2011 Fiscal Year Research-status Report
ワーファリン内服患者のためのビタミンKオフ納豆風味食品の開発と臨床効果検定
Project/Area Number |
23650473
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30302417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 豊 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20246672)
長谷川 雄一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00251059)
堀米 仁志 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50241823)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ワーファリン / ビタミンK / 納豆 / 食品 / MK-7 |
Research Abstract |
循環器系臨床において、人工弁置換術後・冠動脈疾患・不整脈等の患者は、致命的血栓予防のために抗凝固薬ワーファリンを半永久的に内服する。ワーファリンは、ビタミンKに拮抗して肝臓でのビタミンK依存凝固因子II, VII, IX, Xの合成を阻害する。人工弁患者は全国に数十万人存在し、生活習慣病である冠動脈疾患は増加の一途にあり、近い将来ワーファリン内服者数は百万人規模に到達し得る。ワーファリン内服時はビタミンK含有量の多い食品を避けるが、納豆は納豆菌が産出するビタミンK2(menaquinone-7; MK-7)の含有量が際立ち、また菌は腸内でもMK-7を産生するため、ワーファリン内服時の納豆摂食は一律に禁じられている。しかしながら、納豆禁食を惜しむ患者の声は強く、身近で優れた伝統栄養食品という観点からも、ワーファリン内服患者、特に生活習慣病患者や成長期の小児に納豆を禁ずることを医療者は永年憂いてきた。そこで代表者らは、本学食品バイオマス工学研究室と共同で、"MK-7を含有しない納豆の開発"という初期構想を掲げた。しかしながら、納豆菌によるMK-7産出を発酵温度や時間等により制御することや、発酵後の固形納豆からMK-7を除去することは困難であるとわかり、本研究のゴールを、「MK-7を含まないか含有量の極めて低い納豆風味食品」の開発と臨床効果検定と定めた。当該年度の研究において、紫外線照射と納豆の粘性物質粉末化技術の融合により、MK-7および納豆菌をほぼゼロとした納豆風味大豆食品の開発に成功した。さらに技術改良を進めながら、次年度は臨床効果検定に入る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに目標としたビタミンKを含まない機能性納豆型食品の開発に成功しており、今後技術改良と効果検定の余地は残るが、おおむね所定の研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
筑波大学倫理委員会の承認と被験者の同意を得て、成人ボランティアに新開発食品を1週間連続摂食してもらい、経時的に血中MK-7濃度を測定する。有意な血中濃度変化がないことを確認した後、ワーファリン内服患者による臨床試験を行う。ワーファリン効力の指標であるPT-INR値の安定している患者に当該食品を1週間連続摂取してもらい、経時的に血中MK-7濃度とPT-INR値を測定、両指標に有意な変動がないことを確認する。納豆に代わる食品としての官能試験も実施する。食品工学・栄養科学・臨床医学の粋を集めて伝統食材納豆を患者の元に返すための初のビタミンKオフ納豆風味食品開発は、全国数十万人の患者に福音となり、日本の食文化を守るというメッセージを含む科学研究でもある。納豆の産地・茨城発のプロジェクトであることにも意義があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画経費の大部分は消耗品費に充てられる。薬品、分析用消耗品が比較的高額である。ボランティアや患者による臨床研究計画に関しては、必要最小限の予算で研究を実施するために、筑波大学大学院人間総合科学研究科血液内科学研究室と共同し、既存の血液学的分析用機材を用いてプロトロンビン時間の測定やビタミンK血中濃度の測定を行う。
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