2011 Fiscal Year Research-status Report
学校における性同一性障害の子どもへの支援法の確立に向けて
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23651263
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 明穂 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20314685)
新井 富士美 岡山大学, 大学病院, 医員 (50347986)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ジェンダー / 性同一性障害 / 性別違和感 / 教育 / 学校 |
Research Abstract |
性同一性障害(Gender Identity Disorder:GID)とは,「心の性(性自認)と身体の性が一致しない状態」であり,子どもの頃から性別違和感を持ち,不登校,自殺念慮,自殺未遂などを経験する率も高い. 各地の教育委員会等への調査により,小学校,中学校,高等学校での「性別違和感のある子ども」への対応状況を検討した.また,一部の了承の得られた学校へ出向き,子どもの状況,学校の対応などを調査した.さらに,学校の教職員が知識や情報を共有するための研修,専門医療施設の受診へ向けての両親への働きかけ,周囲の生徒への説明,周囲への告白などの過程を実践し,その影響を検討した. 全国のジェンダークリニックの専門医と,「性別違和感のある子ども」とその学校への支援について討議した.また,岡山大学ジェンダークリニックを受診した性同一性障害当事者の子どもの頃の学校の対応を調査し,自験例も含めて,事例の経過を解析し,典型的な事例をまとめた. 診療録の記載や,性同一性障害の当事者,親,ジェンダークリニック担当医へのインタビュー,当事者の著書などから,日本独特の文化やジェンダー観などを考慮し項目を抽出し,英語版の『親へ聞く「子どもの性自認に関する質問紙」: GIQC(Parent-report Gender Identity Questionnaire for Children)』を翻訳したものに加えて,子どもを観察するためのチェックリスト案を作成した. 日本精神神経学会の性同一性障害の関する委員会の委員として,思春期の子どもに関するホルモン療法を含む対応法に関してのガイドラインの改訂を行い,学校関係者への啓発を行った. GID(性同一性障害)学会の全国大会で,当事者,教育関係者,医療関係者などに子どもの性自認や学校で対応に関する調査を施行し解析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性別違和感のある子どもへの対応事例の収集を行い,事例集を作成,また,専門家との討論のうえ,チェックリストを試作した.郵送法による全国教育員会への調査は行わなかったが,全国各地の事例の聞き取り調査を行うことができ,実地調査,さらには,計画以上に,各種の対応といった介入を行い,その影響を調査することができた.また,性同一性障害の診療ガイドラインの中に,思春期の性同一性障害の子どもへの記述を含めることもできた.
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に,GID(性同一性障害)学会の全国大会で,多くの当事者や教育関係者への調査を実施できたので,これを解析することで,チェックリストなどの妥当性を検討する. パンフレットや教材などを完成し,GID(性同一性障害)学会,日本精神神経学会などの協力のもと啓発を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)教員用, 保護者用パンフレットを作成する.「性別違和感のある子ども」への学校の対応事例, 子どもを観察するためのチェックリスト,また,私達の調査データ,性同一性障害当事者の意見などを検討し,教員用,保護者用パンフレットを完成し,教員や保護者に読んでもらい,理解度を確認する.(2)周囲の子どもが性同一性障害を理解するための教材を作成する.教員用,保護者用パンフレットとの統一性を持った内容で,かつ,小学校,中学校,高校それぞれの生徒に理解できる内容を検討する.国内外の教材用のパンフレット,書籍,映画,ドラマなどの調査を行い,翻訳等を行う.学校でのホームルームなどで使用することを想定した小学校,中学校,高校別の教材を作成する.(3)パンフレットなどの最終版の完成と印刷を行い,教育機関などに配布する.また,講演会,研修会,学会報告,論文作成などにより,教育関係者,医療関係者などへ,それらの資材の存在に関しての啓発を行う.(4)繰越金の発生は,前述のように,H23年度に郵送法による全国教育員会への調査は行わなかったためであるが,パンフレットなどを,教育機関などに配布するときに,子どもへの対応の状況やパンフレットの有用性に関しての調査も同時に施行する予定であり,そのための経費として使用する.
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Research Products
(23 results)