2012 Fiscal Year Research-status Report
昼食後の短時間仮眠がその後の運動パフォーマンスに与える効果に関する研究
Project/Area Number |
23650390
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
福場 良之 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (00165309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 敏夫 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90179995)
林 直亨 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80273720)
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Keywords | 短時間仮眠 / 情報処理能力 / 動体視力 / 反応時間 |
Research Abstract |
今年度は,昨年度のnapに熟睡(以下,”ds”と呼ぶ:睡眠ステージ4までの深い睡眠)条件を加え,より実践的な能力・機能に関連する項目を追加し,睡眠ステージの違いがそれらに与える効果について検討した。9名の男性被験者は普段通りの睡眠(平均:7.4時間)をとった後に,10時から実験に参加し,16時過ぎに終了した。その間,12時20分から標準化された昼食をとり,13時20分から,① rest条件:1時間の覚醒状態を保つ条件,② nap条件:最初の40分間はrest条件と同様な覚醒状態を保ち,最後の20分間は静寂・低照度な恒温室のベッドでnapをとる条件,③ ds条件:napと同条件のベッドで1時間の深い睡眠をとる条件,のいずれかを行った。nap/ds中は脳波を測定し,その睡眠ステージを実験後に判定した。基礎的な能力として,指での選択反応時間(光3色刺激),周辺視・跳躍視・瞬間視・追従視といった各種の眼球運動能力,基礎的な機能として,静止・動体視力,皮膚痛覚閾値,味覚(甘味・塩味・酸味)閾値,また主観的な眠気や集中力といった自覚症状を表すVASと,心拍数・血圧・体温といった生理指標を,主要な時刻で測定した。睡眠の質の解析結果は,nap条件でほぼ全員,睡眠ステージ1・2を示した。ds条件では,全員少なくとも1回は睡眠ステージ3・4に到達しており,熟睡に至っていたことが確認された。以下,睡眠に関する3条件の前後の変化についての主な結果のみを記すと,VASにおいては, ds後で眠気が有意に改善し, rest後で集中力が有意に低下した。選択反応時間では,ds後に遅くなる傾向がうかがわれた。4種類の眼球運動能力には,3条件共に有意な変化はなかった。動体視力は,nap後に有意な改善があった。皮膚痛覚においては,rest後に有意な閾値の低下が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この2年間で,「スポーツパフォーマンスを支える基礎的な能力・機能に対する,napを中心とした仮眠の効果」について明らかにすることを目的とした計画された2つの実験を,初年度はnapのみ,2年目には熟睡条件も加えて,行うことができた。新たな知見としては,従来から,産業保健で言われているようなnap特有な効果のみならず,若い被験者では,より深く長い睡眠でも,類似した効果(影響)のある可能性が,今年度の結果から示唆された。そこで現在,以下の項目:「今後の研究の推進方策」で述べるような検討を行い,最終年度の実験計画を策定中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の項目:「現在までの達成度」で述べたように,最終年度の実験では,最終的な目的である,スポーツ競技場面の実験的模擬としての運動タスクを課す予定である。現在のところ,午前中に予選,午後に決勝(本選)があるような(陸上競技,競泳競技をイメージした)スケジュールを想定し,午前中の予選に相当するものの代用として,最大無酸素性能力テスト(基準的な方法に準拠して,自転車エルゴメータによる10秒間の3段階の全力最大運動を2分間の休憩を挟んで3回繰り返して行う)を実施し,最大無酸素性パワーを算出する。昼食後に,nap,熟睡,覚醒のいずれかを行うという,2年目と同様なプロトコールで介入し,その後に,午前中と同じ,最大無酸素性能力テストを実施する予定である。あわせて,実践的な意味で,全身性の反応時間も測定したいと考えている。これらの結果に基づいて,午前-午後に同一の最大運動タスクが予選・本選としてあるような現実的な条件で,本選前に仮眠をとることが最大無酸素性パワー(パフォーマンス)と全身反応時間(スタート反応時間)に与える効果(影響)について,実践的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り,実験での消耗品,被験者,実験補助者への謝金,分担研究者との打ち合わせや現場への調査に要する旅費,さらに初年度の研究結果の発表への経費,などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)