2011 Fiscal Year Research-status Report
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23650466
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Research Institution | Shijonawate Gakuen University |
Principal Investigator |
坂口 守彦 四條畷学園大学, リハビリテーション学部, 教授 (00027187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石村 哲代 四條畷学園短期大学, 保育学科, 教授 (90149584)
奥田 玲子 四條畷学園短期大学, ライフデザイン総合学科, 准教授 (10390139)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 魚介類 / 風味 / こく / 隠し味 |
Research Abstract |
魚介類には特有の風味をもつものが多く、これらの肉には明らかな「こく」をもつものがある。これまでに多くの魚介類でそのエキスの組成が明らかにされ、呈味成分とみなされるものが解明されているが、どのような物質が「こく」に関与するのかは不明である。そこで、平成23年度は「だし」として多用され、「こく」があるとされるかつお節を試料として用い、「こく」の実体を明らかにしようとした。かつお節の普通肉のみから調製した「だし」は「あっさりしたうま味」をもつが、血合肉のみから調製したそれは、うま味が弱く異味や「くせのある味」をもつこと、さらに普通肉に血合肉を一定の割合(85:15)で混合したものは「あっさりしたうま味」のほかに、深みや「こく」が加わり、調和のとれた風味を与えることなどを知った。そこで、普通肉と血合肉の主要な成分を分析し、それぞれの肉の特性を解明することを目的とした。かつお節(本枯れ節と荒節の雄節)から血合肉および普通肉を削りとったのち、「だし」を調製し、遊離アミノ酸、核酸関連物質、有機酸などの含量を測定し、相互に比較したところ、普通肉のみから調製した「だし」には本枯れ節と荒節にかぎらず、血合肉のそれに比べてヒスチジン(遊離アミノ酸)、アンセリン(ジペプチド)、イノシン酸(核酸関連物質)および乳酸(有機酸)が多いことが明らかとなった。一方、血合肉はタウリン(荒節)およびイノシン(荒節)に富むこともわかった。これらの成分のなかでイノシン酸はうま味に、ヒスチジンと乳酸は「こく」、酸味などの発現に寄与するとされているので、このような成分が普通肉の呈味を構成する主要なものであると判断された。しかし、血合肉のもつ特有の、異味や「くせのある味」については不明で、今後検討を必要とすることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、ハマチ、アジ、カレイ、イカなどを用いて、やや鮮度低下したものや干物とくに一夜干し品の調製を試みたが、基本となる、きわめて高鮮度の試料の入手に成功していない。そこで、乾製品としてかつお節をとりあげた。通常のかつお節には、血合いの部分(血合肉)が含まれていて、この部分は普通肉と比べて不味ではあるが、一定量の添加によって「だし」の「こく」を強化する機能があるという予備的な研究結果(平成21年度日本調理科学会大会において発表)を得ているので、普通肉と血合肉に含まれる呈味成分を相互に比較することによってそれぞれの肉の特徴に関する知見を得ようとした。そこで、上述のとおり遊離アミノ酸、核酸関連物質、有機酸などの含量を測定し、かなりの程度まで量肉の成分の含量差を解明できたが、これら以外にグアニジノ化合物(クレアチン)やその関連物質(クレアチニン)、トリメチルアミンやその関連物質(トリメチルアミンオキシド)なども含まれているので、達成度は十分とはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、グアニジノ化合物(クレアチン)やその関連物質(クレアチニン)、トリメチルアミンやその関連物質(トリメチルアミンオキシド)などの定量を行い、普通肉と血合肉の間の相違を解明する。荒節の血合肉にはタウリンとイノシンが多く含まれているので、普通肉の「だし」にこれらの化合物を添加してその呈味効果を検証する。同様にクレアチン、クレアチニン、トリメチルアミン、トリメチルアミンオキシドなどについても同様に検証を進める。かつお節については、血合肉のもつ特有の、異味や「くせのある味」については不明であるから、まず血合肉を有機溶媒(エチルエーテル、ヘキサンなど)で脂溶性成分を抽出し、抽出後の呈味効果のみならず抽出液の添加効果を確認する。かつお節以外では、ハマチ、アジ、カレイ、イカなどのきわめて高鮮度の試料を入手して、やや鮮度低下したものや干物とくに一夜干し品の調製を試み、官能試験の実施、エキスに含まれる成分の分析を行って「こく」に関与する成分を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の次年度繰越額は501,133円であり、これは当初予定していた魚介類試料の購入、成分の分析等を実施しなかったため、これらに予定していた経費(主として消耗品費)が使用されなかったためである。次年度に請求する研究費は600,000円であるから、合計1,101,133円となり、ついては下記のような使用計画を立てている。・消耗品費(ガラス器具、薬品類、魚介類等) 410,000円(50点 各8,200円)・分析委託費 400,000円 (8回 各50,000円)・国内旅費 240,000円(3回 各80,000円)・その他(分析機器使用料、図書費等 51,133円)
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