2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650466
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Research Institution | Shijonawate Gakuen University |
Principal Investigator |
坂口 守彦 四條畷学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00027187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石村 哲代 四條畷学園短期大学, その他部局等, 教授 (90149584)
奥田 玲子 四條畷学園短期大学, その他部局等, 准教授 (10390139)
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Keywords | 魚介類 / 風味 / こく / ハマチ / エキス / かつお節 / 普通肉 / 血合肉 |
Research Abstract |
新鮮な魚介類はあっさりした独特の風味をもつが、しばらく貯蔵したものも特有の風味を保持している。その中には明らかな「こく」が感じられるものもある。平成24年度は、そのような例として、ハマチを用いる貯蔵試験では、即殺したものよりも3日間程度氷蔵したものの方が肉に「こく」が発現することがわかった。一方、氷蔵期間がこれよりも長期にわたると、脂質の酸化臭が強まりもはや食用には適さないことが明らかとなった。 これまでに多くの魚介類でそのエキスの組成が明らかにされ、呈味成分とみなされるものが解明されているが、どのような物質が「こく」に関与するのかは不明である。そこで、平成24年度は「だし」として一般に多用されているかつお節を試料として用いて、「こく」の実体を明らかにしようとした。 すでに、前年度にかつお節の普通肉のみから調製した「だし」は「あっさりしたうま味」をもつが、これに血合肉から調製した「だし」を一定の割合で混合すると、深みや「こく」が出現することを明らかにしたが、今年度もこの点を再度確認した。また、本年度も普通肉と血合肉(本枯節と荒節)の主要なエキス成分を分析し、普通肉のみから調製した「だし」には血合肉のそれに比べてヒスチジン(遊離アミノ酸)、アンセリン(ジペプチド)、イノシン酸(ヌクレオチド)、クレアチニンおよび乳酸(有機酸)が多いこと、一方、血合肉はタウリン(荒節)およびイノシン(荒節)に富むことも確認した。しかし、血合肉に多いこれらの物質が実際に「こく」に関与するものかどうか検討中である。一方、血合肉の「だし」を陽イオン交換樹脂(Dowex50)にかけて、分画したところ「こく」の発現に関与する画分をいく種類か得ることができたので、より詳細な分析を実施しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、アジ、カレイ、イカなどを用いて、やや鮮度低下したものや干物とくに一夜干し品の調製を試みたが、アジ、カレイ、イカではきわめて高鮮度の試料の入手に成功していないので、達成度は十分とはいえない状況である。 一方、平成23年度および24年度にかつお節では血合肉の「こく」強化機能が解明されたが、すでに予備的な研究成果を平成21年度日本調理科学会大会(於同志社女子大学)で発表している。したがって、この点に関する達成度は十分といえるが、かつお節の血合肉に含まれる異味や「くせのある味」をもつ成分を同定し、「こく」に関するさらなる知見を得ようとする試みについては、その達成度は十分とはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、グアニジノ化合物やその関連物質、トリメチルアミンやそのオキシドなどの定量を行い、普通肉と血合肉の間の相違を解明する。また、荒節の血合肉にはタウリンとイノシンが多く含まれているので、普通肉の「だし」にこれらの化合物を添加してその呈味効果を検証する。他の物質についても同様に測定結果に基づいて同様に検証を進める。 かつお節の血合肉に関しては、まず有機溶媒(エチルエーテル、ヘキサンなど)を用いて脂溶性成分を除去し、「だし」を陽イオン交換樹脂(Dowex50)にかけて得られた画分の中で、異味や「くせのある味」をもつものを分取する。こうして、「こく」の発現に関与する画分を得たのち、さらに分画を進めGCMS、LCMSによって当該物質(単一種ではなく複数種と考えられる)を同定する。それらについて呈味効果のみならず普通肉の「だし」への添加効果を確認する。 かつお節以外では、今年度もハマチ、アジ、カレイ、イカなどのきわめて高鮮度の試料を入手して、やや鮮度低下したものや干物とくに一夜干し品の調製を試み、官能試験の実施、エキスに含まれる成分の分析を行って「こく」に関与する成分を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究における次年度使用額の合計は130,268円であり、これは当初予定していた魚介類試料の購入、成分の分析等の一部を実施しなかったため、これらに予定していた経費(主として消耗品費)を使用しなかったためである。次年度に請求する研究費は500,000円であるから、合計630,268円となり、ついては下記のような使用計画を立てている。 ・消耗品費(ガラス器具、薬品類、魚介類等) 328,000円(40点 各8,200円) ・国内旅費 160,000円(2回 各80,000円) ・その他(分析機器使用料、文房具、印刷費、図書費等 142,268円)
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Research Products
(2 results)