2011 Fiscal Year Research-status Report
生態系サービスの視点によるエコロジカルフットプリント算出システムの構築
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23651025
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Research Institution | Nagoya Sangyo University |
Principal Investigator |
加藤 悟 名古屋産業大学, 環境情報学部, 准教授 (40323539)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エコロジカルフットプリント / 生態系サービス |
Research Abstract |
エコロジカルフットプリント指標(以下EF指標と記す)は、人間活動に伴う生態系サービス(Eco System Service、以下ESS と記す)の消費を土地資源の消費面積に換算する指標である。企業の活動を、企業の活動を示す指標群を活用してEF指標に変換することにより、自然共生社会実現に向けた企業活動の誘導や、相殺活動(生物多様性オフセット)に取り組むことができ、地球全体の生態系保全に寄与することができる。 まずESS の定義と具体例をリストアップした。その際、「電機・電子製造業」「自動車製造業」「建設・住宅業」「農林水産業」「流通業」「不動産業」「金融業」などの業種ごとに利用しているESSの調査を行った。JBIB(企業と生物多様性イニシアティブ)が企業の生物多様性への影響を分析しているが、その内容は製造に用いる原材料と加工に必要なエネルギー、製造プロセスで生じる廃物のみで、不十分であった。各業種の環境報告書に記されている環境パフォーマンス指標を調査し、各業種ごとのESS消費構造を明らかにした。 また、「○○の天然水」を使用しているとした場合、使っているサービスはその土地の水という供給サービスだけでなく、その土地全体が持っている調整サービスや文化サービスもある。このため本研究では、ESSの種類と企業活動の関連づけを行った。 土地生産性の原単位調査を行った。本研究では、田んぼ1アールからの稲の収穫量を調査し、その結果に基づいて田んぼの土地生産性の原単位を作成した。また、田んぼの地下水涵養量などの調査も行い、田んぼの地下水涵養能力の原単位化を行った。 これらの原単位データをもとに、excelベースでのEF指標算出システムのプロトタイプを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ESS定義のリストアップ実施した。このとき、業種別にESS利用の特徴を明らかにするなど研究内容は計画より深化した。土地生産性の原単位調査も予定通り、進んでいる。森林の土地生産性調査がデータ収集中だが、EF指標計算システムのプロトタイプも作成し、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、ダブルカウントのチェックを進める。「○○の天然水」として、供給サービスだけでなく、調整サービスや文化的サービスの大きさを測定したとしても、実体は一つであり、一つの生態系を多重に評価(ダブルカウント)していることになる。また、田んぼも稲の収穫だけでなく、地下水涵養や、水辺の動植物の生息地の提供などさまざまな役割がある。これらの考え方を有識者ヒアリングも含めて方針を決める。 これらをもとに、excelベースでのEF指標計算システムを構築する。まずはexcel上に原単位データベースを作成し、これを参照する形で業種ごとに新しいEF指標を算出できるようにする。 最後に、ケーススタディとして、特定の企業や地域対象にEF 指標の算出を、農林水産業、建設業、食品製造業などを対象に、企業のEF指標の算出を試みる。CSR レポート等に公開している情報だけでは不足しているため、企業アンケートやヒアリングを実施することにより、必要な情報を集めて、企業との信頼関係を構築しながらケーススタディーを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
森林調査の継続実施により昨年度やり残している森林の人間に対するサービスについてデータを収集・整理する。また、有識者にヒアリングやインタビューをしながら、ダブルカウントの処理方針について定める。また、これに関するシンポジウムやセミナー等に参加して情報収集に努める。 ケーススタディ実施のために、アンケート調査を実施し、作成したEF指標評価システムのフィージビリティについて確認する。 生物多様性や生態系サービスの研究分野は日進月歩であるため、最新の関連図書調査を引き続き行い、情報収集に努める。
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Research Products
(1 results)