2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23653048
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
富田 武 成蹊大学, 法学部, 教授 (10207607)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
|
Keywords | シベリア抑留 / ロシア公文書館 / 内務省関係文書 / ロシア人研究者 / 地方公文書館 |
Research Abstract |
モスクワの諸公文書館における文書閲覧は未だ不十分で、許可されていない文書も多いが、日本人抑留に関わる最も基本的な公文書は外交文書も含めて閲覧した。その結果、1)捕虜収容の基本的システム(モスクワ-地方-収用地区-個別収容所)と重要な指令(管理、労働、給養、政治教育、埋葬、移送、送還等)を把握することができた。2)捕虜収容・管理を担当する内務省と対日理事会に代表を送り、国際及び日本世論を気にする外務省との間で、捕虜送還や死者の扱いをめぐる食い違いが生じたことも初めて知った。3)地方(イルクーツク、ハバロフスク)の公文書館の文書からは、モスクワの指令に対する様々な対応(厳格実施のための工夫、「割引=手抜き実施」、ごく一部は拒否)が浮かび上がり、抑留システムが中央集権的なイメージとは裏腹に機能していたことが明らかになった。 また、ロシア史研究会年次大会の共通論題として行われたパネル・ディスカッション「戦後66年シベリア抑留を問う-急がれる公文書開示と実態解明」は(2011年10月23日、青山学院大学)、抑留問題に関する、公開された学術的検討の場としては初めてのものであった。ロシア人の研究の蓄積に触れ、かつ、抑留体験者の生の声、しかも多様な意見(例えば民主運動の評価)を知ることができたことの意義は大きい。この問題に対する社会の関心が、抑留体験者の高齢化とともに薄れていく中で、『毎日新聞』等が上記パネルを報道し、あらためて世間の注意を喚起したことも重要である。 モスクワ及び地方滞在時に当地の抑留研究者と意見交換を行い、公文書館利用の助言をもらい、とくに地方では埋葬地及び墓地を案内してもらったことも、文書だけからは得られない、研究に資する体験であった。
|