2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAサイレンシングの分子機構とその定量的解析
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23651200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
程 久美子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50213327)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | miRNA / silencing / 定量的解析 / RISC / mRNA |
Research Abstract |
MicroRNA (miRNA)やsmall interfering RNA (siRNA)といった小分子RNAによる遺伝子サイレンシングは、幅広い生物種において共通に保存された遺伝子発現制御機構である。miRNAは約22塩基のバルジ構造をもつ2本鎖RNAであり、ガイドとなるRNA鎖の5’末端から2-8塩基(シード領域)と相補的な配列をもつmRNAを標的遺伝子として識別し、それらの翻訳を抑制する。しかし、個々のmiRNAによる抑制の程度は様々であり、どのような機構でこのような違いが生じるのかは明らかではない。これに対し、もともと完全に相補的な2本鎖RNAであるsiRNAは、ガイド鎖と全長にわたって相補的な配列をもつmRNAに対しRNA interference (RNAi)という抑制作用を示す。一方で、miRNAと同様に、siRNAのシード領域のみの塩基対合に依存したoff-target効果と呼ばれる抑制作用も示す。我々はsiRNAによるoff-target効果の程度はシードと標的mRNA間で形成される塩基対合の熱力学的安定性に依存していることを明らかにしている。miRNAによるサイレンシングの機構はsiRNAによるoff-target作用と類似していると考えられる。そこで、miRNAによるサイレンシング効率を定量化するためレポーターアッセイやマイクロアレイを用いた解析を行い、miRNAによるサイレンシング効率は、シードと標的間の熱力学的安定性だけに依存しているわけではなく、miRNAのunwindingに関わると考えられる領域の熱力学的安定性がサイレンシングの程度に大きな影響を与えることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miRNAやsiRNAなどの小分子RNAは、1分子種で数百~数千の遺伝子の発現を抑制しているが、その抑制の程度は小分子RNAの配列や構造の違い、あるいは標的mRNA側の要因によって多様に制御されている。そのため、小分子RNAは非常に複雑な遺伝子発現の調節をしており、その全体像を把握することは難しい。本研究では、RNAサイレンシングの素過程における小分子RNAによる遺伝子抑制の分子機構を明らかにし、それに基づいて、遺伝子ネットワークの大きな変動をシステマティックに定量化することを目的としているが、その要となるsiRNAおよびmiRNAによる遺伝子サイレンシングの程度の解析方法の確立について、おおよその目処がついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的である、遺伝子ネットワークの大きな変動のシステマティックな定量化のために、さらに、miRNAの一本鎖化の機構に関わる相互作用タンパク質の機能、miRISCに含まれる内在性miRNAの外来性miRNAによる交換機構、およびmiRNA標的配列の位置や構造の違いによる抑制作用の解析を詳細に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究計画に従って、特に試薬や消耗品費に研究費を重点的にあてることによって、研究のより一層の進展をめざす予定である。
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Research Products
(11 results)