2011 Fiscal Year Research-status Report
親電子シグナルの硫化水素イオンによる制御メカニズムの解明
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23651239
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
赤池 孝章 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20231798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 重元 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (00325333)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 硫化水素 / シグナル伝達 / 親電子物質 / 8-nitro-cGMP / S-グアニル化 |
Research Abstract |
研究代表者らは、生体の酸化ストレス応答において、親電子物質である8-nitroguanosine 3’,5’-cyclic monophosphate (8-nitro-cGMP)が、細胞のシグナル伝達を司るセカンドメッセンジャーとして生理機能を発揮していることを明らかにしてきた。さらにごく最近、硫化水素(H2S)が8-nitro-cGMPのシグナルを制御していることを見出した。本研究課題は、8-nitro-cGMPを親電子シグナルのモデル分子として、内因性硫化水素による親電子物質とのユニークな反応メカニズムを詳細に解析することにより、生体内の親電子シグナルの本態を解明することを目的としている。本年度は、高速液体クロマトグラフィー-質量分析を用いて8-nitro-cGMPと硫化水素との反応機構の解析を行った。試験管内で8-nitro-cGMPと硫化水素を反応させると、脱ニトロ化反応により8-SH-cGMPが生成することがわかった。この反応はpH増加とともに促進することから、硫化水素イオン(HS-)の関与が示唆された。8-nitro-cGMP以外の各種親電子物質(15-deoxy-Δ12,14-prostaglandin J2, 4-hydroxy-2-nonenalなど)も硫化水素イオンと反応することを明らかにした。さらに重要な点として、生理的pH下において硫化水素イオンは、細胞内の主要な低分子チオール化合物であるグルタチオンよりも8-nitro-cGMPに対して高い反応性を示すことがわかった。また、安定同位体希釈法と質量分析による特異的かつ高感度な8-SH-cGMP定量法を確立し解析を行ったところ、各種細胞、組織試料中から8-SH-cGMPが検出され、生体内で生成する硫化水素イオンが8-nitro-cGMPと反応し、そのシグナル機能を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
内因性硫化水素イオンと8-nitro-cGMPとの反応により8-SH-cGMPが生成することを明らかにするとともに、次年度に予定していた各種親電子物質と硫化水素イオンとの反応の解析も行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
硫化水素産生酵素をノックダウンした細胞を用い、8-nitro-cGMPによる蛋白質S-グアニル化を指標として、親電子シグナルの内因性硫化水素イオンによる制御についてさらに詳細な解析を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞のノックダウン実験、8-SH-cGMPなどの検出のための質量分析、蛋白質S-グアニル化を解析するためのウエスタンブロットなどに必要な試薬・消耗品の購入と、研究成果発表のための旅費、論文の校閲料などに使用する。
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Research Products
(33 results)