2012 Fiscal Year Annual Research Report
日光紫外線による三重項励起状態を介したシクロブタン型ピリミジンダイマー生成の証明
Project/Area Number |
23651044
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池畑 広伸 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90250737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小村 潤一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10215410)
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Keywords | 紫外線 / 光生物学 / 光化学 / 環境 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、常磁性体イオンのCPD生成への影響を検討した。沈殿の問題を解決するため、非吸着性素材でできた実験器具の利用や、他の常磁性体イオンの利用などを検討したが、結果が不安定で確定的な結論に至らずにいた。そうしているうちにUVA領域でのCPD生成が励起三重項を介した反応ではなく、DNAの二重鎖構造に伴う塩基のスタッキングの影響であるとする研究が発表された(Banyasz et al. 2011, J. Am. Chem. Soc. 133: 5163-5)。この研究により我々の仮説は再考を迫られることとなり、ここで研究方針を転換してBanyaszらにより提案された新たなメカニズムによる長波長紫外線によるCPD生成がどのような塩基配列特異性を示すのか、波長依存性はどうかを検証し、その特徴を解析することにした。実際にはUVCからUVA1までの様々な波長の紫外線を照射したマウス皮膚における誘発突然変異のスペクトルを解析し、それらを互いに比較した。その結果、新規メカニズムによるCPD生成は従来考えられていたよりも波長の長いUVA1で最もよく生成しやすいこと、メチル化シトシン部位では5’-CCG-3’部位よりも5’-TCG-3’部位に生成しやすいことが明らかとなり、我々が以前同定し、solar-UV signature変異と呼ぶことを提案した日光特異的な突然変異は、この新規メカニズムによるCPD生成に起因していることが分かった。もともとUVAではTT部位にCPDが生成しやすいことが知られていたが、シトシンがメチル化すると5’-TC-3’部位でもCPD生成が促進されることが我々の研究により強く示唆された。この結果は日光等の環境紫外線の影響を考える際に極めて重要な知見である。結果を論文にまとめPhotochem. Photobiol. Sci.誌(印刷中)に発表した。
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