2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23651196
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
顧 建国 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (40260369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 友彦 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (40433510)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 糖転移酵素 / Fut8欠損マウス / 肝再生 / α1,6フコース / 細胞増殖 / 肝がん / 増殖因子受容体 |
Research Abstract |
α1,6フコース転移酵素(Fut8)はN-結合型糖鎖の根元にα1,6フコース(コアフコース)構造を作る糖転移酵素である。肝臓の再生因子としてHGF、HB-EGF・EGF、TGF-βなどの液性因子が報告され、肝臓再生時の細胞内伝達機構に注目した研究が盛んに行われている。再生因子は肝細胞膜にある受容体を介して細胞増殖を制御するが、受容体は糖タンパク質で、その機能発現には糖鎖付加が重要であることはあまり注目されてこなかった。我々はEGF受容体のα1,6フコース修飾が受容体とリガンドとの結合親和性に重要であることを既に報告している。また、α1,6フコシル化AFPが肝細胞がん特異的に増加することから、α1,6フコースは細胞増殖に関わることが示唆される。本研究では肝再生におけるα1,6フコースの役割を明らかにするため、Fut8欠損マウスを用いて部分肝切除を行い、肝再生に与える影響を検討した。その結果、Fut8のホモ欠損マウスの部分肝切除後の再生機能は野生型のマウスに対して有意に低下した。また、野生型マウスを用いて、部分肝切除後の時間経過とFut8の発現量の関係を、α1,6フコースを特異的に認識するAALレクチンの反応性を指標に検討したところ、部分肝切除後2日目で増加し、ほぼ元の大きさまで再生した7日目ではほぼ切除前のレベルにもどった。ホモ欠損マウスの肝再生機能が有意に低下したことから、遺伝子の組み合わせとしてはすべて持っているヘテロ欠損マウスでも部分肝切除後の再生機能を検討したところ、興味深いことに、ヘテロ欠損マウスでも野生型に対して低下することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年東日本大地震によって、実験動物室の空調が壊れたため、糖転移酵素欠損マウスを含めた糖鎖研究用の実験動物はほぼ全滅した。そのあと、失った実験動物や細胞株という研究基盤の回復に全力を挙げて取り組んできた。そして、野生型マウスを用いて、部分肝切除後の時間経過とFut8の発現量の関係を、α1,6フコースを特異的に認識するAALレクチンの反応性を指標に検討したところ、部分肝切除後2日目で増加し、ほぼ元の大きさまで再生した7日目ではほぼ切除前のレベルにもどった。ヘテロ欠損マウスでも野生型に対して低下することを見出した。これらの結果から、Fut8は肝再生に大事であることが強く示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓におけるFut8発現細胞の同定およびα1,6フコース糖鎖付加と受容体の機能解析を行う。また、加齢における肝再生の機能低下とα1,6フコース減少との関係を検討し、Fut8ヘテロ欠損マウスを用いてL-フコースの投与によって低下した肝再生能の改善が見られるかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に得られた結果をもう一度確認すると同時に、肝実質細胞と非実質細胞(クッパ細胞、類洞内皮細胞、星細胞、その他の細胞)を分離し、肝臓におけるFut8発現細胞を同定する。α1,6フコース糖鎖付加と受容体の機能変化を調べる。さらに、肝再生の分子機構と密接に関連する肝がん形成におけるFut8の機能を調べる。
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