2011 Fiscal Year Research-status Report
筋血流量の低下による廃用性筋萎縮誘導機構の解明と萎縮予防法の開発
Project/Area Number |
23650337
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
津田 道雄 東海大学, 医学部, 教授 (00102848)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 廃用性萎縮 / 血流 / ギプス / RNA解析 |
Research Abstract |
2011年(23年度)は、廃用性萎縮筋萎縮誘導の実験モデルを構築した。ラット(Wistar種およびFischer種)の右下腿から末梢部をギプス固定することで廃用性萎縮を誘導した。研究対象筋はSO線維やFG線維の含有割合が多いヒラメ筋(SM)、長指伸筋(EDL)、およびこれらの中間筋として腓腹筋(GM)を選択した。本実験モデルは、先行研究を参考にした手法であり、経時的変化や各筋の萎縮度合いに相違は無かった。一方で、筋血流量の測定を行う実験モデルの確立も試みた。従来の経皮的な血流測定には限界があり、本研究の目的である"筋への血流量"の測定は困難であった。そこで、Br標識microsphereを用いた血流量の測定を採用した。尾動脈から血圧動態のためのルートを確保したうえで、頸動脈からカテーテルを右心室まで進入させ、microsphereを投与した。腎臓などの対象性臓器をコントロールとして、下腿筋群における左右差を分析した。筋萎縮の実験モデルでは、10日間ギプス着用した側のヒラメ筋、腓腹筋で有意な筋萎縮が認められたが、長指伸筋での萎縮は軽微なものであった。比較はすべて左右の同じ筋について行った。萎縮時の遺伝子発現の変化について、RNAアレイ解析を試みた。対象筋は上記と同様三筋とした。Atf3,ubdなどに大きな発現が視られ、現時点での解析状況としては、萎縮には大きく2つの遺伝子発現のピークが認められている。1つ目はギプス固定初期、2つ目はギプス固定後期である。初期においては再分裂制御に関わる遺伝子群の発現にコントロールと比較して変動しており、後期は分解系の遺伝子発現が認められている。萎縮の2つの系統に対し、現在、詳細なる解析と検討を続けており、12年度においても同様の実験系でさらなるメカニズムの解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)骨格筋の萎縮と筋血流の変化、萎縮時の遺伝子発現の変化、中間代謝物質等の変化の検討(1)血流量の測定:経時的に(2週間まで)Br標識microsphereを用いて、血流量の測定方法、近赤外光法を用いたoxy-Hb、deoxy-Hbの測定方法に必要な測定機器は本研究機関にすでに設置しており、測定方法もすでに確立している。Br標識microsphereを用いた血流測定法によりギプス固定によりひらめ筋や長指伸筋での血流が低下することは一部確認済みである。(2)筋肉内中間代謝物質の測定および非破壊的代謝産物および種々のパラメーターの測定:従来の生化学的方法を用いてATP,ADP,AMP,乳酸、NADH/NADなどの中間代謝産物の測定に加えて31P-NMRを使用してきわめて早期の組織のエネルギー状況の変化をin vivoの状態で測定する。この方法は微量な変化を経時的に繰り返し測定できる利点を持っている。同時にホルモン・増殖因子を含めた血液成分の量的変化も継続的に定量する。(3)組織学的検討:一般の組織学的変化に加えて抗速筋―ミオシン重鎖抗体(anti-fMHC), 抗遅筋―ミオシン重鎖抗体(anti-sMHC)を用いてミオシンのタイプ別発現や萎縮度を,laminin抗体を用いてfiber-areaの変化、Azan染色で間質の変化を観察する。(4)DNAチップを用いて特にギプス固定の早期の遺伝子発現の解析によりIGF-1, P13K/AKT, Foxo経路を含む標的遺伝子を絞り込む以上の予定された実験に関し、ほぼ予定通りの進捗状況で、引き続き23年度も継続する予定である。また、一部の有益な結果に関しては、学会発表等に進展するように検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
23年度に引き続き、24年度も継続した実験を行う一方で、申請時の予定である下記の内容を行う。(2)標的遺伝子の解析:筋タンパク質合成/分解のスイッチon/offに関わる可能性のある遺伝子に対して遺伝子のノックアウト、過剰発現系を用いて真の目的遺伝子であるかどうかを検討する。(3)筋萎縮を起こさない新しいギプスの開発:本来のギプス固定の意味(骨折骨の動きの制限、固定)を損なわない、かつ末梢血管拡張や血流を促進する可能性のある機械的刺激発生装置(低周波、超音波、磁場・磁気)装着ギプスを開発し、筋萎縮の予防効果を検討する。23年度に関しても、予想以上の実験結果が得られていると考えており、その結果を詳細に分析の上で学会、学術論文等で発表を行う予定である。今年度に関しても順調に研究が行われるものと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子発現調節解析費用、主にDNA発現チップなどの消耗品費、学会発表等の申請時計画通りの使用を検討している。
|