がメチル基供与体の基質として使われるが、これまでのエピジェネティク制御に関する研究からは、SAMがエピジェネティク制御にどの様に関わっているかは明らかになっていない。DNA型トランスポゾンMRU1は、SAM代謝異常変異体mto1やhog1に加え、ddm1などのエピジェネティク制御変異体でも転写活性化が起こることから、SAM代謝とエピジェネティクスの両方の制御を受けていると考えられる。そこで本研究ではMRU1を主な指標に、SAMの代謝がエピジェネティク制御の関わりを解明することを目的にする。 野生型、mto1, hog1, nrpd1, ddm1におけるMRU1領域のゲノムのメチル化をバイサルファイト法による解析した。野生型の解析から、この領域では維持型のCGのDNAメチル化が顕著で、CHGのメチル化は見られず、また小分子RNAを介したDNAメチル化で生じるCHHのメチル化がわずかに起こっていることがわかった。一方、変異体での解析では、維持型のDNAメチル化に機能するDDM1変異体では、予想通り野生型で見られるCGのメチル化が、大幅に下がっており、小分子RNAを介したDNAメチル化に機能するNRPD1A変異体では野生型とほぼ同じメチル化状態であることがわかった。SAM量が著しく増加してるmto1では、CGのメチル化が低下し、CHHのメチル化がわずかに増加していた。mto1とは別のメチオニン代謝経路異常のhog1では、CGのメチル化がわずかに低下し、CHHのメチル化がわずかに増加していた。これらのことから、メチオニン代謝異常により、CGのメチル化の低下とCHHのメチル化の増加がそれぞれわずかではあるが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に予定していたhog1nrpd1とhog1ddm1の二重変異体を作成した。また、野生型、mto1, hog1, nrpd1, ddm1におけるMRU1のゲノムのメチル化を調べるためのプライマーの設計やメチル化の検出を達成できたので、研究計画をおおむね達成できたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に行ったトランスポゾンMRU1のDNAメチル化の状態をバイサルファイトにより解析した結果、メチオニン代謝異常変異体でメチル化の状態に変化が認められた。そこで、メチオニン代謝に関わるDNAメチル化状態の変化が、小分子RNAを介したDNAのメチル化経路によるか、維持型のDNAメチル化経路によるかを遺伝学的に明らかにするために、それらの変異を組み合わせた二重変異体を作成し、今後、これらを用いてDNAのメチル化解析を行う。また、SAMやホモシステイン、メチオニンなどを植物に与えてDNAのメチル化に変化が起こるかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メチオニン代謝に関わるDNAメチル化が、小分子RNAを介したDNAのメチル化経路か、維持型のDNAメチル化経路かのいずれかであるかを遺伝学的にしらべるために、23年度までにこれらの変異を組み合わせた二重変異体を作成した。そこで、24年度はこれらの二重変異体におけるMRU1などのDNAメチル化状態を解析する。また、SAMやホモシステイン、メチオニンなどを植物に与えることを想定している。そこで、それらの濃度の調節が容易なシャーレ上で植物体を生育することを検討する。この条件検討では、MRU1などのトランスポゾンの発現増加を指標とする。使用する試薬をキャンペーン期間中に購入したために、残額が生じた。残額は、24年度に消耗品費として使用する予定である。
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