2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23653020
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
神田 宏 近畿大学, 法学部, 教授 (40257960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | テキスト・マイニング / 量刑 / 裁判員 / 回帰分析 |
Research Abstract |
科学研究費助成(学術研究助成基金助成金)に係る本事業は, 殺人・強盗致死傷被告事件ならびに傷害・傷害致死被告事件を主たる研究対象としてテキスト・マイニングの手法による自然言語分析を主たる研究方法とするものである。この平成23年度実施予定は, 次のとおりであった。 初年度は, 主として裁判例のテキスト・データ化(電子化された判例でないものはOCRで読み込んだ上で適宜修正を加える)に当てられる。判決文は, マイニング処理を最適化するために正規化の処理を加えることとされていた。 この実施計画を受けて平成23年度研究事業は次のとおり実施された。 1)裁判例のテキスト・データ化のためにドキュメント・スキャナを入手した。これによって判例データベースで直接ダウンロードできない裁判例の判決文などをスキャニングならびにOCR処理後, 適宜修正し, テキスト・データとして保存した。この処理と並行して, テキスト・データ化された判決文の分かち処理(通常, 複数の文で構成されている判決文を単文ごとに切り出し, データベース化すること)ならびに情状因子の拾い出し(凶器, 被害者の数など)を行なった。なお, 以上の作業は平成24年度も引き続いて実施する。2)テキスト・マイニング処理の実施に向けて統計処理ならびにテキスト分析アプリケーション(SPSS)を導入し, IBM主催によるSPSS・テキスト分析講習を受講し, マイニング処理の流れの理解に努めた。また構築中の判決文データベースを用いてテキスト・マイニングを試行し, 分析の効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究事業の研究目的は, 従来の量刑スキーマに拘泥しない, 具体的で実質的な量定がなされる裁判員裁判を考慮して, 裁判官・裁判員の量刑行動を探り, その量刑判断の妥当性を統計学的に検証することを目的に, 量刑理由文をテキスト・マイニングの手法によって可視化し, 裁判員制度導入前後の解析結果との比較照合を通じて裁判員の量刑行動を可視化し, 裁判員の心理的・精神的負担の有無・程度を可視化しようとするものである 平成23年度の実施計画はおおむね研究目的達成のための準備作業(テキスト・データ化(とその分かち処理)による判決文データベースの構築, アプリケーションの導入と試行)であったから, 上記【研究実績の概要】のとおりおおむね所定の作業を執行できているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究事業の研究対象は, 刑事裁判の判決文であり, テキスト・データ化とその分かち処理がこれをテキスト・マイニング処理するために絶対に必要な作業である。この作業は大量の判決文(当初, 死刑(言い渡し)判決のマイニングを想定していたが, より回帰分析など統計処理の精度を上げるために無期懲役(求刑を含む)判決もマイニングの対象とし, 比較対照を行なうこととした)を人力で分かち処理する必要があり, 派遣事業者派遣労働者による研究補助を受けてこれを遂行したが, なお継続して処理を遂行する必要がある。また, 統計処理ならびに推論処理のアプリケーションを用いて帰無検定の取り扱いや多変量解析, ニューロン・ネットワークなどの手法を充分に理解した上で正確な統計処理を遂行しなくてはならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度, 本研究事業の遂行のために, 1)引き続いて派遣事業者による研究補助者の派遣を受け, 2)推論処理アプリケーションとして新たにMATLAB(本体ならびに統計, ニューラル・ネットワーク・ツールボックス)を導入し, 3)SPSSおよびMATLAB利用に係る講習によって統計処理の正確性を高めるものとする。 本研究事業申請に際して平成24年度において他大学研究室における先行研究の聴き取り調査を予定していたが, SPSSの講習に重点を置き, さらにMATLAB(ニューラル・ネットワーク)による解析を実施することが統計処理の正確性の担保に資すると考え, 上記聞き取り調査に代えて講習の回数を増やし, また, 推論アプリケーションを導入することとして, 当初予定を変更している。 この変更によって, 上述のとおり, 統計処理ならびに推論処理の正確性を高めることが期待されるので, 研究遂行上の難点は特段ないものと考えてよい。
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