2012 Fiscal Year Research-status Report
中国宋代絵画表現技法の萌芽的研究-絵画表現と古代絹の相関関係-
Project/Area Number |
23652045
|
Research Institution | Kyoto Saga University of Arts |
Principal Investigator |
仲 政明 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 准教授 (50411327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箱崎 睦昌 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 教授 (90351379)
山本 記子 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 講師 (80392554)
|
Keywords | 宋代絵画 / 絵絹 / 秋塘図 / 大和文華館 / 蚕 / 絵画表現 / 繭 / 模写 |
Research Abstract |
本研究は中国宋代絵画の絵絹の製法を解明し「絵画表現」と基底材である「絵絹」との相関関係を検証することを目的として、《①宋代実作品のマイクロスコープによる観察と分析》《②分析結果の中から【秋塘図】の絵絹を対象として古代絵絹の製法を考察し復元する》《③復元した絵絹を使用して、模写制作を行い「絵絹の質」を明らかにする。》である。前年度は対象作品のデータを収集した後、一回目の試作品が完成をさせた。 今年度は完成した復元絹をマイクロスコープで観察し、また絵絹に実際に墨のよる効果を検証した。その結果、復原対象の宋代絵画【秋塘図】の絵絹との違いが見られた。今回製作の絵絹は前年度の原本調査を行った際に、原本の絵絹が予想以上に細かかったことから、この状態に織るためには段階的に製織の技術を高めることが必要と判断した。そのため1回目は若干太めに製作したが、マイクロスコープの観察においても絹糸の太さが太くまた絹の厚みにおいても厚く仕上がった。それらの結果から織りの方法と絹糸の繰り方を少し変えて2回目製織を行った。 しかし、織り手の技術的問題の解決に時間を要し、2回目完成に4ヶ月を費やし10月になった。また織り手から再度試作を行いたいとの要望があり、研究期間の延長を決定して、3度目の製織を行い2月に一応の完成を見た。この間、それまでに製作できた絵絹を使用して下地処理方法の検証を行った。この中で打ち練りを行ったもの、礬水をひいたもの、無加工のもの3種類の試験を行ったが、滲み及び滑らかさの点において、礬水を塗布したものが、最も状態が良かった。打ち練りの効果は予想に反し「弾き」を引き起こした。また無加工のものもも基本的に滲みは少なく、描画方法によっては充分に使用できそうであるということが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は平成23年度に「宋代絵画絵絹の復元」、平成24年度に「完成した復元絵絹の検証」を行う予定であった。「宋代絵画絵絹の復元」では春産期、秋産期の二期の蚕を用いて復元の試作を行う予定であったが、東日本大震災の影響で科学研究費の採択が遅れたこともあり、秋産期の蚕を用いた試作のみを行った。平成24年度にマイクロスコープによる試作品の検証を行ったが、絹糸の太さ及び製織に対象宋代絵画の絵絹との違いが見られた。そのため、計画を変更し改めて春産期の蚕品種を利用して再度、試作を行うと共に、また秋産期の繰糸・精錬を変えて試作を行うこととした。 以上のことにより、当初予想を超えて、試作を繰り返すこととなり、試作品完成までに2年を費やすこととなった。そのため、当初2年目の計画で行う予定であった模写制作による検証を今年度に延長をして行うこととした。これは、研究計画で想定していたよりも、宋代絵絹が品質の高い絹糸と高度な技術を用いて製織されていたこと。また調査対象の宋代絵画が何度かの修理を経ていることが、宋代絵絹の状況を把握しにくくしており、予想を上回り時間要することに繋がった。これは研究代表者の認識の甘さが、計画の不備を招いたと言わざるおえない。。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度は、最終復原絵絹をマイクロスコープで観察及び数値データを収集した後、復元した絵絹を使用して、再度墨の乗り具合や滲みなどの違いの検証と部分模写制作を行い描き手の経験則をからの「絵絹の質」を明らかにする。またこれまでの調査及びデータを総合的に検証し、結果を纏める計画である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度研究費は149,685円である。復元した絵絹をマイクロスコープで再度確認及び数値を収集し検証するための費用及び模写制作のための材料費として使用予定である。
|
Research Products
(1 results)