2011 Fiscal Year Research-status Report
グリム童話集における数字使用のコンピュータ検索と、その偏差の意味考察
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23652067
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 克知 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30142665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 吉文 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (20091473)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Grimm |
Research Abstract |
先ず、使用するパソコンやスキャナなどの機器を、信頼性、汎用性などを考慮の上購入し、セッティングを行った。次にこれらを利用して、現在利用可能な電子データを検索し、入手した。その結果、グリム童話の一次文献である、第1版から第7版と初稿のエーレンベルク版のすべてのテキストを入手できた。入手したデータの形式は不統一なので、石川がそのすべてを点検の上、Web汎用の文字コードであるUTF-8の形式のテキストデータに統一変更した。これらは、まだプレーンなテキストデータではあるが、現在スマートデバイスなどで、電子ブックが書籍の主流になった時代背景と照らしても、様々な用途に利用できるデジタル資料として十分な価値があるものといえる。また、初稿であるエーレンベルク稿のデジタルデータに関しては、国内のグリムデジタルデータベースの専門家から好意的な提供を受け、今後、国内の専門家とも研究連携の可能性も出てきたことも、重要な成果だと言える。それにしても、デジタル機器やネットワーク環境の発展はめざましく、当初の予想よりはるかに速いスピードで作業が進んだことは喜ばしい成果であった。また、デジタル化作業を通じて、今後は文学系の資料操作もデジタル環境へ急速に移行する必要性を強く感じた。なお、そうはいっても、現状ではグリム関連の資料は、ほとんどが印刷物の形態であり、困ったことにまたその大半が絶版状態である。さらに、東北大震災の影響を受けるなど、書籍資料の入手に関しては少々遅れた状態である。ただし、これまたWebを利用した、有利な古書の入手方法も発見したので、引き続き印刷書籍の資料の入手を予定している。これらも、デジタルデータベースへ移行できれば、その利用価値は大きいと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十年ほど前に、グリム童話やドイツ文学関連のデジタルデータベースの作成を試みたことがあったが、当時は日本語とドイツ文字をテキストデータとして混在できないという困った状況で、汎用データベースの作成を断念したことがあるが、Web汎用のユニコードが普及した現在では、何の問題もなく汎用のデジタルテキストデータベースが作成可能になった。また、電子機器やネットワークシステムの効率と信頼性が高くなったので、当初予想していた以上の速度でデータ処理が可能になった。三年計画の一年目で、ここまでデータ処理が進展したことは、高く評価できると考えている。特に、入手し、加工したデータをiPad用に移植して試してみたが、その使いやすさには大いに感心した。大量のデータが、重たく、画面の小さなノートパソコンではなく、まったく新しいスマートデバイスで簡単に利用できるようになったことは、新しいメディアの時代の到来を感じさせる。パソコンが登場してより、長い間、文学作品のデジタル化を望んで来たが、iPadなどのスマートデバイスの登場により、はじめて長年の夢が実現した感想を持つことができた。とにかく、初年度はデジタルデータの準備が第一目標だったので、一応その目標は達成できたと感じている。また、新しい利用環境への可能性も視野に入ってきたので、その点もこの研究の意義を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
準備した一次文献のプレーンテキストデータを、作品分析に対応したデータベースへ加工する作業が中心となる。ただし、これには作品分析担当の分担研究者と十分な協議が必要となる。また、作品解釈に関しては、グリム童話という世界規模の民話文化の背景を持ち、大量の先行研究が存在する状況から、とにかく、関連資料となる二次文献の調査と入手が必須となる。24年度は、初年度で少々遅れた二次文献資料の準備に力を注ぐ予定である。これら二系統の作業がある程度達成されたなら、独自のデジタルデータベースを利用して様々な検索や統計処理を試み、その結果作品の新しい分析の可能性などを探っていく。文学作品解釈には、複数の視点からアプローチすることも有効であり、石川と高橋という専門や視点が違う立場の比較検討から、興味あるパースペクティブの発見を期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、とにかく二次資料としての参考文献、関連書籍の調達を中心に研究費を使う予定である。電子機器はすでに購入したが、バックアップや共同研究者間のデータ移動のためのデータ保存デバイスなども購入する予定である。データのネットワークを通じての調査と入手が予想以上に可能になっているので、当初予定していた出張は行わないで、その分文献関連の費用に充てたい。なお、平成23年度未使用額が発生した理由は、関連文献の多くが絶版になっていて、入手方法を決めるのに時間がかかったのが主な理由で、そのほか、関連文献の電子化状況と著作権などの状況の把握にも時間がかかったためである。未使用額の使用計画としては、未入手の文献の購入にあてる。現在購入文献リストを作成中である。
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